第三十二話 「勇者大戦② 真の勇者達」
俺達は、ディウルス・ムドラズ両軍の活躍に胸を高鳴らせていた。
「いける! あの二人が止まらないぞ!」
「すごい戦い方です……!」
コーネルが目を丸くした。
「やっぱり、戦場に出ると活き活きとしてるわね、ムドラズは」
ブレゲが嬉しそうに言った。
「さぁ! 聖騎士たち! 騎馬隊がかき乱してくれてるわ! そこを狙いなさい!」
ブレゲの指揮で、聖騎士は的確に勇者軍を撃破していく。
そうさ! ブレゲの才能も、ハンパじゃない……!
俺は誇らしくなった。
「ギギ! 退却だ! 引け!」
その時、勇者軍の部隊が退却し始めた。
よし! 攻めどきだ!
ディウルスとムドラズの騎馬隊も退却し始めた部隊を追撃するように向かっている。
「ダメ!! 罠よ! 魔法陣がある!」
ブレゲが突然叫んだ。
なんだって……!? じゃああのまま突撃してしまうと、ムドラズ達は…!?
「マグニ!」
ブレゲは、ムドラズ達の騎馬隊の行く先に火炎魔法を放った。
「ヒヒィィン!!」
馬がいななき、騎馬隊が止まる。
「何のつもりですか!?」
ディウルスが叫んだ。
「退却に不自然さがある! あれは十中八九罠よ!」
「根拠はあるのか!?」
ムドラズが問いかける。
「勘よ! 退却しようとしている敵の殿は、魔術師だった! 普通、殿に魔術師は配置しない! おそらく魔法陣を仕掛けている!」
「……」
ディウルスは少し黙って、言った。
「……なるほど。あなたはこの私よりも戦場が見えているようだ。ここはあなたに指揮をお任せします」
「ディウルス……!?」
ムドラズが一瞬驚き、そして言った。
「……よかろう、ブレゲヒュッテよ。我々はお前の指示に従う。この戦、お前が勝利に導いてみせよ!」
ブレゲは静かに言った。
「……望むところよ」
ムドラズはニヤリと笑うと、大声で叫んだ。
「皆の者、よく聞け! 此度の大戦の総指揮官は、ブレゲヒュッテ・ヴィッテルングだ!」
ブレゲは、少しの間目を閉じ、そしていつもと変わらない凛とした表情で言った。
「各隊! ここが正念場よ! 数では不利だけど、私たちには策と、勇気と、信念がある!! それはあのルクロがひとつも持ってないものよ! 勇気あるものこそ、本当の勇者にふさわしいわ! 今この瞬間において、私たちこそが勇者なのよ!!」
「うおおおおおおおおおおお!」
全軍が一気に熱くなった。ブレゲを指揮官として認めたのだ。
「ブレゲ殿! ご指示を!」
「ムドラズ隊とディウルス隊は、引き続き切り込み隊として動いて! どこに切り込むかは、私が魔法で目印をつけるから、見逃さないで!」
「承知した」
ディウルスが言った。
「聖騎士隊は、防御魔法を貼りつつ切り込み隊のサポート! コーネルは、聖騎士隊とともにサポートに回りつつ、同時に負傷者の回復! 大丈夫、あなたならできるわ」
「は、はいっ!」
コーネルがうなづく。
「そしてアスト!」
ブレゲが俺の方に振り向いて言った。
「あなたはルクロ軍の退却先に先回りして! デュナミスの足ならいけるはず! あなたがこの作戦の鍵よ!」




