第二十九話「激突」
勇者軍の本隊が、土煙を立てて近づいてくる。まるで、大地そのものが襲ってくるようだった。
「衝突まであと1分ってとこね」
「みなさん! これを食べてください!」
コーネルが木の実のようなものを渡してきた。
「エイフェさんにもらった、ココカリの実です! 魔力が回復しますから、すぐに食べて!」
たしかにさっきは上級魔法を使い、魔力がかなり失われていた。エイフェからそんな土産があったとは。
「コーネル、ありがとう!」
すぐに口に詰め込んだ。意外にうまい。魔力がみなぎってくるのがわかる。
「さて、どうする!?」
「このまま近づかれたら、遠距離からの弓や魔法で全滅ね。だったら、こっちから突撃してやるわ」
ブレゲはにやりと笑うと、
「みんな一か所に固まって! 先頭はコーネルよ!」
「ええ!?」
コーネルは泣きそうな顔をした。
「さぁコーネル! イノス・メイデンよ!」
「!!」
コーネルは何か気づいたようだ。俺たちはコーネルを先頭にして一か所に固まる。
「衝突まで30秒! 急いで!」
「イノス・メイデン!!」
コーネルの叫びとともに、槍が傘のように開き、俺たちの盾となった。
「なるほどね! 次はどうする!? このまま走って突っ込むか!?」
「走るなんてダサいことしないわ! 風よ!ヒュー!」
ブレゲは風魔法を唱えた。
魔法の風をコーネルの傘に受け、俺たちは文字通り、飛んだ。
「しっかりつかまんなさいよ!!」
空からは、王国の大地が遠くまで見渡せる。
美しい。
一瞬、戦いの事を忘れかけた。
「攻撃、来ます!!」
コーネルが叫ぶ。
勇者軍が眼下から、弓やら魔法やらで攻撃してくる。しかし、当たらない。当たってもコーネルの鉄の傘がはじき返す。
「空中の標的にそうそう当たるもんですか!!」
「みなさん! 着地の衝撃に備えて!」
ぐんぐんと勇者軍が足元に近づいてくる。兵士たちの表情まで見える。みな、驚いた顔をしていた。
「今よ、アスト!!!」
「来い!! デュナミス!!!!!」
着地の瞬間、俺はデュナミスを呼び寄せた。
「ごわっ!!」
「ぎゃぁあぁ!」
周りの勇者軍の兵士たちが、衝撃によってはじけ飛んだ。まるで、池に大きな岩が落ちた時の水しぶきのようだった。
「各個撃破!! あんたたち、死なないでよ!!」
「当たり前だ!」
「生きて帰りましょう!!」
3人と400人が、激突した。
デュナミスが薙ぎ払い、コーネルが突き刺し、ブレゲが切り捨てた。
乱戦だ。
俺たちは、これを狙っていたのだ。




