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フィアーゲーム  作者: ユートピア
決闘(デュエル) 編
14/40

回想① ドロップアウト ユウジ編

俺は家に帰ってきた

俺の今いる場所は人生で間違いなく1番長くいた場所


自分の部屋だ


俺は「決闘(デュエル)」が終わった後

雪ウサギさんとは別の部屋に連れていかれた


密室空間で待っていろと言われたので

ずっと先程まで行われていた勝負の事を頭の中で反芻させていた


そんな俺は異臭がしてきたと認識した途端に意識を失った

恐らく睡眠ガスとかって言う類のものだろう


気づけば俺は俺の住んでいた町にいた


揺すられて起きると家の最寄りの駅の前に止まっている車に乗っていた


ピエロの仮面を被った男に「降りろ」っと無骨に言われたので

俺はすんなりと指示に従って降りると自動でドアが閉まり


車は去っていった


取り残された俺は

正直帰りたくないと思いながらも帰路についた


ちなみにリハーサルで勝利した報酬30万円は15万円ずつに折りたたまれて両方のポケットに入っていた


20分かけて歩き

家についた


時間は早朝

朝日が登ってきてから、そう時間が経ってはいないだろう

今季節は6月なので5時といった所だと思う


俺は家族に迷惑をかけるなど一切考える事なくチャイムを鳴らした


鳴らして数秒後

ドタドタっと走って扉に向かって来る様な音が聞こえたかと思うと


勢いよくドアが開き


「お兄ちゃん!?」


っと言いながら

妹が俺を出迎えた


俺は「ただいま」っと言おうとしたが喉に引っかかり

発声する事が出来ず無言で妹を押し退けて靴を乱雑に脱ぎ捨てて


家に上がり、自分の部屋に入った


そして、今に至る



「彩菜の顔…久しぶりに見たな…」


久しぶりと言っても1ヶ月前には会っていると思う


俺の実妹である彩菜は現在高校1年生

医療の勉強をしながら部活もバリバリこなす文武両道な子


そんな妹と会ったのは夜中にトイレに行った所鉢合わせた時

邂逅(かいこう)の時間は数瞬。言葉はなく目があっただけ


何故こんな状態かと言うとシンプルな事


俺が【引き篭もり】だと言う事


俺。坂巻裕二(さかまきゆうじ)が引きこもりになった理由は約2年前に遡る


俺の家は代々続く医者の家系

父はもちろん母の家系も医療関係という薬品の匂いまみれの環境で育った


何となく察して貰えただろうか?


そう。俺はドロップアウトした。

親や親戚からの期待に押し潰されたのだ


詳しくは思い出したくもないが


「お前ならできる!」

「何故こんな事が分からないんだ!」


などの言葉を浴びせられ


昼夜問わず勉強、勉強、勉強、勉強


俺は疲れ果てた

何かが高校2年生の時だったかプツンと何かが頭の中で切れた


俺はブチ切れ家の中で暴れた


母は頭部から出血

止めようとした父は俺の抵抗により吹き飛ばされて右手骨折

妹はワナワナと震えて嗚咽を漏らしていた


俺はひとしきり暴れて部屋に閉じこもった


閉じこもった後はどうなったのか知らない

数時間後、23時という時間にも関わらず遠方から親戚がきた事を考えるに妹が親戚に電話したのだろう


両親は普通なら救急車を呼ぶ所だろうが

二人ともその医者だ。自分で直したか応急処置だけ済ませて親戚に最後の仕上げをして貰ったのだろう


俺はというと正直部屋に閉じこもった直後に罪悪感が芽生えた

明日の朝。俺の心が落ち着いたらちゃんと謝ろうと思っていた


だが、キッカリ24時位か

怒声が聞こえてきた


「ユウジ!下の惨状はどういう事だ!」


親戚の叔父さんの声だ


「何という出来損ないだ!情けないったらないぞ!」


その言葉を聞き

俺の頭は少しずつ落ち着いていた所だがずくに沸点までたした


「うるっせーな!お前らが悪いんだろうが!」


俺は言葉と同時に壁を思いっきり殴りつける


「何だその口の聞き方は!そもそも私達のせいとはどういう事だ!」

「どうもこうもねぇよ!毎日毎日、勉強漬けで自分の時間はねぇし!結果出しても当たり前だと言われ誰からも評価されねぇーし

いざ、最高点から少し点数落としただけで学年だけでなく全国の奴らと比べてもトップクラスなのに頭ごなしに叱られるとかぶざけんなよ!」


俺は感情のたけを思いっきり叫びながら

都合3回言葉の最中に壁を殴りつけた


「何を言っとるんだ!当たり前の事だろう!我が一族にとって優秀である事は生きていく上で最低の条件だ!今やらなねば将来後悔するのはお前なんだぞ!」


こんな事言っても何もならない

だが、俺の口は止まらない


「俺は医者になんかなりたくないんだよ!普通に友達とカラオケ行ったりボーリング行ったりゲームしたりしたいんだよ!何で俺だけ…」


「それはお前が我が一族の血筋を引いているからだ」


それもだよ

俺はその


「血筋、血筋うるさいな!好きでこの家庭に生まれたわけじゃないんだよ!勝手に理想押し付けんなよ!期待すんなよ!俺の人生を強制すんなよ!」


あぁダメだ

俺が今まで歩いてきたレールが脆く崩れいていっている気がする


「とにかく!ここを開けなさい!」

「うるさいな!さっさと家に帰れよ!」

「その生意気な口から正してやる!出てこい!」


叔父さんはガチャガチャと

無意味にドアノブを鳴らす


「もうやめてください!私が!私達が悪かったんです!」


そこへ慣れしたしんだ声の持ち主

お母さんが叔父さんと俺の喧嘩の仲裁にきた


「ユウジごめんなさい。お母さん達が悪かったわ。もう勉強しなくてもいいから。ゲームもお友達とも遊んでいいから、ね?」


「何を言ってるんだ幸恵さん!あの子は大事な跡取りだろう!」

「いいんです!あの子の言う通りです。私達がいけなかったんです」


あぁ、やめてくれよ母さん


「ユウジ?もういいのよ?何が欲しいの?ゲーム?パソコン?」


やめてくれ母さん


「もう頑張らなくていいの。私は跡継ぎよりユウジの方が大事よ

だから、ユウジが嫌だと言うなら頑張らなくてもいいわよ」


俺は明日の朝に朝食を食べに部屋を出るつもりだった

俺も暴れたのは悪いと思っているし。別に跡継ぎは気乗りはしていないが両親が望むなら俺は頑張ってもいいと思っている


「ユウジ?出てきて?話し合いましょ?」


叔父さんの言うように病院を受け継いできたという事はわかっている

だから、俺も受け入れる。


さっきは売り言葉に買い言葉で叔父さんに反論

偽りは無いが本心でもない


それなりに従順に両親の期待には俺なりに頑張ってきたんだ

本当に嫌ならとっくにリタイアしている


なのに


「ユウジ。無理をしなくてもいいわ」


そんな事


もう期待しない。何も望まないなんて言い方を1度でもされたら


決意が鈍る。その言葉に甘えてしまう。


俺は両親への罪悪感から謝れなくなってしまう


「ユウジ?ここを開けて?お母さん達が悪かったわ」


今はそっとしておいて欲しい

明日ちゃんと謝るから。その時、怒って欲しい


「ユウジ?」


頼むから、そんな弱々しい頼む様な声で俺を呼ばないでくれ


「何で出てきてくれないよ!謝ってるじゃない!いつも聡明で賢い私の自慢の息子に戻ってよ!いつもの様に笑顔で母さんと呼んでよ!」


俺はもう頭の中がグチャグチャで冷静ではなかった

俺は衝動的にドアに向かって学生カバンを投げつけて


「うるさいんだよ!ほっといてくれよ!」


恫喝した


学生カバンと衝突したドアは「ドンッ!」と自分でも驚く位の音がした


外にいる母と叔父さんは何の反応もしない

恐らく呆気に取られて放心状態なのだろう


俺がそう考えていると

ドアの向こうから母のすすり泣く声が聞こえてきた


「ご…ごめんな…ヒック…さい」


嗚咽で聞き取り辛かったが何を言っているのかはわかった

俺は聞きたくないと思ったので布団を頭から被り


音を遮断した


すると叔父さんが何かボソボソと母と会話をして

俺の暴れたリビングにだろう。戻っていった


そして、俺はこの運命の日を気にドロップアウトしていく


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



次の日の朝

俺は恐る恐る部屋を出て朝食に向かった


無論謝る為だ

大丈夫。元に戻れる。今日からまた立派な息子になればいいんだ


俺はそう思っていた

現実はそう甘くはない


俺は深呼吸をしリビングの扉を開けた


「おはよう!」


なるべく元気よく

昨日までの俺みたいにいつも通りに


「ヒッ!?」


だが、母さんはいつも通りに「おはよう」とは返してはくなかった


明らかに怯えている

俺にはわかる。親や親戚の顔色ばかり伺ってきてばかりだった人生


人の機微には敏感だ

いや、敏感でなくとも誰でもこの反応は察するだろう


「お…おはよう。……ご飯できてるわよ」

「……ありがとう」


もう。昨日には当分

もしかしたら一生戻れないとこの時悟った


この時、邂逅1番に謝れば未来は変わっていたかもしれない

しかし、俺は言えなかった。母の気まずそうな態度


何よりも自分の息子に何を話せばいいのか

必死に頭を悩ませオロオロする初めて見る母に声をかける気が削がれてしまった




変化は母だけでは無かった


妹の彩菜は余程怖かったのか俺とマトモに喋れなくなった

母のぎこちない感じではなく本当に俺の目をみて喋れない感じ


1番難易度が低いだろうと浅はかな考えの元妹にまず謝ろうと

少し強引だったかもしれないが謝ろうとした

しかし、返ってくたのは生返事で要領を得ないもの


それどころか瞳には恐怖が写り

目線を合わせにいっても目を逸らされる始末


1度ついた嫌悪感、恐怖は容易に払拭できるものではない

それほどまでに彩菜にとって自分で言うのもなんだがニコニコ笑顔耐えなかった秀才の兄と昨日の豹変したかの様な俺はあまりにも違いすぎて許容できるものでは無かったのだろう


優しい妹の事だ。気持ちは汲んでくれても本能が拒否するのだろう




父はというと

これに関しては父も少しは悪いと思う


俺は学校に行く気分でもなく部屋に閉じこもる事にした

これに母は何も言わなかった。俺は学校を休み夕方。トイレに部屋を出た所で帰宅した父と顔を合わせた


その父はというと

俺を睨み付けた


俺は心の中で動揺と共に憤りを感じた


何で父に睨み付けられなけるばならない

確かに腕からぶら下がるギプスは俺のせいだ


反省している


だが、そのキッカケを作ったのは両親であり

主にこの父のせいと言ってもいい


父はそれなりに厳格な人だ

笑顔がないという訳では無いがメリハリをつける人というのが適切


そんな父の元で長年育ってきたのだ

ある程度は耐性がついている


だが、俺はこの時も冷静になれなかった

ここがやり直す最後のチャンスだったかもしれないのに


「お前には失望したよ」

「は?」


俺のこの時の気持ちは呆気に取られたの半分、憤り半分だった


「環境に不満を持つ事はあるだろう。だが、暴力に身を任せるとは

お前をそんな風に育てたつもりは無かったんだがな」


コイツ何言ってんだ?

これが俺の頭の中に浮かんだ最初の思い


「何だよそれ…俺が頼んだら友達と遊ばせてくたのかよ!

違うだろ!?何回も昔言ったさ!友達と遊びたいってさ!!

だけど何て言った?」


俺の口はもう止まらない

ダメだ。導火線に火がつくのを自分じゃ制御できない


「父さんは何度も言ったよな?お前の人生に友達なんて必要最低限で十分だ。放課後にまで時間を使ってやる必要はないし価値も無いってさ!」


俺は何も最初から従順だった訳では無い

小学生に入るまではそれなりに子供らしく育った


教育が始まったのは小学生に入ってから

そして、小学生2年生の頃には俺に父に逆らうという気は失せきっていた


「ッッ!何なんだ!その口の聞き方は!」


父にも導火線の火がついたみたいだ


俺の中の警報が鳴り響く


(もうやめておけ)(今すぐ謝れ)(取り返しのつかない事になるぞ)


っと

だが、1度ついた火はこれまど気づいた信頼関係を壊すまで消えない


「口の聞き方とか今はどうでもいいだろうが!」


「どうでもよくなどない!そもそも何だお前!まず謝るのが礼儀だろう!この腕を見ろ!」


「原因はお前らだろうが!」


「クッ…親に向かってお前とは何だ!」


口調なんてどうでもいいじゃないか

話し方に礼儀だとか礼節だとか心底くだらない


そんなの求めるのは日本くらいだけなんだそうだ


本当にムカつく


俺は頭を掻きむしり


「うっせーーーんだよ!」


俺は小走りに尿意の事など忘れ部屋に戻った


そしてそこからは父と会うとまず、口喧嘩で始まる様になった

母は止めるが止まりはしない。そんな光景を見る妹はただただ黙る


家族関係の修復は絶望的になった


そして、学校にも俺の居場所はなかった


俺はあの始まりの夜

母に「もうがんばらなくてもいい」と言われ


父に期待されなくなり


妹の模範でいようとしていたが、どれだけ頑張っても恐怖が先行するこの状況


医療の勉強はもちろん学校の授業もやる気を無くした


ならば、ここからは友達と遊び放題だ!

と思っていたのだが


放課後に一緒に遊ぶまでの友達は俺にはいなかった


最初の方は俺が


「今日からは放課後も一緒に遊べるぜ!」


と学校で話す程度の友達と一緒に遊びにいったりもしたが


勉強ばかりで流行に疎く

カラオケなど言っても一緒に盛り上がれない


それどころか、俺の通っている学校は医療の学校だ

当然俺以外の同級生も医者や薬剤師や研究者などを目指している


話題に疎く。空気が悪くなったムードで話を繋げる為にされる話題が


医療の勉強の話だ


俺の成績はトップクラスだ

なら、折角なら質問をしようという考えはわかる


だが、それは俺が今1番触れられたくない話題だ


それが露骨に態度に出ていたのか医療の会話は無くなった

それと同時に少しずつだが、友達…いや、友達でななく

クラスメート程度だったかもしれない。交流はなくなっていった


そうなると、学校はただただ聞きたくもないお経を永遠と聞かされる様なもの


俺にとって学校に行く意味は無くなり、部屋に閉じこもる様になった




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


引き篭もり始めて1週間は父はガミガミと言っていたが


2週間経つと諦めたのか何も言って来なくなった


そして、食卓に顔を出さない俺に母はドアの前に3食を置く様になった


ドラマでよく見る光景だ

まさか自分がこうなるとは思っていなかったが、自然とこうなるものなのだろう


母、妹は一切喋りかけて来なくなり


俺はやる事が無くなった

ここで、俺は思い出した。母の言葉を


「ゲームでも、PCでも何でも買ってあげるから」


俺はその言葉を思い出した

そして、晩御飯の食べ終わったお皿にクレジットカードの番号を記載して欲しいという旨の紙を備え付けて頼んだ


そして、母はそのお願いに応じた


そこから、ゲームの楽しさを知った

俺はあらゆるゲームをした


その中でもハマったのは駆け引きのあるゲーム


チャットやオンセに関わらずやり倒した

ゲームも楽しいが、それ以上に人とのコミュニケーションに飢えていたのがハマった要因だろうと思う。


そこからは、何も特筆するべき事はない


食って、寝て、ゲームの3連コンボだ


そして、俺は2年後に部屋から連れ出され

ゲームをやらされ完膚無きまで雪ウサギさんにやられる


そして、今にいたる

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