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睡蓮  作者:
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第一章 背景


1.肩をぶつけた。


「うぜい奴。死ねばいいのに」


今ちょうど親父とケンカをしてきたところだ。酒浸りの親父はおふくろを殴りやがる。妹はまだ小学生だというのに平気でそんな光景が目につく。こんな人ごみの中、ちんたら歩くサラリーマンにはうんざりだ。


「みんな、死ねばいいのに」


2.肩をぶつけられた。

私は公務員だ。

すぐ近くには私の職場がある。若めの男性は肩をぶつけておいて「すみません」の一言もない。職業柄だろうか。ああだ、こうだ、と役所にクレームを言い出す輩のおかげで我慢の耐性はついている。妬みにも慣れている。底辺の市民の為に仕方なく働いている。


3.肩がぶつかる光景を見た。

若めの男は中年の男を舌打ちしながら睨みつける。

中年の男も怪訝そうな顔をしていたが、すぐに目をそらして、やがて歩き出した。他の国ならケンカの一つでも起きそうな空気がなぜか沈下している。平和と言えば平和な国だ。それでいて何処か虚しさを感じるわい。


4.肩がぶつかった二人を見ている老人を見た。

いや、老人なのか?

人生を苦労して生き抜いてきたという年輪がまるで感じない。肌ツヤは良く、時折見せる微笑みは人生の終幕に向かう余裕すら感じる。失業して途方に暮れていたところだが、少しだけ勇気をもらった。じいちゃん、ありがとよ。ばあちゃんかもしらんが。


5.お爺さんかお婆さんかはわからない老人を見ている男性に一目惚れした。

私は近くの大学に通い始めて間もない大学生。

友達も居ない。恋人なんてもってのほか。寂しいなあー。そう思っていた矢先の出会いだった。どうせ私なんて相手にしてくれないよね。ハンカチでも落としてみようかしら。


6.大学生くらいの女の子を見かけた。

彼女は大学生くらいの男をじっと見つめている。

知り合いだろうか?大人しそうな印象を与える彼女の雰囲気に見とれていた。さては男は彼氏だろうか?きっとそうだ。私の恋は儚く散っていく。あーポチに餌を与える時間か?さっさと家に帰ろう。


7,キモい奴に肩をぶつけられた。

マジムカつく。

キモい奴はゴミ箱でもあさってろ。マジでキモい。彼氏には浮気されるし、コンサートは中止になるし、マジでツイてないわ。オヤジにねだって売りでもして金もらおうかな。遊べるうちに遊ばなきゃね。商品価値はあるうちに使わなきゃ損だわ。


8.今どきの派手な女子高生を見かけた。

金髪のミニスカートで男性と肩をぶつけて少し怒っているようにも見える。

若い頃の私も同じような感じだったかもしれない。今じゃ二人の子供のママになって子育て奮闘中だ。たまに見るイケメン男子に癒されながら毎日を生きている。こんなはずじゃなかった。


9.「すみません」「なにか?」「なにを見てらっしゃるんですか?」「人をちょっと・・・」「人ですか?」「はい・・・なにか御用ですか?」「いいえ、何を見てらっしゃるのか気になって」「そうですか・・・」「では、私はこれで」「あ、はあ・・・あの」「何か?」「この会話に意味はあるんですか?」「意味?」


10.遠くの空を見ていて、太陽が光っていて、青空があって、洗濯物の臭い、たまに見える黒い影、無機質なカレンダーに何もない今日の予定。目標はあった。


「今日一日笑うこと」


お笑い番組に頼るんじゃなくて自分の力で笑うこと。感性で笑うこと。無意識に笑っていること。笑顔が溢れていますように。


11.手に入れたいものは数多くある。金。金。金。

金さえあれば自由になれる。

欲しいものは何でも手に入れられる。飯。酒。女。私利私欲に精を出す。人生なんて金次第。金がある奴が勝ち組。金のない奴は路頭に迷い寒空の中、死んでいく。そんな人生は嫌だ。


12.私は学ぶ。知性のまま。無知とは無縁の世界を見るため。

私に知らないものなどない。

だから学び続ける。知は何よりも尊い。知性は人間に与えられた素晴らしい能力。私はその能力と共にこの世界を変えて見せよう。人々の平和のために。自由のために。そして何より私自身のために。






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