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ボク、攻略キャラ改め悪役です!  作者: くろくろ
攻略キャラに転生したようだ。
6/20

イケメン(幼児)と強制契約

奴隷、人身売買などの表現が出て来ます。注意。

(トラウマをぶっ壊したり、傷を癒やしたり、邪魔するライバルを蹴散らしたり~ついでに学園の滅亡を防ぎつつ、キャラとイチャイチャエロエロして、ハロウィンの夜までに一人選んでエンディング雪崩れ込むんですね。知ってます)


脳裏に再生された、所謂“オープニングムービー”を鑑賞し終えたコランダムは突っ込んだ。


(初対面の女子に指先ちゅーか ら の、ねっちょりペロペロはやっぱりあれだよね)


「ただし、イケメンに限るっ!!むきぃぃぃっ!!」


でなければ、ただの変態で変質者である。

いや、コランダムにとってはイケメンでも許し難きことだ。


コランダムはすっかり忘れているが、その初対面の女子に色々するただの変態か変質者は現在、自分の親友である。

“親友”という間柄を、もう一度考え直す良い機会、かもしれない。


「…っと、ごめんごめん。キミに対して怒ってるんじゃないよ?」


「怒ってたのか、その反応は……」


黄褐色の目をした少年は、呆れ顔で突っ込むが、コランダムは聞いていない。

その視線は、一人の子どもへと集中している。


(前世の記憶が戻ってから、鏡を叩き割りつつ思ってたけど、やっぱりここって乙女ゲームの世界なんだよね)


執事や侍女たちにとっては良い迷惑だが、鏡を見てー…割ってたうちは、実はまだ『乙女ゲームの攻略キャラに似てるなー』ぐらいだった。

しかし、日々を過ごし紅目の少年である親友、年下の悪友、黄褐色の目をしたライバル少年と仲良くなるうちに何となく“似ている”だけではすまないと気付く。

そしてめでたく本日、“酷似している”に落ち着くことになった。


コランダムの奇声に怯えたのか動きを止めていた子どもが、恐る恐るあの大きい箱から出て来る。

身長と、自身の全体重を支えることが出来ない棒のように細い腕のため、紅目の少年と黄褐色の目をした少年に箱を倒して貰って、それでやっと子どもは這い出て来れた。


「ほら~、早く早く~」


よろめく子どもの腕を掴んだその手は、まるで物を持つかのようにぞんざいである。


悪友に引き摺ってこられたのは、ざんばらに短く切られた黒い髪と、何の感情も見えない黒い目の子どもだった。

“少年”と呼ぶよりも“子ども”と称するしかないくらいに身体が小さく、全体的に不健康な程に細い。

年は悪友と同じでコランダムより二つ下なのに、小柄な友人よりずっと幼く見えた。


そして病院の入院患者が着るものに似た服から出ている身体の部位には、特徴的なツギハギが見えている。

移植されたツギハギの肌は白、褐色、黄褐色だけではなく、金褐色、緑、赤、青、鳥類の羽根、獣の毛、魚類の鱗、トカゲ類の鱗など様々なものが手術糸により一つの肉体に繋ぎ合わされていた。

姿形は人間だが、ツギハギだらけの異形がそこに立ち、コランダムの様子を窺っている。

“窺っている”と称しているが、仕草がそう見えるだけで、実際にはここまでの間に彼が浮かべた感情らしきものは皆無であった。

仕方がない、彼はもともとそういう“設定”なのだから。


彼に種族名があるとしたら、“人造人間”が一番近いのかもしれない。

もしくは、製作者から取って、“フランケンシュタインの怪物”と。


名も与えられず、その姿の醜さから捨て置かれた哀れな彼は、フランケンシュタイン家の地下に溶液に浸けられた状態で発見される。

ただ、発見したのが善人ではなく、彼は異形の“怪物”として国で禁止されているモノを集めたオークションに出品された。

表では取り扱えない非合法の物や、生き物を扱う中で彼は嫌悪の眼差しや罵倒、嘲笑に晒され続けてしまう。

抵抗するでもないのに振るわれる暴力、同じ“商品”にまで疎まれた彼は感情と共に表情も失った。


ヒロインの選択肢次第でオープニング前に“商品”として売り飛ばされる前に救い出され、ヒロインとその幼馴染みと出逢う…と状況が変化し、彼のルートに影響を及ぼすのだが、オープニング後からはヒロインに関わるある“事件”のドサクサで、かつてオークションを潰されたオーナーに再び捕まり売りに出されるという結局は悲惨な目に遭うのだ。


(…何だろう、攻略キャラの中でもトラウマレベルがハンパない悲惨さなんだけど)


その後に“コランダム・キュリアス”に酷い目に遭わされるのだから“設定”とはいえ、彼は全てにおいて哀れなキャラである。

ゲーム製作者に、一言物申したい衝動に駆られるコランダムであった。


「オークションで売ってて、思わず買っちゃったんだ~肉壁にでも、お人形にでも、愛玩用にでも、コー君の好きなように使ってね!」


「あっ、ありがとう……」


(肉壁って)


まるでオモチャを衝動買いしたような、無邪気な子どもみたいに笑っている悪友に、さすがのコランダムも顔を引き攣らせるしかない。

しかも、用途に上げた例が別の意味を含んでいそうで嫌だ。

いっそその扱いは、奴隷の方が生き物扱いなだけマシなのかもしれない。


「おいっ、こいつは奴隷じゃないのかっ!?」


黄褐色の目を更に鋭くし、少年はいきり立つが、怒鳴られた方はどこ吹く風だ。


「奴隷じゃないも~ん。奴隷は国が認めてないからいないもんね、スー君?」


「………」


紅目の少年は、返事の代わりに舌打ちをした。


“奴隷”というものは、この国にはない階級だ。

しかしながら王家の少年が苦々しい顔をしているのが示すように、所詮は表向きのものでしかない。

実際は国の目が届かない辺境の貧乏な田舎などでは未だに、口減らしのために子どもが親に売られ、見目の麗しい若い男女は攫われてやはり売り飛ばされているのが現状だ。

呼び名は買われた先によって様々だが、“奴隷”と呼ばれることはない。

認識は例え、同じものだろうが。


「あっ、ちなみにオークションの場所や主催者は毎回違うから追えないし、ボクも次回に関しては知らないな~」


舌打ちは今度は二つ、イラついた黄褐色の目は銀色になり掛かっているが、やはり年下の少年は気にしなかった。


「変なヤッ君~」


年下の少年は、彼らの様子に不思議そうにすら見える表情を浮かべている。


吸血鬼と人間のハーフであり、国民を護る立場である王族の少年と、自身は純血の人狼でありながら人間寄りの考えを持つ他種族の両親に育てられた黄褐色の目を持つ少年。

二人には年下の少年のように、あっけらかんと当たり前にそう考えることが出来ないでいた。


しかし、彼らの考えは逆に稀有な方である。


自分たち以外は餌だと思っている吸血鬼族、力が全てで脆弱な存在を見下す人狼族、他者を玩具扱いする悪魔族。

人間族の中でも貴族は特に、選民意識が強く身分が低い者を虐げる者もいるのだから、一概にモンスターが悪いのではないが。


(ボクんとこの淫魔族だって、他人はご飯だし。まあ、相手も気持ち良い思いが出来るからウィンウィンな関係じゃないかな?わざわざ、奴隷を買う必要性がないっていうか)


自分の無力さに苛まれている二人には悪いが、コランダムもまたあっけらかんとそんな風に感じていた。


コランダムは自分の手が小さいことを知っていて、伸ばせる長さも理解出来ている。

貴族で親に爵位があれど、平和で平等で理想的な世界を造るにはまったく力が足りないのだ。


(『出る杭は打たれる』ってことわざにもあるくらいだし、どんな因縁が付けられるかわかんないからなぁ)


紅目の少年には悪いが、そういったことをして利益を得るモノが多い限り、完全には奴隷や人身売買を無くすことは出来ないだろう。

でなければ、あの玉座に即く女傑がとっくの昔にやり遂げている。


(…まあ、潰すには大元の他に、使うヒトの意識改革も必要だよね。ボクらみたいに、いるのが・使うのが当たり前だと次世代が考えてたら、また別のところで同じことをしようとするから)


最早、刷り込みのようなものだ。

コランダムだって、前世において生まれたときからあった『自動車があれば…』と、乗馬のたびに臀部を擦りながら何度も思っている。


│生き物であるモノ《奴隷》と、│無機質である物《自動車》を一緒にするのは違うだろうが、考え方としては間違ってはいないはずだ。

便利なものが生活に定着していて、それを見習うべき親が肯定している子どもたちが、権力のみで上から禁止されたとき、どのように動くのか、それをどうやって制止させるのかが、次代を担う紅目の少年の課題だろう。


(まぁ、ボクが考えることじゃないからどうでもいいか!)


長々と考えていながらも、最終的には未来の王へと投げる。

投げられた方は尊大な態度の割に真面目なため、頑張って問題に取り組んでくれるとコランダムは無責任にも信じるだけにした。


それに未来の政策よりも、コランダムには今はしたいことがある。

唐突に現れた、彼のことだ。

現実逃避で、思考を妙な方へ飛している場合ではない。


コランダムは、目の前まで引き摺られて来た子どもを改めてよく見る。

ゲーム本編では攻略キャラなのでスチルは何枚も出て来たが、それは全て今から数年後のことだ。

だから当たり前なことに、今の彼はあどけない顔立ちをしている。


(個人的には、年頃の幼さを残したシャープな顔立ちもいいけど、今ぐらいの年ならもう少しふくふくした輪郭の方が好きだな)


本編通り、ろくな扱いをされていなかったらしい彼の頬は、痛々しいくらいに痩けている。

両足首に着いた枷が、そのまま落ちてしまいそうなくらいに頼りない細さだ。

紅目の少年とは違う意味で血の気が引いた顔は不健康そうで、顔に無数に走る縫い跡がそのせいである種の凄味を増していた。


(ヒロインちゃんは、│コクヨウ《・・・・》君の一つ年上だから…と。あれ、もしかしてヒロインちゃん選択肢ミスった?)


“コクヨウ”君の登場に、たらりっと嫌な汗が流れるのを感じる。


“フランケンシュタインの怪物”は、種族名もなければ個体名もない。

そんな彼は、オープニング前の選択肢によって早い段階でヒロインと出逢う。

彼のルートでは、救出されてまだ間もないツキハギの子どもに、ヒロインが名を与えるというイベントがある。

ただ、イベントが回収されなかった場合はデフォルト名である“コクヨウ”が名となり、癒やしも温もりも知ることなく学園で生徒会メンバーに酷使されることとなるのだ。


余談だが、前世ではノベライズされた方を先に読んでたため、コランダムにとっては彼は“コクヨウ君”である。

『あなたの目、黒曜石みたいにキレイ。だから“コクヨウ”君よ!』というやり取りがノベライズにおいてのヒロインのセリフだ。

名付けが安易だという考えは、コランダムにはない。

ヒロインと幼い彼の穏やかなやり取りに、前世のコランダムはもうメロメロだったのだ。


(ノベライズの挿絵描いた人グッジョブ!…じゃなくて)


微かに覚えているほのぼの挿絵を思い出してにやにやしていたコランダムは、表情を引き締める。


そのほのぼのイベントは確か、もう少し後に起こるはずだった。

コクヨウがオークションに出品される前に救出され、引き取られたのは名付けイベントよりも前だが、今ここにいる限りそのイベントは回収することが出来ないだろう。


(そもそもさっき、オークションで買ったっていってたし、あの素敵イベントはないってことか……)


攻略キャラであり、この時期に関わり合いのないコランダムがヒロインとのイベントを見ることは勿論ないのだが、好きなイベントがないとわかれば落ち込みはする。


しょんぼり項垂れ、落ち込むコランダムは無表情ながらもこちらを窺うコクヨウにへにゃりと力の抜けた笑みを向けた。

項垂れたいのは本来はコクヨウであり、それすら知らない今の彼はコランダムは残念でならない。


コランダムに急に微笑まれたコクヨウは、自分にはじめて向けられた悪意以外の表情に、わかりにくく動揺していた。

表情の代わりに、掴まれたままの腕に動揺が現れていて年下…コクヨウにとっては同じ年の少年は気付いていたが、向かい側にいるコランダムに気付かれることはなかった。


「アット、この子の名前は何?」


“アット”と愛称で呼ばれた年下の少年は、にっこり意味ありげな様子で笑う。


「なんだと思う~?」


質問に質問で返されたコランダムは、少し困惑した。


デフォルト名は勿論、知っている。

ヒロインとのイベントが発生しない今、彼はそのまま“コクヨウ”と名乗るはずだ。

しかし当たり前だが、初対面のコランダムが知っているはずはない。

ピンポイントでデフォルト名を口にするわけにはいかず、コランダムは本当に困っていた。


…後々、冷静になったコランダムは、デフォルト名から程遠い名前でもいえばよかったのだと思い付くのだが、ある意味混乱したままでよかったのかもしれない。


「どーしたの?早くはやく~!!」


悪友に言葉で急かされ、コクヨウからは視線で急かされた気がしたコランダムは普段のマイペースさが嘘のように慌てて咄嗟に思い浮かんだ言葉を出していた。


「オブシディアン!」


そのまま“コクヨウ”といえなかったコランダムは、それでも結局は黒曜石を英語読みした“オブシディアン”と口にした。

コランダムには黒曜以外、彼に似合うと思えなかったのだ。


年下の少年は、コランダムのいった言葉を舌の上で転がすように数回呟き、一つ頷いて満面の笑みを浮かべた。


「オブシディアン・フランケンシュタイン!」


明るい碧色の大きな目が、光輝きながらコランダムを真っ直ぐに見る。


「オブシディアン・フランケンシュタイン!」


その言葉しか知らないかの如く、同じように少年は繰り返した。


(はいはい、知ってますよ~名字が“フランケンシュタイン”だってのは)


もう一度、年下の少年が繰り返したとき、コランダムは根負けして同じように繰り返した。


「オブシディアン・フランケンシュタイン!」

「オブシディアン・フランケンシュタイン」


指を指されたコランダムは首を傾げると、暫くして納得したように頷いて自らの名を告げた。


「コランダム・キュリアス」


自分の胸に手を当て、黒髪黒目の子どもに視線を向けてゆっくりと名乗り上げる。

まるで、言葉の通じないモノ同士の自己紹介のようなやり取りである。

勿論、言語は同じなためコクヨウはすぐに理解して繰り返した。


「オブシディアン・フランケンシュタイン」


自身の仕草を真似て、手を当てて繰り返す姿にコランダムは疑問を覚える。


(…ん?コクヨウ君はコクヨウ・フランケンシュタインじゃないの?)


疑問に思っているのであれば、解消するためにこのときに止めればよかったのだ。

しかし、たどたどしく繰り返す姿が可愛らしく、ほんわかしていたコランダムは止めることをしなかった。


おかげで、イライラし過ぎてろくにやり取りに気を配っていなかった紅目の少年が止めに入ったとき、契約は為されてしまっていたのだ。


「コランダム・キュリアス様…マスター」


黒髪の子どもの、黒い目がコランダムのオッドアイをヒタリと見定める。

子どもの持つ黒が、様々な色に輝いて見えたのは気のせいだろうか。


(瞳の色が変わるのは、魔力が使用されているから…だけど、何に!?)


「名乗るな!止めろっ!」


焼け付くような痛みが両眼を襲い、コランダムは意味がないとわかっていながらも反射的に両手で痛む箇所を塞ぐ。

この痛みは、強制的に魔力が引き出されているから起こるものであった。


ガシャン


何か、重い金属が落ちる音が聞こえる。


(おそい、遅いよ……)


警告は既に遅かった。


まだ痛む両眼から手を外し、一度だけきつく目を瞑ったコランダムはゆっくりと瞼を開ける。

未だ魔力の放出により紅桃色に染まったままのコランダムの両眼が、痛みからか眉間にシワを寄せている子どもの七色に変わる目を見詰め返した。


(そうだった…コクヨウ君のルートにこんなシーンがあったよ)


今更思い出して遠い目をするコランダム、警告の遅い紅目の少年、唖然とする黄褐色の目を持つ少年、やはり無表情の黒髪の子ども。

四人がそれぞれの反応を示す中で、安定の笑顔を見せている年下の少年は明るい碧色だった目を朱色に染め上げながら何もなかった空間に自身の魔力を練り上げて契約書を作り出す。

そこにコランダムら二人分の魔力が合わさり、契約文が記される。


本編にもノベライズされた部分にも、“コクヨウ”の契約している場面が回想シーンとして確かにあった。

しかし、そこには楽しげに笑う悪魔の姿は描かれてはいなかったはずだ。


(でも、現実では悪魔を介してコクヨウ君と契約を結んじゃってるよ)


「…貴様、名を付けて契約を結ぶなど、何を馬鹿なことをしているっ!!」

「いやー…そんなつもりじゃあ」


紅目の少年は怒りも顕わに詰め寄ってくるが、コランダムにも契約を結ぶなど大それたことを考えたわけではない。

大体、立会人が必要な重大な契約を結ぶ必要性がないのだ。


(モンスターは力が強いから、逃げ出さないように魔力を使っての契約を強制的に結ばせるって描写だったよね。確かコクヨウ君は、売りに出された後にオークションのオーナーと魔術師、たぶん買い手らしき人影の前でやってたっけ)


この世界においての魔術師という、ファンタジーな存在は今は置いておいて。


“名付ける”というのは、“名を奪う”行為だ。

黒髪黒目の子どもは名のない存在であったが、オークションに出品される存在が全てそうだとは限らない。


モンスターであれば、それを奪うことで本人が持つ力を殺ぐことが出来る程、名前というのは大切なものである。

勿論、侮辱の意味で所有物の如く新たに名付ける…と、いうのもあるが。


契約と、契約に関連付いて名付けについてはゲーム知識と貴族としての一般教養としてコランダムは知っていた。

知ってはいたが、まさか自分が行うとは思っていなかったと、主張したいところだ。


「だって、普通に名乗っただけだし。│してや、名前当てがそのまんま契約の名付けになるなんて思いもしなかった!」

「あからさまに、不自然だっただろ!」


暫く思い出すため、コランダムは黙る。

紅目の少年がいうことも、尤もだった。


認めたくなかったコランダムは、濡れた犬のように頭をぶるんぶるんと振る。


「いやいやいや。名付けって、儀式的なものじゃないの!?」


脳裏に魔方陣やら、おどろおどろしい呪文やらを唱える怪しい魔術師を想像した。

しかしコランダムにとっては残念なことに、何の予備造作もなく、ファンタジー要素満載なはずの契約は済まされてしまったようだ。

悪魔が自身の魔力によって契約書を作り上げ、そこに自分と黒髪の子どもの魔力でもって契約文が記された部分は、地味なせいかコランダムはまったく“ファンタジー”の括りに入らないらしい。


そんな親友の気持ちに気付いている紅目の少年は、荒らげていた声を落ち着かせ、冷静になるよう努めて話し出した。


「…相手をよく見ろ。そこらの魔術師など、比べようもない程の魔力を持つ悪魔が立会いをしたんだ。お遊び程度を、正式な契約にするなど動作もないはずだ」


そう告げた途端、コランダムはポカンと大口を開けたまま固まる。

紅目の少年も、コランダムがマヌケ面を晒したくなる気持ちも良く理解出来るのだ。

整っている分、残念な印象になった親友に対し、頭を叩けば口を閉じるだろうかと思案する紅目の少年に気付かず、コランダムはカッと今度は目を見開いて、正気とは程遠い顔で叫んだ。


「なっ!?そんな都合良くっ!?」


グルンと大袈裟な動作と勢いで、年下の少年へと振り返ったコランダムの目に、頭を掻きながら照れ笑いを浮かべる姿が映った。


「えへへ~」


「「誉めていない」」


親友二人の突っ込みが、シンクロした珍しい瞬間だった。




↓以下、ヤマナシ、オチナシなバカ話↓


【台無しです、コランダム君】


年下悪魔「だからね~名前を勝手に付けて、魔力で拘束すればご主人様の命令に逆らえなくなるの~」

コランダム「ふむふむ」

年下悪魔「それで~攻撃からご主人様を護る肉壁や、イライラしたときに八つ当たりする│人形サンドバッグや、あとあと欲求不満になったときに×××にしたり~」

コランダム「詳しくいわなくていいからあぁぁぁっ!!」

年下悪魔「ふふっ、コー君面白いね!」

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