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アルプトラウムガーデン  作者: しゅてふぃる
5/8

第5話・・・食堂での再会

X1518年、ミュー王国

ミュー王国へと踏み入れたリヒトは言う。

「とりあえず無事にミュー王国にたどり着いた!」

「ここでは魔物が現れるんやろか。」

「それも調査するために来たからね。何か分かると良いけど。」


数日前、強大な魔物が現れた日の終わりごろ、宿にて

「ん~・・・あれ、ここは?」

「あ、目を覚ましたんだね!良かった。レンもさっき目を覚まして少し外で夜風に当たってるよ。」

リヒトが目を開けると、ヨシダが声をかけてきた。リヒトはハッと気が付くとヨシダに尋ねる。

「そういえば魔物は?魔物はどうなったの!?」

「自分が戻ってきたときにはもう、魔物はいなかったよ。誰かが倒してくれたみたいだ。」

その答えを聞き、リヒトは良かったと胸をなでおろす。続いてレンは外にいるんだよね、と確認し、宿の外へと向かう。


キィと音のなる扉を開けて外に出ると、暗闇の中1人の少年が空を見上げ突っ立っていた。その少年に声をかける。

「今日は大変だったよね。体は大丈夫?」

「大変だったな。身体能力強化の魔法のおかげで体はちょい痛いけど、大きなけがはないな。」

「今日みたいに・・・今日よりは弱かったけどミラにも魔物がいきなり現れたことがあったよ。」

「そうなんや。もしかしたら世界中で、何か起こっとるんかもしれんな。」

あくまでトーンは冷静に2人の少年の会話は続く。ただ2人は確実に、そして静かに胸の闘志を燃やしていた。

突然、先に外に出ていた少年が声を上げる。

「リヒト!・・・俺は、俺は強くなるで。今のまんまやったら、王になってもこの国を守れへん!もっと強なって、今日の魔物なんかちょちょいのちょいで倒せる男になるで!」

後から外に出てきた少年も驚きながら、でもその言葉をしっかりと受け止め言葉を返す。

「あ、ああ!俺だって、お前に負けないくらい強くなってやる!もっと、もっとな!」

その少年たちは、闇の中で手を握り合った。強くなるという誓いを込めて。


「遅うなってすまんな。」

レンはヨシダに声をかける。

「いやいや、全然待ってないから大丈夫だよ。それより明日は・・・」

ヨシダが次の言葉に詰まっていると、リヒトが言葉を続ける。

「明日はミュー王国に向かう予定に決めたんだ。センセ王国はだいたい見て回ったし、ミュー王国なら近いから。」

「ミラ王国でもセンセでも街中に急に魔物が現れたんや。他の国でも現れてるかもしれん。その件もちょっと気になるからな。」

「なるほど。うん、分かった。」

こうして一行は、ミュー王国へと向かうことになった。


「さってと、まずミュー王国でしないといけないのは、あいつを探すところからだな。」

「あいつ?」

リヒトが最初の目標を掲げる。その目標の人物とは。

「この国の王候補、アイやな。」

「アイ・・・って?」

「レンは俺が最初に旅した時に仲間だった内の1人だって言ってたでしょ?アイも最初の旅で仲間だった内の1人なんだ。」

少し弾んだ声でリヒトは説明する。そしてどこへ向かうかの説明もする。

「この後、この国の城に向かいます。」

「もしかして何の策もないまま行くんやないやろうなぁ・・・?」

「ちゃんと考えてるよ、安心してくれ!」

そう言って、一行はミュー王国の城へと向かっていった。


大陸の中心に位置するその城は、周りは高い柵で囲まれ、その内側には池が広がっている。城に渡るには、橋を下さなければならず、外敵からの侵入を抑制する効果を持つ。

その城の門にはやはり門番がいて、怪しい人間が中に入らないように見守っている。

「こんにちは、城に入りたいんですけど良いですか?」

「どちら様でしょうか?」

門番が尋ねると、リヒトはミラ王国の王子ということを明かす。再度門番が尋ねる。

「アポはございますか?」

(確か、前はアポがないから断られたんだよな・・・ここは!)

「はい」

「どのようなご用件でしょうか?」

「アイ・ミューとの面会がある予定です。」

「お調べしますので、少々お待ちください。」

(ふっふ~ん、楽勝じゃん。)

リヒトはどや顔で後ろの2人に顔を向ける。


しばらくして門番がリヒトに声をかける。

「あの~本当にアポはございますか?アイ様は現在外出中でございます。」

「うっ・・・!」

「・・・はぁ、ガキのいたずらか。まあ今回は見逃してやる。中には入れてやらないがな。ほら帰った帰った。」

後ろで見ていた2人も肩を落とす。結局リヒトはセンセ王国と同様に、今回も城に入ることは出来なかったのであった。


とぼとぼ街中を歩くリヒト。後ろからレンとヨシダも続く。

「はぁぁぁぁぁ・・・また駄目だった・・・」

「あれで対策立ててたつもりやったんか・・・」

レンがそう言ったその時、リヒトのお腹がぐぅ~となった。

「あはははは・・・飯にしよう!飯に!」

「やれやれ・・・これでほんまに大丈夫か~?」

そうして3人は飲食店に向かうことになった。


3人が街道を歩いていると、一軒の食堂があった。価格も手ごろな料金ということもあり、3人はそこで食事をすることに決める。

ガラッと引き戸を開けると、昼時よりも少し前に関わらず大勢のお客が入っていた。

「いらっしゃいま、あっ!・・・」

店員さんが大きな声で迎えてきたが、何か様子がおかしいようだ。持っているお盆で顔を隠している。

「3名様でしょうか?・・・こちらのお席へどうぞ・・・」

何かおかしいなと思いつつも3人は案内された席へ座る。そこへ店員さんがメニューを持ってやってくる。

「こちらがメニューになります・・・」

なおも顔を見せない店員さん。なかなかそのことを言えないリヒト達だったが、他の席のお客から声がかかる。

「どーしたんだー!アイちゃん!メニューだけじゃなくてあれも渡してやらなきゃー!!自分のためだろ!?」

他のお客の声を聞き、リヒトとレンが反応する。

「「アイ!?」」

2人が突然の大声を上げると、周りのお客もびっくりして静まり返る。


お客が大勢いるにもかかわらず、しーんと静かな店内。「アイ」と呼ばれたその店員さんが口を開く。

「あ・・・あの、人違いだと思います。わ、私は・・・あなたの探してる人とは・・・」

「え~っと、それじゃあお顔を拝見させていただけませんか?」

レンが店員さんに声をかける。分かりました・・・と店員さんがお盆をどけて顔を見せる。

整った顔立ち、クリッとした瞳、さらっと腰まで伸びた長い髪・・・まさに美少女を詰め込んだ女の子がそこにはいた。

呆気にとられる一同。そこでリヒトが口を開く。

「なあ・・・レン。アイってこんな可愛かったっけ?」

「リヒトもそう思うよな。・・・これは間違いなく別人やで。」

などとリヒトとレンが話し合っていると、店員さんが照れながら口を開く。

「ちょっと!私は前からこんな感じだったでしょ!忘れるなんてひどいじゃない!」

「ふっ、かかったな!」

「なっ・・・しまった!はかったわね!」

「いやいや、今ので引っかかるお前が悪いやろ」

もう・・・と息を吐き、アイは厨房に行って戻ってくる。その手には何やらチラシのようなものを持っている。

「だました罰よ!人気投票は私に入れてねっ。」

人気投票・・・?とリヒトとレンが聞くと、アイが続けて説明する。

「ミュー王国では年越しのお祭りとして、国内の女性が立候補して参加する人気投票があるの。それで人気投票の上位5人はステージで歌とダンスを披露するのよ。」

「なんやアイドルみたいやな。そもそも人気投票なんてそんな集まるもんなんか?」

「そのために人が集まるところでアルバイトしてるの。どうしてもあのステージで歌ってみたくて。」

「そっか・・・じゃあ旅に連れていくのは悪いよな。人気投票、頑張ってね。」

リヒトが最後にそう言うと、ヨシダが歩み寄ってくる。

「リヒト、レン、話がある。」

そう言って、リヒトとレンを席に連れ戻し、小声で話を続ける。

「一旦、旅を中断してここはお祭りの手伝いをしよう。そしたら彼女も旅に同行できるかもしれないし、お祭りの手伝いという名目でここを拠点に魔物出現の調査もできる。」

なるほど・・・とリヒトとレンは考え込むと、やがて、それなら手伝おうかという結論を出した。

「アイ、お祭りの手伝いをさせてもらえないかな?」

「えっ?あ~、私は良いけど・・・会長がどう言うかわからないよ?」


こうして、リヒト達は祭りの手伝いをするために、会長に頼みに行くのであった。


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