第2話・・・センセ王国の王候補
X1518年、センセ王国
「さて、センセ王国についた訳だが・・・」
ぽつり・・・とリヒトがつぶやく。
「城には入れない・・・旧友も見つからない・・・んだよね?」
続けてヨシダもつぶやく。
数十分前・・・
目の前にそびえたつ大きな城。現代のセンセ王国国王が住んでいる城である。そして、城の前には門があり、当然門番もいる。
門番がいるということは当然、簡単には入れない。
「いくら他の国の王子様だったとしても、入れるわけにはいかないんですヨ。」
門番が話す。
「アポはございますカ?」
「アポはないんだけど・・・」
「ならダメでス。アポをとってからお越しくださイ。」
「そ、そんなあ~!お願いします、お願いします!」
「ダメなものはダメでス。正規の手順を踏んでお越しくださイ。」
と、やり取りを続けていたが、結局城に入ることはできなかった。
その門番とのやり取りを陰で覗く1つの人影があった・・・
「う~ん、どうしたもんかなあ・・・」
そんなこんなで数十分ほど悩んでいた。そんな時・・・
ぐぅ~とリヒトのお腹がなった。思わずお腹を押さえ、照れ笑いする。
「は、はは・・・なんか食べに行こっか。」
「あはは・・・うん、そうしよっか。」
ということで、二人は近くの飲食屋へ向かった。
センセ王国の城下町には様々なお店が並ぶ。飲食店はもちろん、果物屋や宝石屋、時計屋などなんでも揃う活気あふれる街並みである。
その中の飲食店の1つにリヒトたちは入っていった。
「いらっしゃいませ!」
店員さんの大きな声が響く。お昼時・・・には少し早く、入っているお客の数もまばらである。
空いてるということもあり2人は4人掛けのテーブル席に座る。
メニューを眺めていると、水が運ばれてくる。
「ご注文はお決まりですか?」
「焼きそばを2つでお願いします。」
「かしこまりました。」
そう言ってメモを取り、厨房の方へ戻っていく。ちょうどその時、新しい客が扉を開けて入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
その客はリヒトとヨシダの2人の席に向けて歩いてきて話しかけた。
「相席良いですか?」
えっ・・・とリヒトがその客を見返す。そこには身長160cm程度、年は16歳程度の少年が立っていた。
リヒトは顔を見て、はっ・・・と気づく。
「もしかして・・・レンか!?」
その人物は、へっへっへっ・・・と笑うと・・・
「せや、その通りや!久しぶりやなあ!」
「やっぱり!久しぶり!」
リヒトは立ち上がり、久しぶりの再会に熱い抱擁を行う。
「え、え~っと。リヒト、この方は?」
ヨシダが声をかける。
「ああ、ごめんごめん。こっちはレン・センセ。俺が初めて世界を旅した時の仲間の一人で、センセ王国の王候補の1人なんだ。」
「なるほど~。初めまして。ヨシダです。」
ヨシダも席を立ち、レンに向かってぺこりと一礼する。
「これはどうも丁寧に。レン・センセです。よろしく。」
レンもヨシダに向かって一礼する。
続けてレンはリヒトに、焼きそばだよな?と確認をとり、焼きそば1つ追加でお願いします。と店員さんに告げる。
そして3人はそれぞれ席についた。
数分後、3人のもとに料理が届き、食べ始めたころ、突然レンが話を切り出す。
「ところで、なんでセンセ王国に来たん?さっきの門番とのやり取り見てたで。」
見てたのか・・・と照れながら、リヒトは続ける。
「実は・・・兄が行方不明になったんだ。だから兄を探すために俺はもう一度旅に出たんだ。」
「は~・・・なんで兄さんはどっか行ったんやろな?」
分からない・・・と首を横に振るリヒト。そしてリヒトは兄からのメッセージの件もレンに伝える。
「・・・お前には負けない・・・か。よう分からんけど、とりあえず兄さんは見つけんとな!」
少し落ち込むリヒトを見て、レンは声をかける。
「ま、何にせよ。とりあえず今は飯食べようや。」
「・・・うん、そうだね。」
兄探しの件もあるため、3人は急いでご飯を平らげたのだった。
「まずは資金を稼がないとね。」
街中を歩きながらヨシダは言う。
「確かに、お金がないと寝るとこも困るしな。」
レンも続けて言う。それに対してリヒトは・・・
「えっ?でもレンは城に帰れば寝るとこあるんじゃない?」
と返すと。
「俺も旅するで、また一緒に!リヒトの兄さん探そうや。」
「れ、レン!ありがとう!」
レンはま、まあ友達やからなと照れながら呟いた。
しばらく歩き続けると、1つの建物が見えてきた。
「あれだね、クエストカウンターは。」
ヨシダは聞く。
「そうそう。あそこに住民たちの魔物、動物の駆除とか珍しい材料の採取とかの依頼が届いているんだよ。クエストにはS、A、B、C、D、Eランクまででのランクがあって、Sランクが難易度が高くてEランクが難易度が低いんだ。」
そうこうしているうちに、クエストカウンターの受付の前に到着し、受付の人があいさつをする。
「いらっしゃいませー。本日は依頼申し込み、依頼受付、達成報告のどちらのご用件でしょうか?」
「依頼受付でお願いします。」
「かしこまりました。ではどのランクのクエストをご所望ですか?」
「EランクかDランクのクエストをお願いします。」
「承知しました。ではこちらをどうぞ。」
そういって2枚の紙を渡される。EランクとDランクのクエストが載っている一覧である。
「それじゃあDランクのこの魔物退治にするか」
リヒト達は近場で暴れているそれほど強くない魔物の討伐依頼を受けることに決めた。
夕暮れ時、都市部から少し離れたある高原にその魔物は居た。少し前にミラ王国に突然現れた竜人の魔物の少し大型の魔物で、武器は斧を持って振り回している。
「見つけた!あの魔物だ!」
3人はそれぞれの武器を持ち構える。リヒトは剣と盾を、ヨシダは鎌を、レンは剣を。敵意を向けられたことに気づいた魔物も斧を構え戦闘態勢に入る。
魔物はじりじりと間合いを詰め、やがて一気に斧を振りかざし接近する。
魔物はリヒトに対して斧を振ってくる。リヒトはそれを寸前まで引きつけ盾で受け流す。
斧を振り切った魔物は再び斧を振るうために、斧を持ちあげようとする動作に入る。その瞬間、魔物の右腕が刈り取られた。そう、武器を使わせないためにヨシダが右腕を封じたのである。
リヒトはそれを見て魔物の懐に飛び込む。1撃目で左腕を切り払い、2撃目で胴全体にななめ切りを入れる。
そして踏込み、足で腹を蹴り飛ばし、距離をとる。武器を捨て、連携をとる相方の名前を叫ぶ。
「レン!!」
「やっとか!」
リヒトはその場で逆立ちの姿勢をとった途端、リヒトの足裏にレンが着地する。リヒトは肘を軽く曲げ、上にいる相方を押し上げる。レンは膝を曲げ、その足場から一気に飛び上がる!
「これが俺とリヒトの!」
「合体技!」
飛び上がったレンは落下の勢いを利用し、魔物に向かって左手で持つ剣を一直線に振り切る!これこそがリヒトとレンの合体技。二人は同時に叫ぶ。
「「コンビネーション、スカイハイ!!」」
それを喰らった魔物は真っ二つに切り裂かれ、跡形もなく消え去った。
「ふぅ・・・何とかなったか。」
リヒトは息をつく。
「前はもっと高く飛んでたと思うんだけどなあ・・・」
レンがぼやくと、リヒトは気まずそうに返す。
「・・・じ、実は今魔法が使えなくて・・・」
「えっ・・・それってまずくない?言われてみれば前と違って、剣と盾も最初から持ったままやしな。」
「剣技に関しては前と同じままだから、心配は要らないよ!」
でも・・・とレンが言いかけたところにヨシダが声をかける。
「さ、さっきの技すごかった!またあんな技見たいなあ~」
そう言うとリヒトもレンも照れ笑いする。
「まだまだいっぱいあるからな!また、他のも見せるよ!」
そんなこんなで3人は話しながらクエストカウンターへ戻り、達成報告に行くのであった。