閑話③ 始まり
俺は手紙を読んだ後、ひとしきり泣き
今無気力状態になっていた
俺は今する事がない
まだ、幸い残っていた家のWiFiにPCを繋ぎ
今週のアニメを見る
当然、頭には入ってこないが
無理やりにでも何かをしていないとやり切れない
アニメ以外にも
ゲーム
マンガ
ラノベ
俺の生活は両親がいなくなってもさほど変わらない
変わったのは食べ物を運んでくるのが母から
出前に変わっただけ
俺は、こんな自分に失望した
こんな俺は、捨てられて当然だと
何度も、何度も、何度も思った
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そして、そんな日々が2週間経った
「あーーーーークソっ!」
俺は頭を掻きむしりながら吠えた
俺はイライラすると髪の毛を毟る癖がある
その機会は確実に増えた
今までは両親に守られていた俺は本当に一人ぼっち
刻一刻とせまる、この部屋での生活を思うと
不安とイライラが募る
俺の部屋の中でよくいる場所はPCのあるデスクとベッド
その周辺には俺の掻きむしられた髪の毛が散らばっていた
この光景を他人が見ればドン引きし
後ずさるだろう
俺は無気力にゲームをし続ける
人と喋る気にはならないがコミュニケーションには飢えていた
これまで以上にだ
俺はチャット形式のゲームをやりまくった
連戦連勝し優越に浸る
だが、偶に訪れる敗北に今まで積み重ねた勝利を上回るイライラが募る
そして俺は気づく
俺はある状況に
俺に土を付けていた人物。
そのプレイヤーネームの7割が一緒だった事に
そのプレイヤーの名前は「スバル」片仮名表記でた
恐らく日本人
俺は一々戦歴を記録したりしていないが
こうまで同じ名前のプレイヤーに負けると覚える
ましてや、今の俺の状況下
負けた相手を親の仇の様に恨む
しかし、不思議に思う
俺は同じゲームばかりではなく
色々なゲームをその日代わりだやる
3日遊び尽くして他のゲームをやり
ネッ友に誘われるか偶にやりたくなったらやる
というスタンスだ
何年も引き篭もってゲームをやっていたら
やりたいゲームには困らない
今日はアレ!明日はアレ!っとすぐに候補が頭に浮かぶ
そんな俺がひとしきり勝利に満足すると次のゲームへ
そんな遊び方をここ2週間程やっていた
俺が土を付けられた「スバル」
この「スバル」という名のプレイヤーに負けたゲームは1つか2つではなく
数十種類までに膨らんでいる
俺はこのスバルというプレイヤーを知らない
フレンドで無いどころか交流をしていたとしても俺は覚えていない
これだけ、負かさられるなら俺の負けず嫌いな性格からして
コミュニケーションを取り友達になろうとする
俺は人見知りなわけではなく
むしろ、逆。積極的に話しかけていけるタイプだ
俺が家庭環境で勉強を強制されず
そこそこ優秀なクラスメートだったら俺はグループの中心メンバー
だったのではないだろうかと思う
何の根拠もないが俺は自己分析で思っている
実際、同じ様に俺はコンタクトを取ってきたしネッ友ならそれなりにいる
そんな、俺と友達ではないスバル
ゲームの腕は俺よりどんなジャンルを問わず上
そして、俺に付いてくるかのように同じゲームをして負かしてくる
謎の多いプレイヤーだ
俺はメッセージを送る事にした
幸い今プレイしていたゲームにはメッセージ機能がある
俺はメッセージでシンプルに
「強いですね!びっくりしました
最近よく名前を見かけます。凄い偶然ですね!
良ければお話してみたいです。ゲーム談義に花を咲かせませんか笑」
偶然で済まされる訳無いが直接言うと角が立つ
できるだけさ愛想よく、警戒心を持たせない様にと気を張って文章を作った
そして、返事は俺からメッセージがくるのを待っていたかの様にすぐに返ってきた
「いいですよ。是非お話しましょう(^∇^)」
顔文字付きで印象の良い文
だが、シンプルで定型文すぎて
どんな人物なのか、想像しづらい
「今からでも話しますか?
日本人の方ですよね?個人用チャットとかはお互い不安かと思いますのでTwitterとかやっていますか?Twitterならお互い安心できるかと思うのですが」
俺はゲーム外
SNSで繋がる事を希望した
LINEとかカカオトークだと警戒されるし
Facebookも踏み込み過ぎだと思う
妥協点はTwitterだと俺は思っていて、概ねその考えは間違っていないと思う
ゲームオタクなどはTwitterの脇は結構甘い傾向にある
だが、
「すいません。Twitterはやっておりません」
そっかやってないのか
やっていない場合もあるから
なら、このままこのゲームか次のゲームに誘ってみるとか色々俺が考えていた所スバルさんから続けてメッセージがきた
「話の場は私も設けたいと思っています。今しばらくお待ち下さい
このゲーム内でメッセージを送らせていただきます」
俺はその返信に
「わかりました。待ってます!」
と打った
俺はこの家を出る
だが、まだ家を出るまでに6日ある
荷造りなど必要だが
PCは後回しだ。ギリギリまで俺はゲームをやるつもり
6日の間にメッセージが飛んでこなくても俺は
ネットカフェにでも行ってゲームをする
俺のPCはノートパソコンだ。
デスクトップPCは部屋に人が入るので選択肢には無かった
なので、ホテルに止まればWiFiを使ってプレイする事もできる
宿無しになっても俺がゲームを辞めるつもりはない
そして
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5日が経った
既に殆どの荷造りが終了
と言っても持ち歩ける分には限りがある為
お金と着替えとエンタメ類を詰め込んだキャリーバックを2つ
持ち運ぶ事を断念したゲームなどは明日古本屋に売りにいくつもりだ
生活費の足しにしようと思う
俺はやる事をやり、気兼ねなくゲームをしていた
俺は1日に2度。午前と午後にスバルさんと話したゲームを覗き
メッセージが来ていないか確認していた
そして、会話から5日後の今日メッセージBOXにメールが届いていた
「は?」
そしてその内容に、俺は思わず声を上げた
その文は想像の斜め上を行く奇妙なものだった
「日本時間。6月28日 20時00分にアナタに会いに行きます
自宅にてお待ち下さい。貴方と話せる事を楽しみにしています」
ちょっと待て
会いに行くってここに!?
それに20時って…
ピンポーン
何のイタズラか奇跡的に時計の針は20時00分を刺した
そして、20時00分を告げるインタホーンが家に鳴り響いた
……怖っ!?