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二十五話「封印魔法を求めて」

「久しぶりに来るわね、この辺りには」


 俺達は聖都マリアントにあるマリアント大聖堂の近くに来ていた。

 あの後、ブレゲとコーネルが封印の心当たりがあると話してくれた。


 それは神聖教会の大聖堂で祀られていると言う封印魔法。

 ほぼ伝説扱いらしく、どういう形で残っているかはわからないらしい。


 ただ、可能性を考えるとそれを手に入れた方が良い。

 ディウルスにそう言われた俺達はディウルスから手配された馬車を使って、一日ほどでマリアントに到着出来た。


「……俺も久しぶりだな」


 この辺りは何も変わらない。

 特に街などがあるわけでもなく、大聖堂のみが存在感を出しているこの場所。


 始めてきた時はこの教会の人間はどうやって暮らしているのだろうと疑問に感じたぐらいだ。


 ここには父と何度か来たおかげで地理に関しては問題ない。

 父も神の信仰は強い人だったから、俺もその影響で必死に祈っていたのを覚えている。


「それで、どうしましょう。正面から行きますか」


「コーネル。猪じゃないんだから、そんなの無理に決まってるでしょう」


「だったら魔王で」


「もっとダメよ、バカアスト」


「分かってるよ。冗談だ冗談」


 もともと王国と教会はそこまで悪い関係ではなかった。

 勇者が来る前までも関係は良好だったはずだ。


 俺も教会に対しては悪いイメージは一つもない。

 だから、ここで誰かと敵対したいなんて全く思わない。


 逆に俺は……。


「ブレゲ、一つだけ提案してもいいか?」


「何?」


「教会に正直に言って仲間になってもらうと言うのは、難しいのかな」


 俺の助けになってほしい、と思った。


「何でそう思ったの?」


「俺は、そこまで教会が話せない人たちじゃないと思ってる。だから……」


「そう、そうですよね。私もそれで済むなら、その方が良いです」


「バカなの、あなた達……」


 ブレゲは大げさに頭を抱えて話し始めた。


「良い? 冷静に考えてみて。ここには禁忌を犯して復活した元ゾンビの王子とそれを復活させるために聖女を捨てた美少女の私」


 ブレゲは俺達に状況の説明を始める。

 ん? 今、自分のことを美少女って言わなかったか。


「そしてそれについてきたよくわからない聖騎士の3人組よ。こんなのに話を聞いてくれる人がいると思う?」


「……思いません。というか! よくわからない聖騎士って私のことですか?」


「ともかく、こんな3人組に味方するなんて、正気の沙汰ではないわ」


 個人的な関係で助けるなら別だけど、と話してブレゲは言葉を切った。


「それなら、方法としては……」


「個人的な関係で助けてくれる人、ね。ちなみに私はいないわ」


「何でだよ。元聖女じゃないのか」


「……結構、メチャクチャでしたからね。聖女ブレゲは」


 んん! と強く咳払いして、ブレゲは会話を変えた。


「どっちにしても、それをやればその人に被害が被ることになる。それなら、選ぶべきではないわね」


 自分から言いだしたのに、と思ったが、ブレゲの言うことにも一理ある。

 俺達は、今世界的に四面楚歌に近い。


 そんな俺達に味方してくれ、なんて簡単に言えるわけでもないし、それをしてくれるとしても、その人には覚悟が必要になる。

 世界を全て敵に回しても、俺達を味方してくれる覚悟が。


「もういっそ、忍び込んで盗んでしまうか?」


「何それ。貴方、それでも王子? でもそうね……」


 ブレゲは少し考えた後、それで行きましょうと答えた。


「盗んで、その魔法をいただく。最低だけど、それが一番ダメージは少ないと思うわ」


「本気か? たださ、究極の聖魔法だよな。そんな盗むとかするようなやつに使えるものなのかな」


「さあ、使うのは私じゃないわ。コーネルよ」


「ここで私に問題を投げ飛ばさないでください!」


「じゃあ、その魔法って誰が使うの?」


 ブレゲの質問に詰まるコーネル。

 そうだ。結局、聖魔法を使う人間となったら、コーネル一択になる。


「……私、しかいませんね」


「だったらどうする? 俺達だけで忍び込むか」


「そうね……。ただ、どんな形で魔法が存在するかわからない。物によっては近くにいてくれた方が良いパターンもあるかもね」


「なら、忍び込むなら3人か」


「どうします? 流石に3人で忍び込むって、難しいと思います……」


「そうだな。ベタだが……騎士を気絶させて、そいつの鎧を奪うか?」


 出来るだけ怪我をさせないように、と俺は付け加えた。


「そうしましょう」


 適当に言ったが、何故か採用になった。本気かよ。


「あの私は、そんな強盗みたいなことには付き合えません!」


「あなたはそうね。私たちに捕まってるっていうテイにしましょうか?」


「あんたら、そこで何してんだい」


 声をかけられた。相手を見ると、どうやらシスターのようだ。


「ん? あんた、ブレゲヒュッテ……」


「ちっ……!」


 ブレゲはとっさに剣を構える。


「はん。人の顔を見るなり剣を構えるたあ、血気盛んじゃないかい」


「ルーテ……教会のお金をちょろまかす悪徳シスターがそれを言うの?」


 挑発の応酬。

 この2人は知り合いみたいだが、関係値はよくなさそうだ。


「それで、その髪……。やはり聖女を捨てたかい。やると思ってたけどねえ」


 ルーテと呼ばれたシスターは頭を掻きむしる。


「それに……そうかい。あんたは……」


「……」


 俺を怪しげな目で見るルーテ。


「生き返った……はん。なるほどねえ。最悪なことするねえ……」


「何だ、俺のことを知っているのか」


「うっすらとね。聖女の力を使い果たした理由があんたを復活させたことが理由ってんなら納得だよ」


「納得したから、見逃してくれないか?」


「そんなわけないだろ。ま、ここは無難に聖騎士を呼んでタコ殴りに」


「待って!」


 シスターが話し終わる前に、別のシスターがそれを引き止めた。


 誰だ? と思ったが、コーネルは「お母さん……」と静かに呟いた。

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