閑話④ 旅たちの時
本話で閑話終了
ピーンポーン
2度目のインタホーンの音が俺の耳に届いた
正直めっちゃ怖い
メリーさんの電話と同じ心境だろう
それがソフトになった感じ
いや、むしろ自分から出迎えなくてはならない分むしろ怖い?
だが、同時に俺は可笑しいのだろうか?
好奇心が湧いてくる。ホントにスバルさんなら…何者なのか?
俺に出ないという選択肢を選ぶ事はない
俺は玄関まで行き
鍵とチェーンを開けて
ドアノブを捻り。来房者と邂逅した
「こんばんわ。約束通り逢いに来ました。スバルです」
そこには銀髪…いや、白髪の長髪で吸い込まれる様な赤目の女性が佇んでいた。
スバルさんは挨拶をしながら手を突き出し
握手を求めてきた
「……はじめまして。フィスコです」
俺は握手に応じた
というより、自然に手が動いたかのようで拒むという選択肢が無かった
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俺はスバルさんを家に上げた
「すいません。何も出せる様な物が無くって」
俺はもうすぐこの家を出ていく事になっている
なので、飲食物は全て胃の中に入れてしまっていた
「お構いなく」
ペコリとスバルさん会釈をしながら定型文で返答してきた
俺とスバルさんは
1つのテーブルを挟み一人用ソファーに座り向かいあっている
「改めて初めまして。スバルといいます。アナタに逢いに来ました」
「はぁ…どうしてこの家を?」
俺は1番最初に思いついた質問をした
「そうですね…独自のルートと言っておきましょうか」
「独自ですか…」
うーん
正直怪しいな
「フフ。疑われてしまいましたね」
「いえ、そんな事は」
「いいんですよ。私がフィスコ君の立場なら警戒しますしね」
「…すいません」
アレ?俺何で謝ってんだ?
何故だか俺はスバルさんへの返答に謝らなければならない気がした
「で、ではスバルさんは何者なんですか?」
俺はもう一度別の質問をした
「答えるのは簡単なんですけど。質問は順番という形にしませんか?」
「あ、はい。いいですよ」
少し先走りすぎたか
俺ばかり質問するのも確かに悪い
「では、アナタはこれからどうするつもりですか?」
「……どうとは?」
「アナタの事は調べさせていただいてます。家族に置いていかれていて、この家も追い出されるのでしょ?」
どんなルートだよ
探偵にでも探らせたのか?
「…そうですね。取り敢えず、漫画喫茶にでも泊まりながら住む所を探します」
俺は今後のプランを話した
「なるほど。ありがとうございました」
聞きたい事は聞けたのかスバルさんは回答に満足してもらえたようだ
というか、知ってるなら。よく躊躇なく聞けたな
中々ヘビーな話だと思うんだが…
「それで、私が何者か…ですよね?」
「はい」
順番的通りに俺の質問に答えてもらえる様だ
「落ち着いて聞いてくださいね。私はアナタが拉致され、ゲームをやらされましたよね。その関係者です」
!?
なるほどあのゲームの関係者ときたか
「そちらからの、接触は今後一切ないのでは?」
「ええ、そうですね。運営からの接触はありません」
「私は関係者とは言いましたが運営の人間ではありません」
「じゃあ…?」
「私はプレイヤー側の人間という事です」
「プレイヤー……」
なるほど。つまり、アンセムの行っていた接触を禁じられた遊びていない立場
立場としては俺と同じという事か
「プレイヤーのスバルさんはどうしてここに?」
「フフ。それは別の質問ですね。次は私の番です」
「あ、すいません」
俺はついついさっきのやり取りを忘れて質問してしまった
「いいえ。構いませんよ」
何か調子狂うな…
スバルさんの何とも言えない感じ。体感的には神や仏を思わせる
悟りを開いた僧侶の様な和やかな雰囲気というのが正しいかもしれない
「では質問です。今後アナタは何を求めますか?」
何を求める…か
「抽象的な質問ですね」
「素直に思ったものでいいんですよ」
欲しいもの…
お金、名声、ゲームをはじめとしたエンタメ色々ある
でも、やっぱこれ…かな
「……家族」
「なるほど。ありがとうございます」
俺は自分で家族が欲しいと言っておきながら赤面した
凄い気恥しさを覚えたからだ
だが、今の俺の回答は嘘偽りない真実
ずっと俺が家庭を壊す前に戻りたかったし
みんなが家を出ていってからは、日に日にその思いは増していった
「それで、私が何をしにきたでしたね」
今度は俺の質問に答えてもらえる様だ
「では、単刀直入に言います」
スバルさんは3秒程目を閉じ
目を開き
「フィアーゲームの世界にお誘いしに来ました」
ツッ!もしかしたらと思っていたが本当にそうだったのか
あの…舞台にもう一度
「そして、同時に思わぬ利害の一致なのですが、私と家族になって下さい」
スバルさんの目は真剣だ
俺は
「はい」
無意識に肯定した
「フフ。そんな簡単に了承しちゃダメですよ」
「あ」
俺はスバルさんの指摘に我にかえる
本当にそうだ
何で俺は「はい」なんか言ってるんだ
「すいません。今の無しで」
「はい。いいですよ」
スバルさんはにこやかに俺の申し出を受け入れてくれた
「…質問していいですか?」
「ええ。アナタの番ですかね。何なりと」
スバルさんはニッコリと笑いながら
掌を返して話を促してくれる
「…家族って言うのは?」
俺は数ある質問の中で
恐らく後に答えが出るであろう事は分かってはいたが
すぐにでも知りたかった
俺が、ずっと欲しくて
どうしようもならなくて諦めたものだから
「答えられませんね」
「…え」
答えが聞けると思っていた俺は呆気に取られた
だが、そこには理由があった
「これを答えると、アナタがやったゲームについて説明しなければなりませんから」
なるほど
「詳しい事は、ユウジさん。アナタが私に付いてくると決定した時です」
「わかりました」
何となく事情は把握した
俺は、あのゲームは富豪層達の集まりで見世物にされている
という分析をしている
ということは、あのゲームは秘匿されているのだろうと推論が建てられるからだ
「では、私から。そんなアナタに質問です」
「はい」
俺の番が回ってくる
「アナタはもう一度。あのゲームに参加したいですか?
ですが、慎重に答えて下さい。この返事はアナタの人生を大きく左右します」
俺は生唾を飲み込んだ
「自分で言うのも何ですが、私はそれなりにお金持ちです
ゲームに勝てば富や名声など望めば何でも手に入ります
しかし、逆に負け続ければ敗者の末路は悲惨なものです」
ハイリスクハイリターン
まさにライアーゲームやカイジと同じという事か
「死ぬ事は許されず、ただただ労働を課せられる事もありますし
奴隷の様な扱いを受ける事だってあります」
俺は想像する
しかし、俺の考える地獄なんて大した事ないのだろう
「掴み取れるかどうかはアナタ次第ですが
私が今ここにきているという事。それは、ユウジさん。アナタならゲームを生き残こり私と肩を並べるに至る存在になるた確信しています」
何故だろう。俺は洗脳でもされているのだろうか?
謎の安心感がある
「余談ですが、私のこの右手。ゲーム界隈では神の右手なんて呼ばれてまして」
包帯でグルグル巻にされた右手に視線がいく
「私の右手に触れたものには、勝利が降りるなんて言われています
まぁ信じろと言われても無理でしょうが
少なくともユウジさん。私はアナタと雪ウサギさんとの勝負と
私自身がアナタと色々なゲームで対戦してみてアナタならきっと勝ち続けるプレイヤーとなり良き家族になってもらえると思っています」
俺は問う
「俺に、人生を一転させるチャンスと家族をくれるんですよね?」
「ええ、そうです」
「ゲームで勝ち続ければ幸せになれるんですよね?」
「はい。但し負けるリスクも承知しておいて下さい」
今までの話を聞き
俺は決めた
「一緒に行きます。俺をあの空間に連れていって下さい」
「フフ。ようこそコチラ側の世界へ。そして私の家族に」
俺には、何も無い
0からのスタートだ。
この先の人生が、全てゲームで言うのならば
幸せと不幸がゲームで決まるというなら
それも悪くない。そう思った
この選択を俺は未来
歓喜したり、後悔したりとコロコロ変わるのだが
死ぬ間際にはこう思う
「人生。辛い事もあったが楽しかった」っと……
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俺は今
「シートベルトはしっかり閉めて下さいね」
スバルさんのプライベートジェットの中にいた
俺はあのゲームへの承諾の後
後で荷物は、送らせます。
俺の都合さえ良ければ移動すると言われた
俺は、もうこれくらいの事で驚きやしない
俺は特に未練は無かったので二つ返事で了承した
家の前に車が止まっていたので
促されて乗車して
高速に乗り
エアポートへきた。そして、今に至る
「明日の早朝頃に離陸します。それまで眠っておいて下さい」
「…はい」
俺は了承はしたものの眠れる気はしていなかった
そんな俺を察したのか
「良ければコチラをどうぞ」
俺にスバルさんが、錠剤を渡してきた
「安心して下さい。一般公開はされていませんが
治験の終了している。安全な睡眠薬です。良ければ使って下さい」
俺は若干の躊躇いはあったが錠剤を受け取り口に含んだ
スバルさんに紙コップに入った水を手渡され飲み込む
「おやすみなさい」
スバルさんが囁く様に言ってくる
「おや…すみな…さい」
自分でも嘘だろっと思うが
とてつもない眠気が襲ってくる
俺はそのまま意識をたった
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「フィスコさん。フィスコさん」
俺は肩を揺すられて目を覚ます
「……ここは?」
「目的地です。まぁもう少し車で移動しますけどね」
俺は、プライベートジェットを下りた
「こちらへ」
俺はスバルさんと運転手だろうか?
黒服・黒人・サングラスのSPらしき男について行った
しばらく付いて行って確信をもった
プライベートジェットなんて使うんならまさかとは思ったが
日本じゃない
「ここ何て国ですか?」
「イギリスです」
イギリス!
初の国外がこんな形になるとは夢に思わなかった
いや、もしかすると
「俺がゲームをやった所って海外だったりします?」
俺は質問する
「いいえ。アレは東京の某所ですよ」
「そうなんですね」
どうやら俺の「まさか」は外れたらしい
という事は
「ということは、観客は全員日本人だったと言うことですか?」
俺は推察の答えを求めた
「フフ。凄いね。こんな初っ端でそんな事聞かれたのは初めてだよ」
「はぁ…」
俺は右頬を人差し指でかく
「君の状況分析と人を見る力は大したものだね。今までも私の一挙手一投足に目を配っているしね」
「…すいません」
また、バレた
隠しているつもりは無いのだが、今まで早々バレる事は無かったので困惑する
「気にしなくてもいいよ。こんな容姿だからね。見られるのは慣れてる」
まぁそれは容易に想像できるなー
雪ウサギさんにも感じたけど同じ人間とは思えない
お国柄とかじゃなく
どこか神秘的なというか人形みたいと言うか
ちょっと失礼か
「質問に答えると8割って所かな。固有名称は出せないけど、名前を聞いた事のある人もいたんじゃないかな?」
「へぇー」
日本の大統領なんかも
このゲームを知っていたりするのだろうか
俺達が話をしながら、歩いていた
関係者専用の通路らしき道を通り、空港前に出てきた
俺の目の前には白のリムジンが止まっている
「今から私の家に向かう。この車に乗ってもらえるかな」
俺は黒人SP改めゴトーさんというらしい人が扉を開けた
「八、ハロー」
中からどう考えても本場の発音じゃない
アジア系、恐らく日本人の女の子に挨拶された
次回より物語が本格的に始動