決闘⑧ 己を知った後はもう1回敵
意味が分からない
何が起きた?
いや、何が起きたかは明確だ。
俺がKを出して、雪ウサギさんがAを出して俺が負けた
俺が考えるべき事は何故俺がKを出すと分かっていたかだ
「これはこれは、面白い事になりましたね~まさか、一発KOが見れるとは」
アンセムが楽しそうにそう宣う
……偶然か?
正直そうとしか考えられない
確かに多少安直に行き過ぎたかもしれないが上手くKにAが当たる可能性なんて低いだろう
ましてや相手の親の時にだ
大方、Kに当たればラッキーで俺の10とか強い数字を切りにきたのだろう
もしくは親では不利だからAで1ターン捨てに来た?
それならば理に叶っているし納得できる
だが、これは偶然の産物
つまりこれは
そう。事故だ
俺はそう考える事にした
ただ、俺は
「ねぇ。雪ウサギさん」
雪ウサギさんの反応が見たくて質問してみた
「今のは偶然?それとも必然?」
雪ウサギさんは俺が質問した時目を瞑って佇んでいた
俺が質問するとスっと目を開け
「必然よ」
淡々とそう言った
「へぇー」
必然ときたか
十中八九ブラフに違いないが俺は質問する
「どうしてそう思ったの?」
返ってきた反応は
「あなたの胸の内をもう1回整理してみてはどうかしら」
と意味不明な回答が返ってきた
胸の内を整理?
つまり、俺の考えが間違っていると?
有り得ない。俺の今の考え方こそ1番効率がいい
今みたいなラッキーパンチが無い限り一方的な負けは有り得ない
となると、やはり、俺を混乱させるブラフ
(その手には乗らないぜ!)
「そっか。参考になったよ」
俺は心にもない事を言った
しかし、ラッキーパンチとはいえ追い込まれた事に間違いはない
なら、次の勝負は負けられない
「話は終わりましたかね?第2ピリオドを始めてもよろしいですか?」
アンセムは俺の方を向いて質問してきやがった
「ああ」
俺は一応反応を返した
まぁ俺から始めた会話だしな
「それでは第2ピリオドを始めます!カードを!」
アンセムの掛け声に応じてピエロの仮面の者達が新しいカードを渡してくる
俺らがカードを持ったのを確認したアンセムは
「それでは親決めと行きましょう!両者カードを場へ」
その言葉を聞いた雪ウサギさんは一切の迷いなくカードを場に置いた
(迷いなしか…)
さて、あのカードは何か…
強いカードならばA
また、前回とリハーサルの時同様に3ならばJなんだが
俺は30秒程悩み抜きカードを出した
「両者カード出揃いました。カードをOPENして下さい」
結果は
フィスコ ♠︎J
雪ウサギ ♥3
「結果フィスコ様の親でゲームを始めます」
俺は考えていた最良の選択肢を選び親をとった
「それでは両者好きなタイミングでカードを出して下さい」
ペタッ
アンセムの掛け声の直後
雪ウサギさんはカードを場に置いた
正に即決即断
いや、最初から決めていたのか?
となると、あのカード
またAの可能性が…
さっきAがいらないカードである為切ったと考えると今回もな可能性はある。
元々俺は親でKを切る気はないのでいいのだが、倒す手札を選ぶ必要はある。
セオリー通りに。10や9を出すか…
それとも4で倒すのを狙うか
雪ウサギさんのカードが4である可能性も非常に高い
4はAを除けば雪ウサギさんの最弱のカードだ
俺なら選択肢の1つとして考える
俺はまた、悩みに悩み抜き1分程たっただろうか
カードを出した
結果は…
フィスコ ♠︎4
雪ウサギ ♥4
「結果。フィスコ様に1ポイント入り「イヨッシャァァァァ」」
俺はアンセムの言葉に被せる様に大きな雄叫びをあげた
それほど、いい選択をしたからだ
自分の思い通りに行き、勝利や成功した時程嬉しいものはない
俺は少なくともそう思う。ましてや俺はその喜びの為だけに生きていると言ってもいい
この緊迫とした状況でこの勝利嬉しくないわけがない
「ハッハッハ。その意気だよフィスコ君!君達は些か静かすぎる」
アンセムは俺の方を向きそう言い。俺は我に返る
何やら観客達もガヤガヤしている
俺は途端に恥ずかしくなり俯いた
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ。本来ほそういった喜怒哀楽があるものだ。むしろ君らは淡々としすぎているんだよ」
俺は考え込みすぎてそんな余裕ないだけだが確かにそうかもしれない
いや、むしろ俺のプレイスタイルからも逸脱している感もある
俺はいつも効率的な判断と相手の手を分析して手を読んで行動していた。効率的な判断はともかくとして、俺はまだまだ雪ウサギさんの情報が足りていない
ただなぁ~多分この子は…
いや、挑戦してみるか
「なぁアンセム。どんな事を喋ってもいいんだな?」
「あぁ。構わないとも。ただ、小一時間もプレイもせずというのは困るから節度は持ってもらえると助かる」
俺は「わかった」と返事し雪ウサギさんの方を向いた
雪ウサギさんは綺麗な顔立ちで相変わらずの無表情で俺の方を向いている
俺はそんな雪ウサギさんに
「ねぇ雪ウサギさん」
少し無言の空間が生まれる
物静かな子との交渉や会話をしたい時の会話の入り方は返事をしてもらう事
いきなり質問をしても無視される可能性が高い
まずは、「何?」とか「はい」とか何でもいいので返させるのが良い
このワンクッションがあるだけで人は反応してしまったしっと言う気持ちになり返さざる得なくなる
これを無視されるならば、意識的に無視されていると考えるべきだ
それならば返し様が変わってくる
そして
「…何かしら」
雪ウサギさんも例外ではなかった。しっかりと反応を返してくる
やっぱこの子。物静かなだけなんだなー
そんな子には
「好きな食べ物何?」
……………
会場全体が無言になった
ガヤガヤガヤガヤ
そして観客達がうるさくなった
雪ウサギさんも今にも首を傾げそうな不思議そうな顔をしている
ような気がする
ここで人がよくする反応は無難にキョトンって顔なんだけどなー
まぁ別にそんな事はどうでもいい
目も泳いでないし。その他動揺している感じも見受けられない
やはり、この子は天然のポーカーフェイスだと確信が強まった
「うるっせーーーーーぞ!!!!」
俺はビクッとなった
何処からか怒声が聞こえた。
アンセムや俺達ではない。観客席からだ
俺の視力は2.0一般レベルより普通に良い程度
こんなにも大勢の中しかも薄暗い中で人を1人探すのは無理
「皆様、アンセムの言葉に少し耳を傾けて頂きたい」
アンセムが
パン!パン!と手を叩きながら言った言葉に皆が一様にアンセムに注目した。
「今回のゲームはモニター越しではなく生で見ていただくものであり、驚きや笑いが起きるのは仕方のない事ですが、先程のお客様のおっしゃる通り静かに見て頂きたいゲームです。」
アンセムは静かな口調で言葉を発する
「皆様の参加型ゲームもございますので、そちらの方にてそういった楽しみをして頂きたい次第であります。もしも、こういったゲームの場でも発言したい場合はVIPルームやモニター観戦の部屋もございますのでそちらを次回はご利用下さい」
と、何やら宣伝をした所でアンセムは
「さて、話を続けてください」
周りが静かになった事を確認し俺らにプレイ続行を申し出てきた
てか…続けろって…
こういう物静かな子はこういう時尻込みして喋んなくなんだって!
俺の構想はダダ崩れである
「あはは…さっきの一発KOがさ…精神的にどうしてもきてて喋りたいんだけどダメかな?」
こうなったら弱さアピールだ!
人間は弱っている人物を放っておけない
放っておくと後味が悪くなりそれを嫌うからだ
人間は自分に無理なくできる範囲ならば助けて上げたくなる
自己満足感を高めたいが為にだ
人とは愚かな生き物だと思うがこれはかなり有効な手だ
「好きな食べ物だったかしら…」
「そうそう!」
俺は無理やり明るく返事する
無理にでも明るく振舞ってると話しやすい雰囲気は作れる
ネガティブの根暗とは誰しも話したくないだろう
声音だけでも明るくすると大分印象が変わってくる
「ボルシチ」
んーあんま知らないな…
こういう時の対処方法は…
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