表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/42

第二十一話「ブレゲの洞察」

「ただの…松明ね」


ブレゲヒュッテが言う。


「一体それと条件と、何の関係が?」


煌々と燃えさかる松明を持ったままエイフェが言う。


「貴様らはルクロを倒したい。それには、魔王を強くする必要があるのじゃろう」


「そうです」


「ワシはな、魔王を強くすることができるのじゃ」


「ええっ!?」


「ま、厳密に言えば、魔王そのものを強くするのではないがな。魔王の強さというのは、乗り手の魔力によって左右されるのは知っておろうな」



「……そうなの?」


俺は一応コーネルに聞いてみた。


「わ、私は知りません……」



「まったく貴様らは…。今までよく生きておられたの。仕方ない。魔王についてワシが知っておる事を、話してやろう」


エイフェは丁寧に魔王について話し始めた。魔王は古代の兵器だった可能性があること。乗り手によって姿が変わること。一度乗った人物は「契約」とみなされ、自分専用の魔王となること。


「ワシは、長年魔王について調べてきたが、乗り手の魔力を高めることが、強さを上げる唯一の方法なのじゃ」


「そうか!じゃその魔力をエイフェさんのお力で高めてくれるんですね?」


「貴様は人の話を途中で遮る癖があるようじゃな」


「あ……すみません……」


「それをするための条件じゃろうが」


そう言ってエイフェは、火のついた松明をアストに差し出した。


「この松明の火を1時間消さずにおれたら、魔力を上げてやろう」


「ただし、松明は貴様が持つのだ。アストレアス13世」


「はぁ…」


そんなことでいいのか?と思いつつ、松明を受け取った瞬間。


「あっ!」


火が消えた。


「今さっきまであんなに燃えてたのに……」



「ったく、しょうがないわね。ちゃんと持ってなさいよ! 炎よ!マグニ!」


ブレゲが手から炎を出し、松明に浴びせた。


「うわっ!」


それでも松明には火はつかない。それどころか、ブレゲの炎を受けても焦げ目ひとつつかない。


「何なの……コレ」


「貴様ら、ワシの家の中でそんな魔法を使うな!」


俺たちは追い出されてしまった。


松明が1時間消さずにいればまた会ってやると言い残し、エイフェは扉に鍵をかけてしまった。


「1時間消さないどころか、まず火をつけないと」


それから俺たちは、ありとあらゆる方法を試した。


ブレゲの炎の魔法を使ってみたり、焚き火を起こしてその中に松明を投げ込んでみたりした。しかし、どれも効果はなかった。


数時間後、俺が松明を木片にこすり付け、摩擦で火を起こそうとしていた時だった。


「くぅ……腕が疲れたな……」


「アストさん、もう1時間もこすってますからね。私が代わりにやります」


コーネルが手を差し伸べてくる。


「ダメよ、松明はアストが持つって言われたでしょ?」


ブレゲがそう言った瞬間、俺はコーネルに松明を渡してしまった。


「あっ、そうか。ごめんコーネル。松明返してくれないか?」


「アストさん……コレ……」


コーネルが持っていた松明から、一筋の煙が出ていた。


「今まで何も起こらなかったのに!」


「どどど、どうしましょう?」


コーネルは松明を持ったままおどおどしている。


「とにかく俺に渡して!」


受け取った瞬間。また煙が消えた。



「え……何で?」


ブレゲがじっと見つめて言った。


「アスト、それ、貸してみなさい」


ブレゲにも渡してみると、コーネルの時と同じように煙が出てきた。


しかし、コーネルの時と比べて煙の量が少ない。


「わっ!煙ですね!」


コーネルがはしゃぐ。


「何となくわかったわ」


ブレゲは俺に松明を投げてよこした。


「わかったって、何が?」


「ここからは私の仮説よ。その松明は物理現象で燃えるものではない。それは今までの試行錯誤からわかっている。つまり、何か魔法のようなもので作られたものね」


「そして、私とコーネルは、燃えるまではいかなかったけど、煙が出た。つまり、人によって差がある「何か」がきっかけで燃えるものだと推測できるわ」


「なるほど、じゃあ、その「何か」ってのは?」


「私が思うに、それこそが魔力よ」


「じゃあ、俺には魔力がないってことなのか?」


「ないのではなく、足りないのよ。思い出して、魔王の強さは乗り手の何に左右されたのか」


「魔力か!」


「そう、そしてあの魔王はあなたにしか操れない。つまり、この「火を絶やさない」という条件は、そのままあなたにとっての修行なのよ」


「……そう言うことか」


「それならば、松明をアストさんが持たねばならないって、エイフェさんが言ったのも、アストさんを鍛えるため……」


コーネルが言った。


「なるほどね……皮肉だな。一番魔力が必要な俺が、一番魔力が低いなんて」


「まあ、私やコーネルは教会でそれなりに魔力を鍛えてきたから。それに関してはあなたより一日の長があるわ」


「なら、頼む。俺に魔力の鍛え方を教えてくれ」


「もちろんそのつもりよ、王子様。ただ……」


ブレゲは魔導師がいる小屋を見て、不敵な笑いを浮かべる。


「そういうことを何も言わずに、松明だけ渡すなんて、あの魔導師、やってくれるわね」




3人の姿を透視能力で見ていたエイフェが呟く。


「やっと気づいたか。こりゃ前途多難じゃの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ