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クロノス 〜神殺しの少年たち〜  作者: タロト
蜘蛛は笑わない。
2/6

第一話 蜘蛛は笑わない①

なんか前置きが長い気がすると思うけど、もうすぐだからね☆

働かなくなって良くなったこの世界では、義務教育終了後で、高等学校進学率は約30%。

学費は全額保証され、高校に進学しなくては、普通、職業にはつけない。

その後、各自がそれぞれの職業専門の学校を受験し、きちんとした職を手に入れることができるのは、全人口の約8%。


それ以外は、芸術家ならコンテスト、スポーツ選手なら大会での結果などにより、ボーナスが手に入るというシステムである。


つまり、高校に進学することの難易度が大きく跳ね上がっているのだ。

高校を記念受験する者も多い。


そんな中で、高校進学を果たした者は、この時代、間違いなくエリートであった。



「...で、あるからして...。我が校の生徒として自覚を....。」


ここは、ある高校の入学式。


どこの時代でも、特段変わらないものだ。

一年生は隣の席の者を意識しソワソワし、2年、3年生は早く終われという顔で鎮座していた。


40歳くらいであろうかという落ち着いた様子の女性教師が、校長先生から受け取ったマイクを使い、式の進行を務めている。

「校長先生、ありがとうございました。では続いて、クラス担任の発表です。」


落ち着いていた2年生、3年生が騒ぎ出す。

入学式では、一年生の入学の祝いと共に全学年の担任の発表が行われる。


この学校、私立風見ヶ丘高校は、クラスが一学年に9クラス存在する。

一〜三組は文系進学クラス。

一組から三組の順に、最難関、難関、一般クラス。

彼らは、世間一般で言うところの、「大学」を目指す。

ATENAが世界で唯一理系の研究ができる機関となったことで、今までの大学に当然あった理系枠は消え、文系の思想や社会学、経済学に関しての研究を任されていた。

もしくは、学校の先生などを目指す道もある。とにかく、この時代、文系はほとんど変わらず学習ができていた。


では、理系はどうなったか。


それは、それぞれの国で決まった数だけ受かる試験を受け、ATHENA研究員を目指すのである。

2000年台でいう、最低でも最難関大学医学部に受かる受験力と、メンサに受かるIQ、家柄(というより、テロ組織などと繋がりがないかという意味である。)、危険な思想を持っていないかという、高精度ウソ発見器による質問。

これにより、各国のスパイではないかということも同時に確かめられる。

その後、Athenaとの直接面談を経て、ようやく合格となる。


つまり、各国の選ばれしエリートの中の、さらにエリート。

その中の、さらに、更なるエリート。

彼らは、ATHENAへと配属され、家族や友人、外の世界との接触が禁止される。

ATHENAに配属された後は、ATHENAの研究施設内でひたすら研究に没頭させられる。

というよか、外部に連絡する手段が完全に断たれた施設でただ研究する権利だけを与えられる。


その中で、三年に一度研究発表が行われる。

そこで、自身がATHENA研究員に相応しいことを証明できれば、研究員としてのIDに登録された日数が五年分更新され、出来なければ即刻解雇となる。

入ってきた時のIDに登録された年数は5年であり、新人研究員は、最短で3年、最長で5年の間に研究発表を行わなければならないわけである。


と、まあ、そんな理系を志すクラスが六、七、八、九組。

日本という一つの国に多数存在する大学のどれかを目指す文系とは、一線を画する存在。

高校から一年に一人出ればいいくらいの感覚である。


ATHENAの受験資格は、年齢11歳から26歳。受験参加回数は3回まで。

日本では、高校卒業が最低条件であるが、高校入学条件はこの時代ほとんど皆無である。


つまり、高校に入れさえすれば、例え11歳や12歳...小学生であろうが、ATHENA受験資格を有するということ。


本気でATHENAを目指す受験生の王道は、小学生四年生までに、ひたすらその持て余した時間を中学レベルの学習範囲にあて、中学生そして同級生が中学に入学する時に、高校受験。

高校卒業後、18〜20歳まで浪人。そのうちに一度受験。

そして、大抵はそこでは落ちるので、そこから21〜23歳のうちに2度受験し、そこに20年の全てを賭ける。


そこで、ATHENAに合格すれば、晴れて、“あの”ATHENA職員。落ちれば、廃人。

自分の青春時代を全て捨てたという後悔と、一生研究はできないという絶望感に悩まされる。

中には、最終機会で受験失敗した瞬間に自殺(この時代では安楽死が20歳から合法化されており、基本的に自分のみでの自殺は珍しい)する者も少なくなかった。


つまり、高校といっても年齢層は広く、歳をとってもATHENAを志し、高校に入学しなおす者もいる。


と、ここまで話したATHENA候補生と共に、エンジニア、医者、理系の学校の先生などを志す生徒もいるので、理系というだけで格段に受験のレベルは上がった。理系学生とはそれだけで尊敬の対象であった。

六、七、八、九組は、そんな様々な者が集まっている。


六、七組は、一般職志望。

八、九組は、ATHENA志望。


では、残りの四、五組は。


...四、五組は、名前を特別運動クラスという。


少し勘の鋭い者ならこう疑問に思うかもしれない。


「運動?この時代にスポーツ選手も高校に行くの?」

と。


確かにそうだ。

この時代、スポーツ選手を目指すなら、別に学校に行く必要はない。

実業団やチームなどいくらでもあるし、趣味にしろプロにしろ、自分にあったチームに所属すれば良いのだ。


では、特別運動クラスとはなんなのか。


表向きに言えば、警察のトップを目指すクラスである。


オリンポスは、各国が軍隊を持つことを禁止したため、各国にとっての軍隊は、警察のような、あくまで国内を守る用のみとなり、さらに殺し屋が台頭してきて、テロも多いこの時代では、警察組織は、昔の何倍も大きなものとなっている。

そして、その警察組織のトップを目指すことができるのが、高校卒業者というわけである。


だが、それだけではない。


確かに、このクラスに警察のトップを目指す者が半分程度いるのは事実だが、同時に、もう半分存在する。

光あれば、影あり。


それは、殺し屋のトップを目指す者達である。


殺し屋のチームも、それはもちろん優秀な人材には飢えている。

ただ腕っ節が強いだけでなく、頭脳も併せ持った優秀な人材を。


そんなわけで、この特別運動クラスでは、殺し屋志望と、警察志望の、二種類、相容れない、将来間違いなく敵となる二つの派閥が存在するのである。


そんなクラス、4、5組の担任は、元マングース所属の警察官、序列“こま”(この序列については追い追い説明する)以上、もしくは、「運動を教えられる経験を持った」人物である。




「...3組は、長瀬 ケンヤ先生。」


3年、2年と発表が終わり、今は一年生。

三組が、安堵の表情を浮かべる。

おそらく、当たりの先生であるのだろう。

長瀬先生が、笑顔で手を振りながら歩いて三組へと向かう。

その足取りは、しっかり、堂々としており、自身の教師としての能力に自信を持っているのがわかる。

整ったルックスと、がっしりとした体格に、高身長。

さらに、文系クラスの高校教師になっていることから、大学卒業者、学歴もある。


「よろしくな!!みんな!!」


女子生徒が悲鳴のような歓声を上げるのも無理はない。


「...それでは続いて、四組の担任は、後藤 コトハ先生。」


「...!!?」


会場がざわつく。

そりゃそうだ。なぜなら。


「どういうことだ!!?“あの”特別運動クラスの担任が...女!!?」

「...一体何考えてんだ!!?」

「...殺されるか...レイプされるか...!!」

通常の感覚を持った人間ならそう思う。常識的に明らかにそうだからだ。


「ひゃはっっっ!!俺たちのクラスの担任と変えろよおい!!」

「そうだ!!こっちこいや!!」


そう叫ぶのは、三年五組。


一、二年は分けられずに、四、五組にランダムに振り分けられるが、三年からは違う。

四組は、警察志望クラス。

五組は、「それ以外」クラス。


「静かにしろ、猿ども。」

静かに、だが威圧感のある声は、三年四組から聞こえた。

四組は、大きな声を出すことなく、プレッシャーで五組を牽制していた。


そして、一年四組には、女性が歩いて行く。

そう、ただ歩いて行った。


だが、その歩き方を見た三年、二年が順に黙っていく。

2年はともかく、3年は、歩き方を見て分かった。


ああ、この女は、おそらくまだ俺たちじゃ手も足も出ねえ、と。


「みんな、よろしくね。」

女性がうなずく。

ぴっしりした、高級感漂うスーツ。締まった体付き。長い髪も、戦闘には邪魔であろうに、あえて結んでいないといった様子。170cmくらいであろうか。その身長とスタイルは、モデルを思わせる。その女は若そうでもあり、歳をとっていてもおかしくなかった。

顔に浮かべた微笑は、心から安心したくなるような美しさではあったが、本能がこう警告していた。

「この女に警戒を解いてはならない!死ぬぞ!」と。


「それでは次に、五組の担任は、剛田 ケンシ先生。」


「はぁいっっっっ!!!!」

五組に向かって歩いて行くのは、これも190はあるであろう長身でがっしりした体格の、強面で若そうな男。

髪は短く刈りそろえられており、引き締まった体が、運動神経の良さを表している。

スーツは、筋肉でパンッパンに膨れており、力をこめると破けてしまいそうだ。


五組の前に立つと、男は、

「よろしく。」

そう声をかけると、黙った。

寡黙なタイプであろうか。


その後、六、七、八、九組の担任が発表され、それぞれのクラスに戻った。


最初のホームルームである。


文系、三組では、長瀬の話一つにつき、必ず一笑い起こって、活気あるホームルームであった。

自信を持つのも頷ける、教室の雰囲気の支配能力である。


理系、八組は、元ATHENA職員の柊 トモキによる、ATHENA時代の話や、受験時代のエピソード。

最後には、合格に向けてのアドバイスがなされた。

さまざまな年齢層相手ではあるが、このクラスには少なくともATHENA受験生が集まっているので、真面目に、興味深そうに話を聞いていた。


そして、4組は...。


「みなさん、改めてこんにちは。四組の担任となりました。後藤 コトハです。

教師として呼ばれる前は、警察官でした。」

そう言うと、教室中が、へえーという顔つきになる。

おそらく、ワンチャン殺しy...運動を教えられる経験を持った人だと思っていた者も多かったのであろう。


「みなさんは、恐らく全員初対面という方も多いでしょうし、とりあえず自己紹介から始めましょう。

では...。」


後藤が、出席簿を確認する。


「では、相田くん。お願い。」


「はい。」


相田と呼ばれた少年が立ち上がる。

「相田 コウキ。東峰中出身です。趣味は野球観戦。そして...」

「警察志望です。」


教室中が、少しピリつく。


「よろしくお願いします。」


パラパラと拍手が起こる。


こういうのは、普通、一人目の自己紹介を元に皆していくものだが、だからこそ、気づいてしまった。


この自己紹介は、自らが、“どっち”志望かを言うものになると。


「青峰 ナギサです。好きなことは、読書で、その...警察にはなりません。多分。よろしくお願いしますっ!」


この少女は雰囲気とは裏腹に、“そっち”であるらしい。


その後も、自己紹介は行われていった。


「夜気 ケースケ。趣味とかないです。警察にはならないです。よろしく。」


「...ありがとう。夜気くん。じゃあ...」

笑顔のまま、拍手をやめた後藤は、少し後ろに目をやる。


「じゃあ、蝶々が好きな相模 マイさん。全員の名前と趣味を、出席番号順に言っていって頂戴。」


「!!?」


「どうしたの、相田くんからよ。」


「はい!え、えっと...。1番が相田くんで、趣味は...野球観戦。で、2番が青峰さんで、えっと...趣味が.....読書?で、えっと...あの...」


「どうしたの?まさか、名前も出てこないの?テニスが趣味の稲田くんの名前が?」


「...そうでした!えっと..四番が...」


「もういいわ。ありがとう。相模さん。他に、答えられる人は.....?

まさか、0人なわけがないでしょうね?」


この時、クラス全員は、気づいていた。

彼女が、スラスラと、他の人の名前が出るたびに、顔と名前は事前に見れたにしろ、今日初めて知ったであろう、趣味と名前を一致させていることに。

これが、彼女からの無言のメッセージであることに。

お前ら、まさかぼーっとしてたのではあるまいな、この自己紹介という、最初の重要な情報を得られる時間に。と。


「...小説を書くのが趣味の寺石くん。あなたはこう思っている。

めんどくさっ。別にいいじゃんゆっくり覚えていけば。こいつ、自分の暗記能力ひけらかしたいだけだろどうせ。と。」


「...!!」

寺西が、えっ?という表情を浮かべる。

少し瞳孔が大きくなり、呼吸のリズムが早くなったのが、肩の上下でわかる。図星のようだ。


「...趣味はない、と言っていたけれど、多分バイクが趣味の登達 カズマくん。

君は、こう考えている。俺がどうせ一人ずつ殺していくし、覚える必要なんてねえし。と。」


カズマが立ち上がる。

「な、なんでそんなこと!!?趣味まで!!?」


後藤がにこりと笑う。

「あなたのファイルがチラッと見えたけど、バイクの車体と名前がずらっと並んでいた。

そして、バッグにつけたそのバイクの部品を加工して作ったようなキーホルダーに、首筋に入ったそのタトゥー。

BW...そこから見えないけど、多分BWT.....昔検挙した殺し屋の愛用していたバイクの車種よ。だからわかった。」


カズマが、力なく椅子に座り込む。


「いい。みんな。警察志望ならこんなくらいすぐに覚えないと、現場では使い物にならないし、こういう機会に覚えようとしない、聞こうとしないなんてもっと論外。話にならないわ。」


警察志望の学生達が、唾を飲む。


「それに、殺し屋志望なら、その場の情報をいかに引き出し、理解し、どう立ち回るのか考えるのが基本よ。

できなきゃ、死ぬか、すぐ捕まる。

無論、殺し屋なら、今の法律上即刻死刑なのはみんな知ってると思うけど。」


今度は、殺し屋志望の学生達が息を飲む。


「と言うことで、今回のホームルームは、とにかく他の人と話しなさい。

特に女子は、グループを作るだけでなく、他の人とも話すよう心がけなさい。

いい。ここで恥ずかしがるような奴は、どっち志望でも見込みないし、度胸もないからやめるといいわ。以上。」


このホームルームで、彼女は完全にこのクラスを掌握した。


一方、5組では。


「俺は、剛田 ケンシ。趣味は筋トレで、元殺し屋だ。

数年前、やらかして死刑になりそうだったところをスカウトされて、ここにいる。」


雰囲気からは、実直そうで真面目な印象を与えるこの教師は、元殺し屋。

その巨躯と、鍛え上げられた筋肉が、一気に恐怖を与えるものへと化した。


「なーんだぁ、雑魚じゃねえかよ。」


突然、生徒側から声が聞こえる。


声を出したのは、後方の席の、足を机の上に出した少年。目の上に入ったナイフのような鋭い物で切られた後が痛々しくも、戦闘経験の深さを象徴しているようだ。

目は爛々としており、今にも誰かに殴りかかりそうな、狂気的な目をしていた。


「...話の途中だ。眞義 トーマ。」

別に怒っている風でもなく、淡々とケンシが話す。


「だってそーだろ?サツにパクられるレベルのやつが俺たちに何教えるってんだ?ああ?

しくじり先生ってか?俺みたいにはなるなみてーなのか?あ?」


「はあ。まあ確かに、そうだな。

今のところ君たちの印象もそんなに良くないと見える。


...いいだろう。少し早いが、実践訓練だ。トーマ、かかってこい。」


ケンシは淡々と言ってのけたが、内容はとんでもないものである。

他の生徒達が、驚きの表情で二人を見る。


そして、トーマが軽くストレッチのような動きをして、しゃがみ込む。


え?


筋肉に力が入るのがわかる。

剛田は動じない。


まさか?


トーマが、一気に飛び出し、剛田まで距離を詰めて行く。


今ここで!!!!??


やっと理解した、トーマの列の者達が一斉に横に避ける。


剛田は、まだ動かない。

「入学ワンキル!!!伝説...開始ぃ!!!!!」

思いっきり、トーマが下から蹴りを入れる。


ここら辺の設定とかは、困ったら見に来るくらいでええんやで。

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