11話
「……」
懐かしいとさえ思える夢を見た。現実の夢だ。最近よく見る。
違う。あいつのせいだ。あの人のせいだ。
夢を見ているんじゃない。過去を振り返ってるんだ。
何もできなかった過去を。何もかもなくしてしまった過去を。
「よっ。おはよう!」
「死ね。ばか兄」
「朝っぱらからひでぇ挨拶だな…」
朝から妹の部屋に、よりにもよってベッドの中に入り込んで悪びれもなく挨拶するような兄は消えてしまえばいい。
心の底から吐き出した言葉をそれでも軽々と流してくる。
「いい夢見れたか?めっちゃ眉間にしわ寄ってんぞ?」
ぐりぐりと私の眉間を撫でる兄にさらに深いしわを眉間に刻む。
「誰かさんに腕折られたからね」
「おいおい。俺の妹にそんなひでぇことしたやつはどこのどいつだ!?俺がとっちめてやる」
「はぁ……」
再び心の底から吐き出して布団から抜け出す。
「待てって。悪かった。もうしないからよ…」
「別に……」
そんなんじゃない。とは絶対に言えない。いつも大口な振る舞いのくせにたまにしおらしくなるのがずるい。
心の底からうんざりしてはいるけど、本当に嫌なわけではない。それが嫌だから余計に嫌になってくる。
「もういい……」
「じゃあ、そろそろ行こうぜ!」
「行くってどこに?」
「おいおいまだ寝ぼけてるのか?お兄ちゃんの熱いベーゼで目を覚まさせてやろうか?」
「…」
「冗談!冗談!そんなマジでキレるなよ!」
額に青筋を浮かべた私にガウスは即座に訂正を入れる。
「でも時間もそろそろヤベェからな。早いとこ行こうぜ、シズネ!」
「だから、どこに?」
「クエストだよ!今日から夏休みだろ?」




