第三十七話 「勇者大戦⑥ 制圧」
ムドラズが何をしようとしているか、俺は理解した。
ムドラズの騎馬隊が向かっている先には、もう一つのブレイブキャノンがあったのだ。
「ムドラズ!!! よせ!!」
一瞬のまばゆい光のあと、空気を震わすような大爆発。
「!!!!」
目を開けていられなかった。
数秒ののち目を開くと、爆発した場所から黒煙が朦朦と立ち上っていた。
「ムドラズ……!!」
ムドラズは、やり遂げたのだ。裏切り者と蔑まれた彼は、信念とともに散った。
俺は、茫然と立ち尽くした。
その時、ブレゲ達が聖騎士とともに遅れて来た。
まずい!
今、ブレゲが、ムドラズの最期を知ってしまったら………!
「ブレゲ! 来るんじゃ……!」
「アスト! 何してるの! まだ勇者軍の残党はいる! 父の最期を無駄にするつもり!?」
馬上より、俺に言い放つ。
ブレゲは、俺が思っていた以上に……強かった。
「ディウルス隊! 無傷の者は残党処理に当たりなさい!! 負傷者は聖騎士隊の元へ! 聖騎士隊は防御態勢を取りつつ、負傷者の手当!」
ブレゲが聖騎士隊に振り返って言った。
「コーネル!? 無事なの?」
「ここです!」
コーネルが聖騎士隊の中から顔を出す。
「……よかった。あなたには、負傷者を預けるわ。治療部隊長として、彼らを守って。いい?」
「はい、任せてください!」
コーネルは力強く返事をし、治療部隊長として支持を出し始めた。
「負傷者の皆さん! こっちに集まってください! 動けない人は手をあげるか声を出してください! 担架を出します!」
勇者軍の残党たちは、もはや戦意も少なく、逃げるばかりであった。
しばらくのち、俺も一度手当をしてもらうために、デュナミスを封印した。
「ブレゲ、大丈夫か? 少し休もう」
「…………」
ブレゲは黙っている。
「ブレゲ様」
聖騎士隊の一人が、布に包んだ何かを持ってきた。
「ムドラズ様の、ご遺体かと……」
ブレゲは黙ってその布を受け取り、中を見た。
布の中には、骨のような鎧があった。右腕だけの鎧。
その鎧からは、血が滴っている。………ムドラズの血だ。
「………………ホントに」
ブレゲがぽつりと言った。
「勝手に私を拾って、勝手に私を捨てて、勝手に帝国を裏切ったと思ったら………勝手に死んだ」
声が震えていた。
ポロポロとこぼれる涙。
ブレゲは、血だらけの腕を抱きしめて、言った。
「ホント………最後まで、勝手ね。………父さん」
かける言葉が見つからなかった。
俺はただ、ブレゲの肩に手を置いた。
「ぅぐっ………ぅううぅぅぅ……」
ブレゲは、声を噛み殺しながら、泣いた。
勇者軍の残党はみるみるうちに制圧されていく。
この大戦は、決した。
しかし、変だ………。
なぜルクロは出てこない??
ルクロのいるはずの本陣ももぬけの殻だった。
奴はどこなんだ……。
嫌な、予感がする………。
俺は、言いようもない不安が心にしみこんでくるのを感じた。




