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東の空に輝くジャンバラヤ

朝目覚めると、男は自分の体に異変が起きている事に気がついた。


自分の体がジャンバラヤになっているのだ。


料理が冷めないように暖められたその鉄板は、上に載せたライスを支えながらジュージューと音を立てている。鉄板の下には使い古された木板があり、ところどころ焦げ付きながらも、美しく深い茶色に輝いてる。おそらくその輝きのほとんどは、料理から出る油だろうが、それが使われるうちに染み込んで、なんともいえない味わいをかもし出している。


トマトとタバスコで味付けされたそのライスは、ねばつくこと無く仕上がっている。その上にのせられた骨付きの鶏腿肉は、飴色になるまで遠火であぶられている。滲み出した肉汁とソースが作り出した照りが食欲を刺激してたまらない。そして、添えられたパセリがみずみずしく輝いて、赤と緑の美しい色彩を奏でている。


完璧なジャンバラヤだ。男はそう思ったが自信がなかった。男はジャンバラヤ知っていはいたが、食べた事が無かったのだ。


男は自分がいかに完璧なジャンバラヤなのか知るために、となりに寝ていた妻を起こすことにした。きっと妻なら自分がいかに完璧かを語ってくれるに違いない。


男が妻をゆすると、妻は寝癖でグシャグシャになった髪を掻きながら、寝返りをうって男を見た。そして、めんどくさそうに「あらジャンバラヤになったのね、完璧じゃない」というと、背中を向けてまた寝てしまった。


男は、妻のこのそっけない態度に心を挫かれた。

自分がこれほどまでに完璧なジャンバラヤになったという事について、少しばかりの誇りを抱き始めていた矢先だった。しかし、その気持ちとはうらはらに、妻はこれにまったく興味を示してくれなかった。

その後どれだけ体をゆすろうとも、妻はうーんと唸るばかりで起きてはくれない。


そして、男の心は完全に折れた。


絶叫とも嗚咽ともつかぬ大声を残し、男はベッドを飛び出した。寝室のドアを蹴破り、マンションの扉をぶち壊し、半狂乱になったジャンバラヤが、早朝の住宅街を駈けてゆく。


冬の冷たい空気が、ジャンバラヤから沸き立つ湯気を誇張し、遅く登った朝日がそれをきらびやかに演出するのだ。

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