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クロノス 〜神殺しの少年たち〜  作者: タロト
蜘蛛は笑わない。
4/6

第三話 初学者のハジメ①

登場人物

一年四組ーズ

・後藤 コトハ

4組担任。落ち着いた様子の元マングース所属刑事。


・真神クロメ

こんな位置に書いてあるが、主人公。昆虫集めが趣味。自らの存在を、極端に認識させにくくする力を持つ。


一年五組ーズ

・剛田 ケンシ

5組担任。ガタイのいい、元殺し屋。


・眞義 トーマ

殺し屋志望。狂気的性格を持ち、いわゆる戦闘狂であるが、圧倒的な戦闘センスをもつ。

「そうですか...そんなことが...。」

「ええ、ですが、あいつは逸材ですよ。

警察志望なら考えものですが、殺し屋志望とあってはね。チームに入るか、仕事を取ってくるものさえ雇えば、あの態度は大して問題にならない。」


ここは、特別職員室。

一般職員の職員室とはまた別に作られたその部屋は、4、5組担当の教師のみに与えられた教官室である。


コトハと剛田は、初日の生徒の様子をお互いに共有していた。

これは、学年が持ち上がった時に、いずれ今の自分のクラスとは別のクラスの生徒を担当することもあるので、大いに価値のあることである。


「ですが、チームにせよ何にせよ、人とは関わらざるを得ません。

やはり、ある程度の節度を知らなくてはなりませんね。」

と、コトハ。


「ええ。これから一年間、もしくはもっと長い期間になるかもしれませんが、その期間で指導しますよ。

あいつのあの才能は、潰されてはもったいない。

...そういえば、4組の...その、クロメ?君は、やはり気になりますか?」

ドリップコーヒーパックの粉にお湯を注ぎながら、剛田が尋ねる。


「そうですね...。彼については、ただ興味が持たれなかったというわけではなく、彼自身の隠密能力によってあれだけ知られていなかったのだと思います。答えられていたのは、同じ中学出身の生徒と、2名のみでした。

あの、全員分の情報を得ようとする状況下で自らの存在を隠し、さらには他全員の情報を探り切った...。

なにより、私に存在を忘れさせたのが、何よりの証拠です。」


「後藤先生の、絶対記憶をかわしたのですか。」


「ええ。私の絶対記憶は、一度覚えようとしたものは何だって記憶します。映像や音、匂いに至るまで、私の記憶は及びますし、一生忘れません。つまり、多分覚えようとすらしていなかったのでしょう。あの自己紹介の最中、私はぼーっとしていた瞬間はないと思います。それでも、私の記憶にはなかった...。

おそらくですが、彼の能力は、人の、彼に対する認識だけを極端になくすものではないかと思います。

姿が見えなくなるわけでもありません。『影が薄い』を、意図的なタイミングに、極端なレベルで発動できるのでしょう。私も、他のクラスメイトも、テスト後には彼を認識していますし、彼自身の存在感は低い方ではないんです。」

小指から人差し指へと、その細い指を机にピアノのように打ちつけながら、コトハは、片肘をついた。

これは、彼女の無意識のうちに出る、思考時の癖だった。


「隠密能力...。私は現役時代は、『マンティス』でしたから、教えられないものだ...。」


「マンティス...殺し屋専門の殺し屋ですか...。マンティスというのも、ある意味マングースに近いですね。」


マンティス。殺し屋をターゲットとする依頼のみを受注する殺し屋。

普通は、依頼を受けた後自分をターゲットとしてその殺し屋に依頼し、1vs1を仕掛ける。


「マンティスでは基本的には、戦いに有利な場所まで逆に殺し屋を誘導してから殺しますから、暗殺という感じではありませんし、私の場合は特に堂々と真正面からの戦いでしたからね。

マングースのようにチーム戦を主にする感じではなかったし、純粋な戦闘技術しか必要としませんでしたから。」

剛田が、出来立てのコーヒーに口をつける。


それを横目で一瞥し、コトハはクラス用のタブレットを手に立ち上がった。


「優秀な生徒を見つけると、ついつい『自分サイド』に引き込みたくなりますね。

高校教師というのは難しい立場です。」


「ええ。ですが、我々はそれを自覚し、時制しなくてはならない。生徒の自由を我々教師のエゴにより縛ってはなりません。たとえ...」

剛田がコーヒーカップを机に降ろす。


「その結果、彼らが残酷な結末を迎えるにしろ。」


                        -四月四日-

「...というわけで、昨日のテストで覚えられていなかった人も、今日はちゃんと覚えられたみたいですね。」

コトハが、今日の再試のデータを見ながら話す。


「昨日も少し話したけれど、授業はこれから、午前は一般教養科目と、初歩危険物要論を行い、午後は特別運動訓練を行います。将来何になるにせよ、これら全ての科目にテストがあるので、再試も含め合格基準ラインを下回る場合は、留年なしで退学となります。『特別運動』がどれだけ優れていても、一般教養科目で一つでも赤点なら、アウトになるということです。」


と、言いつつも、高校にそもそも入学できている時点で頭は悪くないので、退学者はごく稀であった。


「ですが、まず。」


コトハがタブレットを降ろす。


「クラス役員を決めましょう。」



一方、一年五組。


「...というのが授業の方針だ。

様々なことに興味を持ちながら、知識を確実に蓄えろ。」


コトハと同じような説明を終えた剛田は、内心つぶやいた。

(まあ、戦闘に数学の公式は必要ないがな。)


「そして、お前らにはまず。」

言葉を切った後に続ける。


「二人でタッグを組み、模擬戦をしてもらう。」


クラスがざわめく。


「模擬戦といっても、肉弾戦だけではない。狙撃、毒殺の模擬的な道具まで用意してある。

ルールは、口頭で一度説明するが、各自ホームルームのpdf形式のルールブックを見てくれ。」


「せ。先生。」

と、生徒側から動揺した声が上がる。


「なんだ?」


「こんないきなりそんなことするんですか?」


至極当然の疑問である。


「まあ、いきなりのことで動揺したとは思うが、お前たちは、まだ他のクラスメイトに関する把握が完璧ではないだろう。我々特別運動クラスのみ年々早くに各自の把握を行う理由は、色々あって、他メンバーの陣営の確認などもあるが、まず重要なのは、」

剛田がちらりとトーマの方を見る。


「他のクラスメイトに暗殺されないためだ。」

クラス中に緊張が走る。


一年で各クラス30人の2クラス編成であった状態から、2年時には、平均的に1クラス24人程度となる。

そして、3年間を無事卒業できるのは、2クラス合計でも、35人程度になることが多いと言われている。

その理由は、一つは成績不審による退学。二つ目に訓練中の”事故”。三つ目が、学校内での”トラブル”である。


「各自の陣営が割れた後は、特に殺し屋志望の生徒による他生徒の暗殺が毎年起こっている。

これは、将来マングースに所属しようとする生徒を先に摘んでおくというものもあれば、同業者を先に排除しようとするものもある。

また、年によっては、警察志望の生徒による大規模な殺し屋志望の生徒の虐殺があった年もあった。

立場が逆なら即死刑ものだが、その時はその生徒は”捜査対象外”となり、その後卒業して、マングースの狛から特待のスカウトを受けていた。」


淡々と話された内容ではあったが、これは少なからず一部の生徒にこう考えさせてしまった。

じゃあ、それに倣えば、クラスメイトの暗殺は...と。


「ただし....。」

再び剛田が話し始める。


「昨日も言ったと思うが、クラス内での暗殺は俺のクラスでは禁止だ。

これを破った者は...残念だが卒業できないことになる。」

この言葉には、様々な意味が連想できたが、どちらにせよあまり迂闊に殺すべきではないというのはクラスに伝わった。


「では、模擬戦のルールの説明を開始する。


まず、タッグのバディはランダムに決めさせてもらう。無論、様々な生徒との交流が目的だからだ。


お前たちは、これから特別演習場に移動し、街中での戦闘を想定した訓練を行う。

そして、そこで15チームで、30分間同時に戦ってもらう。

といっても、あくまで模擬戦。殺し合いではないことに注意しろ。

もし、仮に相手に意図的に必要以上のダメージを与えたと、こちらが判断した場合は、成績に大幅な減点を与える。

もし、相手にその意図が感じられた場合は、各自に配られる呼び出しボタンを押せば、俺が向かう。

その場合、お互いの点数が0となる。使い方に注意しろ。


事前に、お前たちの理想の戦闘スタイルは確認したから、各自に合った模擬の武器を配布する。

頭に帽子を被ってもらい、各自共通のジャージを着てもらうが、これには特殊な加工を受けた繊維が使われていて、ある人体には害のない透明な液体を浴びると赤色に変色する。この変色は一定時間取れない。


そして、お前たちの武器にはそれぞれその透明な液体が塗ってある。


つまり、武器での攻撃が命中すれば、相手の命中した服の位置が赤く変色するわけだ。

そして、この模擬戦の死は、帽子のどこか一部分が変色するか、ジャージの心臓部分に描かれているハートマークが変色したこととする。

この時、帽子、もしくはハートマーク部分の一部が変色すると、帽子なら帽子全体、ハートマークだとハートマーク全体が赤く変色するから、当たったかどうかの判定で迷うことはない。

なお、帽子やハート部分は、他の道具で覆ったりする行為は禁止とする。


各ペアで二人合わせて5点となるように点数を調節してそれぞれに分け、自分の得点とする。その得点は、事前に申請してもらうから、状況に応じて変更なんてことはできない。一人倒せば、倒された者のその分けた後の点数が、倒した側に入る。

そして、ペアごと倒せば、その五点に加えてボーナス点10点。

30分後一人で残っていれば個人生存点として、10点。ペアで生き残れば、ペア生存点30点。ペア生存点は、個人生存点と重複しない。

これまでに話した獲得点数は、ペアで共有される点数となるので、自分が倒したからといって自分の点数が高くなったり、逆に自分が早くに脱落したからといって点数が下がったりはしない。


とりあえずまあ、そんなところだ。

何か質問は?」


「はい」

と、手が挙げたのは眞義トーマ。

頭に包帯を巻いているのが、昨日を思い出させる。

周りからしてみれば、昨日の一件以来、いつ暴走するかわからない彼が、何かアクションを起こす時は、危険でしかないのだ。クラス中に緊張が走る。


「ああ、なんだ。」


「つまりよー、暗殺というよりは、お互いに意識した上で殺し合う、コロシアム形式ってことだよな?」


「そうなるな。」


「じゃあ、隠れると点が取れない、単純な肉弾戦特化のやつが不利じゃねーか。」


と、言う彼は、様子を見ていても、ハイドタイプと言うよりは明らかに1vs1特化の、マンティスタイプ。

この質問は、彼の立場を考えれば当然であろう。


「だからこそのタッグチームだ。

自分にない部分は他者に補填してもらえ。

そして、肉弾戦特化だからこそできることを考えろ。今回の授業では、それも大事なことの一つだ。」


トーマが、へいへい、と言ったように手を降ろす。

クラス中がどっと胸を撫で下ろす。


「それでは、移動だ。」

五日前くらいに誕生日迎えました。

20歳になりました....

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