涙の雫
初めての短編です!!
涙の雫 Tear Drop
雨の日は私の好きな日…
だって、私の心の汚れを洗い流してくれる
私の瞳から止まらずに溢れてくるものと一緒に私を清めてくれるから…
今日も私は泣いた
どしゃ降りの中…私はフラフラと薄暗い帰路を歩いた
今日あった事はこの雨と一緒に流れてくれる
忘れよう
忘れなきゃ
早く…早く忘れなきゃ…
****
今日は金曜日
今日が終われば、大好きな友達と2泊三日の旅行が待っている!!
よしっ!この企画書ももうちょっと、気合い入れなきゃね
私はお昼休みに買ってきたコーヒーを一口飲みパソコンとにらめっこを始めた
私の手はキーボードをリズミカルに叩く
「ストーンさん、ちょっといいですか?」
私は顔をあげなくても声の主が隣の後輩だと分かったので顔を資料から上げずに答えた
「なに?」
「内線でボスが会議室に来てくれって言ってますけど」
「わかりました、何番ですか?」
「3番です」
「ありがとう」
ボス?なにかしら…
私はめったに使わない電話の内線の3番にでた
「ボス、変わりました」
「あぁ。ストーン君、悪いけど第2会議室にコーヒーを運んできてくれないかね」
「第2会議室ですか?」
第2会議室といえば私が今作っている企画書の取引先の社長が来ていたはず…
お茶を運ぶなら私じゃなく事務課の子達に頼めばいいのに
なんで私なのかしら
資料に不備があったのかな?
もし、そうだったらまず謝って新しく書きなおさなきゃいけないな…
「先方が君を御指名なんだ」
「わかりました。すぐ参ります」
「あぁ。よろしくね」
私は資料の不備をどうやって改善しようかという事ばかり考えていた
給湯室でコーヒーを2つ入れ会議室に向かった
部屋の前で止まり、ノックをして入った
「失礼します。コーヒーをお持ちいたしました」
「あぁ。悪いね、御苦労さま」
会議室にはボスと取引先の社長であろう中年のおじさんが座っていた
私はコーヒーを2人の前に置くためにデスクに近づいた
まずボスに、次に取引先の社長にコーヒーのカップを置いた
私が先方のデスクにコーヒーを置いた時彼の手が私のお尻に廻され撫で始めた。
私は目を大きく見開き泣きたくなった
相手は大事な取り引き先…
ココで私が叫べば、この取引は失敗し私はクビになるだろう…
私は耐えることにした
「君はこの資料を作った子だね?」
タヌキおやじは私のお尻を撫で廻しながら、ニタニタと笑いながら聞いてきた
私は引き攣った笑顔で「はい、そうです」と答えた
私は偉い!
大きな声もあげずにこんな事をされていても笑顔で返せた!!
私は必死にボスにSOSの視線を投げかるが気付いてくれない
「この資料なかなか良く出来ているよ。君、名前は?」
「マリア・ストーンです。企画書、お褒めにあつかり光栄です」
タヌキおやじは今もなお、私のお尻を撫で廻しついには太ももまで触って来た
もう無理!!そう思った時
ドアがノックされ、私の直轄のボスが入って来た
「失礼します。バートン社長、お迎えの車がお見えになりました」
「そうか、わかった」
たぬきおやじはいきなりの彼の登場ですぐさま私から手を離した
助かったと思った
いつも私の事を雑用のように扱い、ドS・鬼蓄で大嫌いな上司を今日は命の恩人だと思えた
私は「失礼します」と言って会議室をでてすぐトイレへ向かった
洗面所の蛇口を捻り、嘔吐した
先ほどの気持ち悪さがどんどん込み上げ自然と涙が溢れる
涙を隠すため口を濯ぎながら顔を洗った
2,30分はたっただろうか…
やっと、落ち着いた私は自分の席に戻った
「ストーン君。企画書はできたか?」
「いえ、まだです…。」
「今日はラストまで残っているように」
えー…。
旅行の準備しなきゃいけないから早う帰りたかったのに…
「大丈夫?手伝おうか?」
新人の反対側の隣に座る唯一の私と同期の人
ライアンは厳しい上司とは裏腹に優しく、私の事をいつも助けてくれる
「僕、今日のしごともう終わったから手伝えるよ。もし必要だったら言って」
私はやっとの事で、企画書を書きあげた
時計を見るともう23時を回っていた
「終わったか?」
え?なんで…
帰りの支度をしていた私の背後からは私の嫌いな上司、ウィリアムが立っていた
「お疲れ様です。ジョンソンさんも残業だったんですか?」
「は?俺はお前にラストまで残っていろと言ったはずだが?」
「えぇ。おっしゃいました。でも、それは私がこの企画書を書くのにそれまでかかると思ったからですよね?」
「え?あ、あぁ…。」
ウィリアムはうんざりした
彼はマリアと一緒に帰るため、またそれを誰にも見られたくないために最後まで残し、自分も彼女を待っていたというのに…
当の本人はそれに全然気付かなかったという、それに加え企画書がこの時間まで掛かったというではないか…
「あ、私。この資料もチェックしなきゃいけないんだった…」
「まだあるのか?」
「はい。私、戸締りしますんで、さき帰っていいですよ?」
「なんで、そうなるんだ…」彼は小さなため息と共に呟いた
「なにか言いました?」
「おい。帰るぞ!」
「え?私まだ帰れません!」
「いや。君は私と一緒に帰るんだ!いいから来い!」
「ちょっ!!」
ウィリアムはマリアの腕を掴み強引に地下駐車場まで連れて行った
車のドアを開きマリアを助手席に押しやり車を発進させた
車が走りはじめて10分くらいたっただろうか…
「あの…どこへ行くんですか?」
「腹は減ったか?」
「はい、空いてますけど…」
「今日、俺に助けられたんだから、食事くらい付き合えよ」
・・・。
やっぱり…。彼は私がセクハラされている事に気づきわざわざ助けてくれたのだ
ボスでさえ気づなかったのに…
なんで気付いたの?
彼は会議室に居なかったはず…
彼はあのタヌキおやじを呼びにきただけ…
「なんで…」
「ん?」
「なんで助けてくれたんですか?…ボスでさえ気付いてくれなかったのに…」
「あぁ。あの社長は女好きでセクハラをすることで有名だからな。お前が呼ばれた時、なにか嫌な予感がしたんだ。」
「へぇー…。そうだったんですか…」
「あぁ。急いで行ってみたら案の定されてたし…。」
「でも、ボスもそれを知っていたのならなんで助けてくれなかったのでしょうか…」
「あのたぬきおやじに文句ひとつでも言ってこの会社に喧嘩売られたら、ココは即刻つぶれるからな。それを恐れたんだろう」
「じゃあ、なぜ助けて下さったんですか?」
「は?お前ばかだな…なんで助けたのかもわからないのか」
「わかりません。ちゃんと言ってくれないと」
「好きな女を守りたいと思うのは世界中の男が思っている事だと思うが」
え?好きな女をまもりたい?
「ジョンソンさんにもそう思う人がいるんですか?」
「あぁ。…。なぜ気付かない?」
「へ?」
何に気付かない・・・?
私…なにか気付いてあげなきゃいけないのかしら…
彼は結婚していたかしら…
ハンドルを握る置きな手を見たが指輪は着いていなかった
「誰なんですか?」
「お前…それが自分なんじゃないかとか考えないのか?」
「へ?私…ですか?!ジョンソンさん、私のこと好きなんですか?!」
ジョンソンさんは黙ってしまった
ちょっと、待って…
今まで散々わたしのこと雑用の用にこき使ってきておいて、私の事が好きだっていうの?
彼が?
あの、鬼蓄でドSなジョンソンさんが?
私を…好き?!
もんもんと考えているうちに車はどこかの駐車場に止まった
「降りろ」
「どこに行くんですか?」
「着いてくれば分かる。それと、二人きりの時は下の名前でびなさい」
「え?下の名前?…」
「まさか知らないなんてことないよな?」
「ウィリアムさん…ですよね?」
「あぁ。名字で呼んだら毎日残業だからな」
えぇ~!!
毎日残業なんて悲惨な事にはなりたくないので
私は黙ったままジョンじゃなかった、ウィリアムさんについていった
着いたのはお洒落で高級そうなレストランだった
中に入るとボーイさんが出迎えてくれた
「ジョンソンさんお待ちしていました。いつもの席をお取りしております」
いつもの席?
毎回こんなところで食事をしているのかしら…
私とウィリアムさんは個室に入った
予約しないと入れないような個室だよね…
ってことは予約してくれていたの?
誰のために?
「どうした?」
「あっ、なんでもありません」
「ワインは飲めるな?」
「はい…赤なら」
「わかった。おい、ロマネ・コンティを持ってきてくれ。」
「かしこまりました。ジョンソンさんはいつもので宜しいですか?」
「あぁ。もう料理も待ってきてくれ」
「はい。だたいま」
ボーイさんはワインをもってすぐ戻って来た
ウィリアムさんにも私にもワインをついでまた去って行った
「あの…こんな高級そうなレストラン…毎回来ているんですか?」
「あぁ。接待で良く使うな。でも、プライベートできたのは初めてだ」
「へぇー…。このワイン…とってもおいしいです」
「あぁ。フランス産の最高級ワインだからな」
「えぇ?!いいんですか?」
「あぁ。特別だ」
「特別…さっきからジョンソンさんは私だけ特別みたいな感じになっているんですが…さっきの告白?といい、本気なんですか?」
「は?俺がここまでしてなんで自分が特別扱いされていると気付かないんだ」
「だって、普段私の事とても怒ったり、厳しいじゃないですか!」
「それはお前が余計な男としゃべったりしていて仕事が進んでないからだろう?」
「それって…やきもちですか?」
「あぁ。わるいか?」
「え……。」
「お前がフラフラしてるからだ。俺をあまり焼かせるな」
「じゃあ…私のこと好きって本当なんですか?」
「あのなー…。」
ウィリアムはため息を深く着いた
「マリア…俺の恋人になれ。俺から離れるな」
「……。」
まりあは息を呑んだ
まさか、本当にあの怖い上司が私の事が好きだったなんて…。
でも、マリアは彼のちょっとした優しさや周りの気遣いなどに関心していたし、上司として尊敬していた
マリアはこの人と付き合ってみてもいいかもっと思い始めていた
食事が運ばれてきた
フレンチ…初めて食べるな…
最初はアヴァン・アミューズ
次はアントレ(前菜)、ポタージュ、メイン料理と続き
最後はデセール(デザート)で終わった
私は人生で初めてのフレンチのフルコースを食べた
「どうだ。口に合ったか?」
「はい、とってもおいしかったです」
「そうか。」
「私、人生で初めてフレンチのフルコース食べました」
ウィリアムはマリアがほほ笑んで初めてと言った事にとてもうれしく感じた
好きな女の初めてをもらうのはこんなに嬉しいものなのか…
ウィリアムはこの日を待ち侘びてきた
マリアの事がずっと好きだった
マリアが他の男性社員と親しくするのを見ては嫉妬し、マリアに厳しくする事によって自分の気持ちを隠していた
でも、今日のセクハラ事件の一件でマリアを助け、自分の物にしたい、誰にも触らせたくない、彼女を守りたいと思った
ウィリアムはレストランに無理を言って、急遽接待で使っている部屋を取ってもらい、計画を練ったのだった
マリアはトイレに行くと言って席を立ってしまった
ウィリアムは会計を済ませた
マリアは席に戻ってウィリアムがいない事に不安を覚えた
「あれ?…ジョンソンさん…?」
「名前で呼ぶんじゃなかったのか?」
「あっ!!どこ行ってたんですか?」
「それより呼び方が間違ってたぞ、来週の月曜日は残業決定だな」
「そんなぁー!!だって今のは…」
「今のは?」
「そ、その…怖かったんです…」
「なにが怖かったんだ?」
「戻ってきたらいなかったから…」
「あぁ。置いて行かれたかと思って不安になったのか」
「はい…」
「それはすまん。会計を済ませていただけだ」
「あ、いくらでした?私も半分だします!」
「おい。恋人にディナーを半額払わせる男がどこにいるんだ」
「でも…」
「いいから、素直に奢られておけ」
「はい…ごちそうさまでした」
マリアたちは駐車場へと移動した
車に乗り込みシートベルトを締めたマリアはどこか寂しい気持ちになった
まだ彼と一緒にいたいと思った
これって…私もウィリアムさんの事好きって事なのかしら
「なぁ。さっきの返事を聞かせてくれよ」
「さっきのって…告白のですか?」
「そうだ。俺はいつまでも待っていられるような器の大きい男じゃないんでね」
「あの…私も…ウィリアムさんの事…好き…かもしれません…」
「かも?」
「はい…」
「かも…ね。なぁ、もう1つ寄りたいところがある」
「はい。かまいません」
「ココは君の答え次第ではいかなくてもよかったんだがな」
「なんで私の答え次第なんですか?」
「市役所は24時間営業だからな」
「市役所?!ウィリアムさん、何の用があるんですか?」
「これから、ライセンスを取りに行くんだよ」
「免許証の更新ですか?」
「いや。marriagelicenseだ」
「へぇー、って誰とですか?」
「君に決まってるじゃないか。今一緒にいるのは君なんだから」
「え?ちょっとまってください!私結婚するなんて早いです!」
「君がかもなどと曖昧な返事をするからだぞ」
「分かりました!かもじゃありません!好きです!!」
「きゃっ!」
ウィリアムは車を急停車した
「それは、本心なのか?俺はこんなこと無理矢理いわせたくない」
「私はいわされてません!」
マリアは自分の気持ちを疑っているウィリアムに少し腹が立った
マリアは運転席でハンドルを握ったまま前を向いているウィリアムにキスをした
ウィリアムは突然の事に目を見開き固まった
「ちゃんと自分の気持ちを言ったまでです」
マリアは自分が何をしたのか後から思い出し赤面した
「マリア…ちゃんと言葉で言ってくれ」
「いやです…そういうのはウィリアムさんから言ってください」
「愛しているよ。マリア」
「ウィリアムさん。私も愛しています」
駄文失礼しました。゜(゜´Д`゜)゜。
暇つぶしくらいにはなったでしょうか・・・?
楽しんでいただけたのなら幸いです
続編は年齢制限がある方で書きたいと思っています良ければそちらもよろしくお願いします!