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第3話:その名はヴィネス

 ペコリの家に居候してから2日、隣の村で襲われる人が極端に減ったという情報が入った。

 あまり村とはかかわりを持たないこの小さな町で掲示板にまで出ているのは少し以上だった。

「メンバーかもしれないけど、怪しすぎるな…」そうつぶやくと、

「オネットさんなら大丈夫ですよ~、とっても強いんですから!」

 ペコリはぴょんぴょんと軽く跳ねながら、笑顔で優しく元気づける。


「よっし、じゃあ行くか!」

 オネットはペコリの頭を軽く撫で覚悟を決めるが、それと同時にもう別れの日かと思うと何か心にぽっかりと穴の開いたような感覚になる。

「それじゃあ、世話になったな。短かったけど楽しかった。」

 ペコリはきょとんとした顔をして首を傾げた。


「何を寂しいこと言ってるんですか、私も行きますよ?」

 当然のようにペコリは言った。そればかりかいつの間にか準備を済ませていた。

「さぁ、行きましょう!隣の村へ~~!」

 ペコリに言われるがまま気づけば出発していた。


 隣の村に行くには険しい山道を進む必要があり、木の根は隆起し、大きな岩はそこら中にむき出し、

 おまけに草は生え放題と、とても体力を使う道だった。

 そうすると、後ろからうめき声のような聞こえてきた。

「うぇぇ~ん...待ってくださいぃぃ~~」

 声の主はほかでもないペコリだった。


「山道あるから気を付けてくださいって言ったのお前だろ...案内してくれるんだろ?

 ここまで来たらおぶってやるから、早く来いよ?」

 出発から5分。早々にへばるペコリにオネットは世話を焼いており、たった5分という短時間で驚くほど泥だらけになっていて、もはや才能の域だった。


 泥だらけの子羊をおぶり村に着いた直後、とんでもない光景が目に飛び込んできた。

 けだるげな褐色肌の女性が、強固な防壁と罠を張る魔法で紫色のローブを着た連中3人を、一度に相手にしていた。虚空からロープが出てきて紫ローブAを拘束し、Bはいつの間にか出現した深い落とし穴で伸びている。最後のCは巨大ネズミ捕りのようなもので挟まれ、動けなくなっていた。


「おっそいのよオネット。どんだけ待たせる気?」

「悪かったって…この辺の奴らはやったのか?」

 いきなり悪態をつく女性と、慣れているかのように話を進めるオネット。やはり味方だったらしく、話し方からするに仲は悪くなさそうだった。ペコリはというと、急にオネットと仲良くできる人が出てきたので、むくれて拗ねてしまった。


「で、なに?さっきから威嚇してるハリセンボンみたいにプクっと膨れてる泥団子ちゃんは」

 的確だが少し辛辣な表現に言い返せず、またもやペコリはむくれてしまう。

「フフッ、ごめんって、ちょっとからかっただけよ。この近くに川があるから汚れ落としましょ。あ、オネット、アンタは来んな。」

 予想外の優しさに拍子抜けしたペコリは、少しうれしくなり思わずにやけてしまう。また、それをみた女性はあまりのチョロさにびっくりしてしまった。


「さ、いくわよ。」

 そう言って女性はペコリを川へと連れてく。1分ほど歩いて着いたその川は、割と広めで水はとても透き通っており、魚が宙に浮き、飛んでいると表現したくなるほど綺麗だった。

「わあぁ~!綺麗ですね~!」

 感動するペコリに対し女性は聞いた。


「そういやアンタ名前は?アタシはヴィネス・ゾウヒ。知っての通りあいつの知り合いよ。」

 ヴィネスはボサボサの頭をかきながらダラダラとした口調で自己紹介した。

「わたしはペコリです!隣の街でオネットさんに助けてもらったんですよ~!」

 ペコリは相変わらず嬉しそうに跳ねている。


 しばらく話に花を咲かせた後、

「さ、いったんくだらない話はあとにしてその服と体洗うわよ。ほんっと気になるのよその泥。」

 ヴィネスはここに来た理由を思い出し、ペコリを洗おうとする。

「そうでした!…では、恥ずかしいので向こう向いてください…」

 ペコリが恥ずかしがると、

「くだらないわね、早く脱ぎなさい。」

 ペコリの羞恥心をガン無視してさっさと服を脱がしてしまった。


「少女の裸見ても興奮しないのよ。」

 そういって服を洗うヴィネスにペコリがその裸で

「私はもうすぐ二十歳です!ヴィネスさんとあんまり変わらないと思うんですけど…」

 と、相当子供にみられるのが嫌なのか、自分の歳を明かす。

「あらぁ、そうだったの?てっきり十代前半だと思ってたわ。てか、アタシは24歳よ。ペコリお嬢ちゃんと違って立派な大人よ」

 ヴィネスも挑発交じりにだが自分の歳を明かした。


 少々いざこざはあったものの彼女らの仲は深まり、服もペコリ自身もきれいになった。





少しずつキャラが増えて、楽しくなってきました!

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