プロローグ
この物語はネロ様の独断と偏見のもとに語られています。
実在する団体、企業、猫とは一切関係ありません。
黒い穢れ。
――と、呼ばれる病がある。
その正体は、目に見えない小さな何か。
取りついたものに侵食し、やがて目に見えるほどはっきりとした黒へと染めてゆく。
元に戻す方法は無い。
物体も、生物も、そして人間でも。
ひとたび黒く染まってしまえば、逃れる術は無い。
じわじわと全体に広がって、ものは朽ち、生物は死に至る。
治療法は無い。
……だが、打つ手ならある。
ひとつは感染部分を切り離すこと。
もっとも、感染が深く広がっている場合があるので、確実さには欠ける。
さらに言えば、この小さな何かは、いたるところに居る。
空気や水……ありとあらゆる場所に存在している。
そしてそれらは、互いに引き寄せあうように、感染が進んだものへと集中する性質を持っている。
つまりは、あえて感染者をそのままにしておくこと――。
それが最も確実な解決策とされている。
少なくとも、誰かを犠牲にすることで、周囲の人間は感染から身を守ることができる。
ゆえに、この病に侵されたものを、ヒトはこう呼ぶのだ。
――穢れている、と。