表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/42

第三十九話「新たなる魔王」

「父さん……」


 まだ、信じられなかった。

 こうもあっさり、父が死ぬなんて。


 いや。

 今は戦の最中であることを忘れてはダメだ。


 悲しみに浸るのは、勇者ルクロを下してから……。

 そう思った私は、父がいた場所を背にルクロのところへ向かおうとした。


「危ない……! 皆さん、防御を!!」


 コーネルの声。

 眼の前には光しか見えない。


 ルクロだ。

 あいつが言っているビームだろう。


 とっさに防御魔法を展開したが、それが無ければ私は死んでいた。

 広範囲のものだったため、そこまで威力はなかったみたいだが……。


「ごめんなさい……! 守れなかった……!」


 負傷兵たちがいたところが抉れている。

 あいつは面白半分でこれを狙ったのか、それともアストの挑発か。


 そんなことで、人を簡単に殺すなんて……許せるわけがない。


「どこまでも、ふざけてる……!」


 怒りと憎しみが頭を満たす。

 そんな時、


『我が力を使え』


 声が、響いた。


 とっさに後ろを振り返った。

 その父が使っていた腕……魔王の腕が怪しく輝いている。


『我が力を使え、適合者よ』


 また声が響く。


「適合者……」


 その言葉はかつて、エイフェから聞いたことがある。

 修行が終わった後、私は魔女と呼ばれたエイフェに質問をした。


「私が魔王とはなれないの?」


「ほう、自分から魔王に成りたがるか」


 面白い、と笑うエイフェに私は気にせず問いかける。


「貴女もわかっているでしょう。修行して強くなったとしても、アストの魔力は私には及ばないことが」


「……ふむ。確かに、魔力の量は貴様の方が上じゃな」


「なら――」


「しかし、間違えるな。量は上とは言え、質はアストの方が上じゃよ。短期決戦なら貴様が負ける」


「……」


 アストと戦うことなど、今後ありえない。

 しかし、わかっていても負ける、とはっきり言われるとそれはそれで、不快ではある。


「じゃがな。仮に――貴様が適合者に選ばれれば話は変わる」


「……何、それは」


「神殺しの器はそれだけだと魔力増幅装置になる。普通より少し強力な魔法が撃てるイメージじゃな」


 エイフェは説明を続ける。


「しかし、適合者なら話は変わる。さっきも言ったが、貴様は魔力量が多い。一部分だけしかない神殺しの器だったとしても、適合者に選ばれれば……」


「魔王に、なれる……」


「そうじゃ。ただ、流石に一部分だけだと短時間しか戦えんがな」


「……覚えておくわ」



 そんな、かつての会話を思い出した。

 そして今、適合者と神殺しの器に呼ばれている。


 しかもそれは、ムドラズ――父と呼んだ男が使っていた装備でもあった。

 なら……。


「私が使うのは、必然……か」


『我が力を使え、適合者よ』


「同じことを何度も……」


 使うことに、躊躇いはない。

 父の無念、そして私自身の無念。


 更に言えば、アストを助けるため。


「良いわ。その力、私が使う」


『良いだろう。ここに契約は完了した』


 神殺しの腕が私の右腕に装着される。


『適合者よ、我が名はシャルド。名を呼べば貴様は魔王と呼ばれた力を得られる』


「上等じゃない。それは私が望んた力よ」


 気がつくと、コーネルが私を心配そうに見ていた。

 大丈夫、と言う言葉をこめて私は頷いた。


「シャルド……! 私に勇者を打ち砕く力を与えなさい」


『良いだろう』


 右腕から全身に鎧のような物が覆っていく。

 これは明らかに、アストの魔王と同種のものだ。


 それが全身に周った時、私は自分の中から湧き上がってくる力を感じていた。

 この力なら、戦える。


「待って下さい……!」


 アストが戦っているところに向かおうとするその直前。

 コーネルが声をかけてきた。


「私も、連れて行って下さい! お邪魔はしませんから!」


 邪魔、なんてことはない。

 コーネルも今や大事な戦力だ。


「バカね。コーネル、貴女なら嫌と言っても連れて行くから」


「はい……!」


 私はコーネルを抱えて、アストの元へ向かう。

 この力で世界から勇者をなくすために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ