エッセイ3
「そんな無茶苦茶な話ないだろう。私は彼女に事情を聞こうと思っただけだ・・・」
「なんの事情だ?」
「だから何をしているんだって!聞くためだ!」
「お前が何してんだよ!」
「わ、私は・・・」
眼鏡男は和馬の眼光に怯えている。
「あ、あんただ・・・」
眼鏡男はスーツ姿の男の顔を見て、人差し指を小刻みに震えながらさした。
「あんたこの子と一緒に居ただろ。途中で別れたけど・・・」
「私の娘だからな。それがどうした?」
「あんたら親子で何を追いかけているんだろうと気になったんだ。好奇心ってやつだよ」
スーツ姿の男は心当たりがあるように一息ついて俯いた。
「そういうことか」
状況を把握したようにスーツ姿の男は二、三回首を上下させた。
スーツ姿の男と女子高生はストーカーされていた女の子を追っていた。女の子の身に危険があっては駄目だとスーツ姿の男は単独で近づいて行った。女子高生には待機させた。
そこへ眼鏡男がその光景を見かける。眼鏡男は事情を聞くため近づいてきた。女子高生は近づいてくる眼鏡男に恐怖を感じた。
そこへ和馬と洋一が駆けつける。そしてその場にいたはずの娘が居ないことに気づいたスーツ姿の男は女の子の救出どころではなくなる。慌てて自分の娘を探し始める。
スーツ姿の男と偶然通りかかった和馬が肩をぶつける。雨が降り始め互いに事情を話し合う。少し離れた場所で怯える娘を見つける。やがて今の状況になる。
「まぎらわしんだよ!おっさん」
和馬は呆れたように舌打ちをしてその場から立ち去ろうと振り返る。
「ちょっと持って!」
洋一は何かを思い出すように、
「て、ことはストーカーに追われている女の子はまだどこかにいるってことだよね?」
和馬の足が止まった。一同がおそらく同じことを考えているのだろうと洋一は思っていた。
「きっとそうよ!助けなきゃ!」
「そうはいっても手がかりがな」
「君達そこで何をしているんだい?」
スラッとした足の長いハンサムな男が声をかけてきた。
「恐喝は犯罪だよ」
「何言ってんだ、お前」
「僕は見ていたんだ。君たちがこの眼鏡着物君に恐喝をしようとしているのをね」
「何言ってんの、こいつ」
「しらばっくれてもだめだよ。さあ動画も撮影してる。さあ警察に行こう」
「誰が行くか」
ハンサムな男が和馬の腕をつかむ。
「離せよ!暴力行為だぞ!」
一同が異様な空気に戸惑っている中、ごま油の香ばしい香りが漂っていた。妙に食欲をそそるその香りは恐らくチャーハンであると全員が思ったに違いない。
つばを飲み込む者もいる中、ハンサムな男はある人物の顔が思い浮かべていた。
「この香りは律子さん・・・」