表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カナリアは、もう啼かない!  作者: 愛章
1章 おれさまは、猫である
2/46

今日から奴隷!(1)

本編開始です!

『――――それで、きさまは置き去りにされたというわけか』




 季節は初夏。場所は森。

 そして、おれさまは猫である。

 白く艶やかな毛並みと、深く碧い瞳を兼ね備えた、世にも美しい猫である。




     ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 ――ちょうど正午前のことだ。

 おれさまの縄張りに近づく不届き者たちを成敗しに出向いたところ、やつら人間どもは反撃するどころか、ためらうことなく逃げ出したのだ。

 仲間の一人を、あえて置き去りにして。

 逃げた連中を追いかけても良かったのだが、面倒くさい上に、ワナが仕掛けられている可能性もある。

 ――それに、収穫という意味では、目の前に転がっているもので十分だった。


「…………」


 仲間に突き飛ばされ、転がったまま、起き上がることさえままならない。

 使い物にならない両手をぶら下げた、実にみじめで薄汚れた存在だった。

 性別はメス。

 おそらく若い。

 逃げた連中と違って、武装らしきものは無い。

 見た目で分かる情報などその程度。人間をこうして間近で眺めるのもいつ以来か……。


『きさまは逃げないのか?』


 おれさまは、これでも猫である。

 追いかけっこは嫌いではない。

 余程の空腹でない限りは、動かない獲物より、逃げ回る獲物のほうが面白い。


『助けを求めないのか? もしかしたら、きさまの仲間が戻ってくるかもしれないぞ? あるいは、あえてきさまを囮にして、おれさまを仕留めるつもりでいるのか?』


 長く生きていると、色々と痛い目を被ることはある。

 人間と相対するのは久しぶりだが、やつらが弱く、そして狡猾な生き物であることは忘れていない。

 目の前のメスと、逃げた連中の持っていた武器。これらを上手く組み合わせれば、おれさまを傷つけることが出来るのは分かっていた。

 それゆえに、様子を伺っていたのだが……。


「…………」


 ……どうやら考え過ぎだったらしい。

 武装した連中は、特に深い意味もなく、突き飛ばすような形でメスを一匹放り捨てただけらしい。

 しかしそうなると、疑問が一つ残る。


『なぜきさまは逃げようとしない?』


 転んだ時に足を痛め、さらに恐怖と緊張でまともに動けないのは分かる。

 だが、メスの思考からは、『逃げる』という意思が全く感じられない。

 あえて囮のために残ったのならば、理解できる思考だ。

 しかしそうでないとするなら、一体どういうことなのか?

 興味が湧いた。

 そして三つある尻尾のひとつを伸ばし、この人間の中身を探ってみることにした……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ