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四十一話 「再会、そして……」

 もう、この世界で勇者に苦しむ人間はいない。


 俺達はルクロを倒した後、ディウルスの屋敷で休んでいた。



 ムドラズの戦力はほぼ全滅に近い状態になったとディウルスから聞いた。

 ディウルスの騎馬隊も数は残っているが、満身創痍だとも聞いている。


 今はまともに戦えないとのことだが、よくやってくれたと思う。


 シルヴィアに会わせるとディウルスが言ってくれた手前、すぐに俺も会いに行きたい。

 ただ、ルクロとの戦いでどうにも体が動かなかったから、会いには行けなかった。


「お兄様? 入りますよ」


 ノック音と声。

 その声はシルヴィアの声で間違いなかった。


 3年経っていても、忘れることなんて出来なかった声。


「……入ってくれ」


 緊張か、少し怖ばった声になる。


 それを知ってか知らずか、シルヴィアは遠慮がちに扉を開けて入ってきた。


「お久しぶり、ですね。お兄様」


「シルヴィア……」


 シルヴィアは何故、生きているのか。

 そして、城の皆を殺したのは、本当にシルヴィアなのか。


 せっかく会えたのに、そんな血なまぐさい話をしたくはない。

 でもそれは、絶対にしなければならない話だ。


 もちろん違っていてほしい……そんな甘い感情はシルヴィアが持つ血まみれの剣を見た時に、全て吹き飛んだ。


「シルヴィア、何で……何だその剣は」


 シルヴィアは俺の質問に答えず、その剣を俺に突きつけて冷淡に話した。


「あなたは魔王でしょう? 剣を突きつけられて当然の存在では?」


「当然……? 妹が兄に剣を向けるのが当然なのか!? それに、もう……」


 俺はやりきれない気持ちを振り絞って叫んだ。


「もう、争いなんてなくなったんだ! 勇者ルクロは封印された。終わったんだよ、全て」


「私はあなたのことはそこまで、憎むことが出来ない」


「……何の話だ!?」


 シルヴィアが何が言いたいのか、掴みきれない。


「勇者ルクロを倒そうとする魔王があなただったとわかって……。私は力を試した。無理だとは思ったけど……。でも、そんなあなたがルクロを破った」


 シルヴィアが何の感情を持っているかわからないが、ふっと笑った。


「普通、魔王は勇者に破れるものでしょう?」


「普通……」


 シルヴィアが何を持って普通、と言いたいのかわからない。

 だが、シルヴィアからすればその普通は普遍的な価値があるようだった。


「今回の魔王は、いつもと違うかと……そう思って、もう一度だけ会いたくなったの」


「今回……?」


「もしかしたら、勇者を破った貴方達なら真相に辿り着くと思った……」


 さっきから何の話をしているのか、全くわからない。


「でも、私の思い過ごしだったようね。ルクロを倒して、平和がきたと喜んでいるようでは」


 シルヴィアは剣を振り上げて、


「あなたも、生きるに値しない」


挿絵(By みてみん)


 俺に向かって振り下ろした。


「ぐっ……!」


 何とか避けられたが、あの剣の振りは尋常じゃない。

 シルヴィアが剣を振っていたことなんて、なかったはずだ。


 もしかしたら、この3年で鍛え上げたのか……?


「やめろ、シルヴィア……! 兄殺しなんて、本気でやるつもりなのか!」


「今更……。コーネル・ラウドから聞いているでしょう? 私が、王城で何をしたのか」


「まさか……本気で、シルヴィアがやったのか?」


「そう……言ってる!」


 再び俺に迫るシルヴィア。

 速すぎる。


 何とかかわして、逃げるのが精一杯だった。


 だが、あの動き……!


「まさか……あの時の騎士が」


 シルヴィアだって言うのか。

 そうだとしたなら、まともに戦うことなんて無理だ。


 何とか外に出た俺は魔王デュナミスを呼んだ。


「これで、凌ぐ……!」


「……なら、私も呼びましょう」


 シルヴィアが何かの名前をつぶやくと、神殺しの器が現れる。


「まさか……お前も……!」


「これの使い方はアスト、あなたが見せてくれた……。なら、私も使えるはず」


 シルヴィアは神殺しの器に体を預ける。

 そして、全身に魔力が行き渡り、魔王の姿を現す。


「待てシルヴィア……! 戦う前に答えてくれ」


「……何?」


「何で生きて……。それに、城の皆を殺したのは本当にシルヴィアなのか!」


「いいえ……。いいえ、あれはそんなものじゃない。実際、死んでいたと思う」


 シルヴィアはあの時、ルクロに殺されたという。

 いつまでたっても自分の物にならないから、気に入らなかったと言う理由らしい。


「だけど私は『死ねない』。だから、今ここで生きてる」


 貴方と話した時は、ルクロに斬られて死ぬ寸前だったとシルヴィアは話す。

 何だそれは……本当に死にかけていたのか……。


「それなら、何で城の皆を殺した……! やるならルクロだけで良かったはずだろ」


「恨みが抑えられなかった。ただそれだけ」


「恨み……? 皆が何をしたって……」


「生きているだけで、もうダメなのよ。特にあの王家に関わる人間は」


 本当に、シルヴィアがやったのか。


 それだけは聞きたくはなかった。

 ただもう、それが真実だと本人が言うならどうしようもない。


「だったら、何で俺を殺さなかった! それに……どうして今、俺を襲うんだ? 何が目的なんだ!」


「質問が多い」


 シルヴィアは聞いたこともない冷たい答えで、会話を打ち切った。


「目的なんてこれから死ぬ貴方には関係ない」


 シルヴィアの魔王が魔力を帯びた剣を顕現させる。

 俺もカオス・ギルティスを構えた。


「死になさい、魔王……デュナミス!」


 そして、俺に容赦のないシルヴィアの絶剣が迫る。

 カオス・ギルティスで受けるが、全身に衝撃が走ったようだった。


 シルヴィアは強い。恐らくはルクロよりも。


「何で、こんな……シルヴィア。お前はどこでこんな力を!」


「シルヴィア……違う」


「何が違う!」


「一つだけ教えてあげるわ。私は……メル」


「メル? 何の話だ!」


 俺はシルヴィアの話が何一つわからなかった。


「私の本当の名前よ。メル・ルワール」


「メル……ルワール……?」


 意味がわからない。

 そのメルと言うのは何なのか。


 もし、眼の前にいるのがメルだと言うなら、シルヴィアはどこに行ったのか。

 疑問を抱えながら、俺はシルヴィアの強烈な剣戟を受けとめ続けていた――。

第一部はこれで終わりになります。

第二部は設定だけはあるのですが、また時期が来たら書きたいと2人で相談しています。


お読みいただいてありがとうございました!

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