大事な事ほど確かめられない
パーシヴァルは、ありったけの勇気を振り絞ってケイトリンに告白した。
告白するのが、精一杯だった。
つまり、その先は言えていない。
一方のケイトリンは、パーシヴァルの告白を嬉しく思いつつも、自戒を忘れなかった。パーシヴァルからは好意を告げられただけ、それ以上の約束の言葉はもらえていないと。
学生時代限定のお付き合いとなる事を覚悟し、それでも、パーシヴァルの誠実さを信じた。
パーシヴァルとの婚約を望んでいた令嬢たちの嫉妬はなかなかに凄まじかったが、別にそのような目に遭うのはケイトリンだけではない。有望な令息の婚約者は他にもいたし、それぞれが毅然と対応していた。だからケイトリンも頑張った。
パーシヴァルはいつも優しく、常にケイトリンを気遣い、デートやお茶に誘う。そして贈り物もマメだった。
本当に、疑いようなく、ケイトリンを心から大切に思っていると、パーシヴァルの行動は語っていた。
ケイトリンは、パーシヴァルの愛情に将来を夢見つつ、それでも、もし別れを切り出された時は潔く身を引こうと自分に言い聞かせつつ。きっとパーシーはプロポーズしたつもりでいるのよ、と時には自分を鼓舞した。
ケイトリンの家族は、将来の約束がない事を心配していたけれど、パーシヴァルの誠実さは彼らも知っていた。一度きちんと話をしてみたらと言われたけれど、決定的な言葉がケイトリンの望むものと真逆だったらと思うと、足踏みしてしまった。
卒業を控えた第3学年、この年には社交界へのデビューを終え、夜会にも出席するようになる。
パーシヴァルは、他の令嬢を誘うことなく、ケイトリンにドレスを贈り、ケイトリンをエスコートし、いつもケイトリンの側にいた。
それでも、何か言いたい人は、何がどうなっても言ってくるものだ。パーシヴァルとの縁を未だ諦めていない令嬢たちは、ケイトリンがひとりの時を見計らっては、婚約者でもないくせにと笑いに来る。
加えて、パーシヴァルが近ごろ挙動不審な言動をするようになった―――そう、少し前からケイトリンを見ては何か言いたげな表情を浮かべたり、口ごもったり。
プロポーズだろうか、いや、もしかしたら別れの言葉かもしれない。だって、プロポーズならここまで躊躇するだろうか。
パーシヴァルを信じたい。パーシヴァルが好きで、彼からも愛されていると思う。
けれど、この世界が愛だけでやっていけるとまでは思わない。ハップストゥール家はだいぶ立ち直ってきているとはいえ、パーシヴァルならもっとずっといい条件の相手を探せるのだから。
そうして、不安を捨てきれないままパーシヴァルのエスコートで夜会に出席したある日。
ファーストダンスをパーシヴァルと踊り、飲み物でもとフロアから下がった時、彼の友人だという青年が声をかけてきた。