表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/42

第二十三話「力の解放」

 自分の中に今までとは違う感覚がある。

 これなら勇者に劣ることはないと、そんな確信を俺は感じていた。


「アスト、自信ありげな雰囲気ね」


 ブレゲも満足そうだ。

 修行にしても、ブレゲのおかげでいい結果になった。


「そうだな。多分だけど、これで勝てるはずだ」


「そうね。正直、戦力的にはまだ不安なところはあるけど、ルクロが倒せるなら全て問題ないわ」


 魔女に鍛えてもらった意味は間違いなくあった。

 この力で、完全に勇者を断つ。


「そうですね。私も正直頼もしいです。もちろん、私だって戦いますから」


 コーネルがそう言ってくれるのが嬉しい。

 本来なら、敵に回ってもおかしくない立場だったはずだ。

 それでもここまで着いてきてくれるコーネルには感謝しかない。


「ありがとう、コーネル。頼らせてもらうよ」


「へえ、頼むのはコーネルだけ?」


 ブレゲが挑発的な眼で俺を見る。


「そんなわけないだろ。ただ、聖女様には戦わせてはいけないなって思ってるだけだ」


「聖女様はやめて、そもそもそんなもの脱却したんだから」


「そうだな。あの酷い買い物風景を見せられてしまえば、聖女というのはちょっと苦しいかなと俺は思う」


「うるさいわね。コーネル、貴女も何か言ってやって。私の聖女たる振る舞いはどういうものだったか」


「ええと、その……。ノーコメントでお願いします」


「コーネル!!」


 そんな軽口を叩いていると。

 どこから聞きつけたのかわからないが、

 痩せた男が偉そうに指示をしながら、何人か人を引き連れてこちらに歩いてきている。


何だあいつは。


「おやおやおやおや。本当にまだここにいらっしゃいましたねぇ」


「……キワスト」


 ブレゲが不快感を隠さずに名前を読んだ。

 キワスト。誰だ。

 見た目はやせ細っていて、眼は爬虫類のような眼をしている。

 王国の人間ではないことは確か……なら、帝国の人間だが俺は知らない。


「何の用だってぇ? 決まってるじゃないか? 僕はね。君たちを殺しに来たんだよ」


 髪の毛を触りながら、キワストは自信ありげに言う。


「勇者様に手を上げる人間はまあクズ、悪だからね。殺してしまわなきゃいけないでしょ」


「極端な思想だな。それが勇者の考えってことか?」


「ま、そういうことだねぇ」


「フン、能力が低すぎた上に、横領をして左遷された男がそんなに偉そうに出来るなんて勇者様々ね」


「汚れた女が偉そうに! 真っ先に殺してやろうか、ああ?」


 キワストは図星を疲れたのか、かなり激昂している。


「何で僕みたいな優秀な人間が左遷なんておかしいじゃないか。だから殺してやるんだ」


「さっきから殺す殺すとそればかりですね。要件はそれですか?」


 コーネルが槍を構えて、キワストに問う。


「当たり前でしょうが! 地面に額を擦り付けて、謝るなら許すけどどうする?」


「下らないな、さっさと来るなら来いよ」


「はあ。王子様ぁ、僕らは勇者様に強化してもらってるんだ。負けるわけがない」


「なら、試してみるか?」


 俺はブレゲとコーネルに1人で戦わせてほしいと頼んだ。

 それを聞いたキワストが殺すと呟き……。

 キワストが連れてきた兵士達が一斉に俺に襲ってくる。


「マグニア!」


 俺は魔力の炎を兵士達に打ち放つ。

 兵士達はまとめて吹き飛んでいった。


「ちょっと……アスト。それはもう、マグニアの威力じゃないわよ」


 ブレゲはありえない、と言った表情で俺を見た。


「……はは。修行の成果はあったみたいでよかったよ」


「はあ? おかしいじゃないか? お前ら勇者様に強くしてもらったんじゃないのかよ、ボケ!」


「どうした?もう終わりか。お前自身がかかってきてもいいんだぞ」


 俺が挑発するとヒャヒャヒャと気味の悪い笑いを始めるキワスト。


 それを見たコーネルは「いやっ」と小さく声を上げた。


「ルクロ様から力をもらった僕がぁ? 負けるわけがないんだよ」


 キワストは黒い光をまとい、少しずつ巨大化していく。


「ぎゃえええああああああ!!」


 そして、咆哮。

 まるでカマキリのような化け物になったキワストは両手に鎌のような武器を装着している。


「それが勇者の力なら……」


 正直に言えば。今の俺でもこいつを普通に倒せると思う。ただ。


「魔王の力を使わせてもらうぞ。勇者の名前を出されたら、これを使わざるを得ないからな」


 俺は意識を集中する。


「来い、デュナミス……!」


 魔王が顕現する。

 今までとは違う感覚。

 視界もクリアだし、前以上に機敏に動ける。

 

 これは間違いなく、魔力が強化されたからだろう。


「何が魔王だ小僧がああああ!!」


 キワストがこちらに突進してくる。

 動きが遅すぎて、まるでスローモーションのようだ。


「終わりだ」


 俺は手を向けて、魔力を放った。

 ただ、それだけ。

 ただそれだけの動作だったが、キワストは俺の魔力を受け爆散した。


「お見事です、王子」


 手を叩いて、貴族だと人目でわかるような派手な鎧を着た男が現れた。

 その男はディウルス。


 俺が、今勇者以外で一番会いたい男だった。

 何故ならこの男が。


「ありがとう、と言えばいいか。ディウルス」


 シルヴィアの行方を知る男だからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ