7 バグ登場
読みやすいようにと行間をあけてみているのですが、どうでしょうか?
行間があきすぎていて逆に読みづらいという方がいましたら教えてもらえると助かります。後、さしつかえなければ話の内容や文章についても感想、ご指摘などがございましたら書いて頂けると嬉しいです。
※バグは最初もっとかっこいいキャラクターにしようと思っていたのですが、書いている内にただの変態になってしましました。苦手な方はご注意ください。
「エレベーターって、たしか全部止まってたはずだよね?」
「ああ、動くはずがない」
緊迫した二人の会話。どういう訳だか、昼の十二時なのに外は真っ暗で、動くはずのないエレベーターがメアちゃんを乗せて上まで行ってしまったらしい。
「しかもそのエレベーター、何だかおかしかったのよ。まるで誰かが入って来るのを待ってるみたいにずっとドアが開きっぱなしだったの。メアちゃんが入った途端にドアが閉まって動き出したのよっ!」
赤石さんがそう言い終わる前に、オッサンとカイトは部屋を出ていた。
ちょっと迷った後、オレ達も二人を追いかける。
「うっそ……!」
ホールへ出ると、オレは思わすそう口に出した。自動ドアの向こうはすっかり日が暮れ、真っ暗闇になっている。ここへ来てまだ三十分程しか経ってないのにどうして……。
「おいおい……どう見てもあれは誘ってるよね」
オッサンの視線の先にはエレベーターが一台、口を開けて待っていた。ボタンはずっと上の矢印がつきっぱなしで、誰かが乗るまで動こうという気はないようだ。他のエレベーターは全て止まっているだけに不気味さが増す。
「どうするーぅ?乗っちゃうー?」
ネコノタマが呑気な声で言い、グネグネと体を左右に揺らした。
「見ろ、エレベーターの中に何か落ちてるぞ」
カイトが何かに気づき、エレベーターの中を指さした。ここからエレベーターまで結構離れてるのによく見えるな、この人。
「え?どこ?見えないよ」
オッサンが目を細めて首を傾げるが、カイトは何も答えず一人でエレベーターに近づいて行く。
「ちょっとカイト君っ!勝手に入っちゃ駄目だって!」
オッサンが言うのも聞かずにカイトはエレベーターに入り何かを拾うと、すぐに戻って来た。手には白い封筒を持っている。
封筒を開けると、中には同じく真っ白なカードが出て来た。カードには、
『柏木燈真を連れて、展望台まで来てください。そこで全てを話しましょう』
とだけ、印刷されていた。
カードを覗きこんだオッサン、赤石さん、オレは息を飲んでお互いを見る。
「ねーぇ、何て書いてあったのーぉ?」
唯一背が届かなくて見れなかったネコノタマが尋ね、
「燈真君を連れて展望台まで来いってさ。そうすれば全部話すだってよ」
オッサンが溜息混じりにそう答えた。
「だったら行けばいーじゃん。簡単でしょーぉ?」
ほんとに簡単に言ってくれるな、コイツは。でもネコノタマの言う通り、エレベーターに乗るしかないっていうのも事実だと思う。このままメアちゃんを置いて行くことも出来ないし。
「罠かもしれないけど、行くしかないでしょ」
オッサンも考えた後そう言い、カイトも頷いた。
「奴の目的である柏木燈真が一緒なら、エレベーターに閉じ込められて全員皆殺しの可能性は低いだろう」
だからそういうこと言うのやめろって。皆余計に入りたくなくなるじゃないか。ほら、皆怖がって入るの躊躇し出したよ……ってことは無く、なぜか続々とエレベーターに乗り込んで行く。何でそんなに勇敢なんだよ、それともオレがヘタレなだけなのか?
最後に残ったオレ一人が嫌だとも言いだせず、渋々中へ入る。するとエレベーターは待ってましたとばかりにドアを閉め、動き出す。行き先は勿論最上階だ。
エレベーターの中では皆無言で、それが余計に怖い。急にエレベーターが止まったらどうしようとか、それでもってワイヤーが切れて真っ逆さまとか、妄想が妄想を呼んで、オレは一人で勝手にパニックに陥っていた。
実際には数分もかかってないけど、オレにとっては永遠にも感じられた地獄の末、ようやくエレベーターは展望台へとたどり着いた。
エレベーターを出ると、そこは宝石箱をひっくり返したような夜景が見えるはずだった。だけど今は窓ガラスの向こうは真っ暗で、自分の姿が鏡のようにはっきりと映っている。
そっか。人がいなければ明かりもつかないんだな。当たり前のことをぼんやりと考えていると、
「おーい、お譲ちゃん!一人で先に行っちゃあ駄目でしょうが!」
オッサンがメアちゃんを見つけたようで、声が聞こえて来た。そちらに視線を向けると、メアちゃんがぽつんと背を向けて立っていた。しかしオッサンの声に微動だにもせず、ただ俯いている。一体どうしたんだろうか……。
内心首を傾げて見ていると、
「ファイブッ!そいつに近づくなっ!」
突然カイトがそう叫んだ。メアちゃんの肩に触れようとしていたオッサンの手がびくりと止まる。そこで初めてメアちゃんがこちらを振り向いた。
いや、それはメアちゃんではなかった。
振り向いたのは単純な顔の描かれた風船だった。誰もが唖然としている中、風船は見る見る内に膨らんでいき、最後には派手な音と共に破裂した。
「くそっ」
オッサンがすぐにその場から離れる。破裂した風船からはドライアイスみたいな白い煙がモクモクと出てきた。
その煙を見たオレはてっきり毒ガスが撒かれたんじゃないかと思い、できるだけ息を止めてあたふたと逃げ道を探す。しかし煙はすぐに薄くなり、中から人影がうっすらと姿を現した。
完全に煙が消えた後、そこに立っていたのは一人の男だった。
第一印象は白。真っ白な紳士、もしくはマジシャン。と言うのも燕尾服にシルクハットという格好で、瞳は仮面で隠されている。それらは全て白で統一されていて、背中まで伸びた長い髪だけが銀色に光っていた。
「まずは一人と思ったのですが、そう簡単にはいきませんでしたね」
その人は軽く両腕を広げ、柔らかな口調でそう言った。
「アンタが……バグかい?」
オッサンが笑いながら聞く。でもその表情は笑顔とは程遠く、緊迫感と皮肉が入り混じっていた。一方、バグと呼ばれた男は緊迫感の欠片も無く、口元に微笑を浮かべてはい、と頷くと、
「はじめまして皆さん、ワタシはバグ。短い間ですがどうぞよろしくお願いします」
片手を胸に当て、優雅にお辞儀をした。
この人がバグなんだ……。もっと凶悪犯みたいな人相を想像していたオレは呆気にとられていた。だってどう見てもおとぎ話に出てくるような品のいい紳士で、悪いことを企むような人には見えない。こんな人がどうやって街の住人を一気に消し去ることが出来たんだろう。
「ああ・・・あなたがトウマですね?」
何だか不思議な気持ちで見ていると、バグがオレを見つけてそう言った。その声はさっきよりもトーンが上がっていて嬉しそうだ。しかし相手は男で、しかも今回の事件を起こした犯人なのだからオレとしては全然喜ばしくない。
「ようやく会えましたね。長い間、ワタシはあなたをずっと探し続けていたのですよ」
会ったことも無い人に突然こんなことを言われるのは結構怖いもので、こいつには聞きたいことが山程あったはずなのに緊張して何も言葉が出てこない。自然と体が強張り、思わず二三歩後ずさりしてしまった。
「はいはい、感動的なのか一方的なのかよく分からん再会は後にして。約束通り、アンタの目的とその理由を話してくれないかい?」
オッサンが間に入ってくれたおかげで、オレはバクの視線から解放された。まるで蛇に睨まれた蛙で、オレはバグに対して何も言うことができなかった。最初は虫も殺さなそうな紳士だと思ったけど、話しかけられると異様なほど強い気迫を感じる。何ていうか、狙った獲物は絶対に逃さない執着心。
「ああ、そうでしたね」
バグはそんなこともあったな、とでも言いたげな口調で返すと、
「ワタシの目的は我が主、トウマをあるべき場所に連れ戻し、この街を完全消去することです」
よく通る声で言った。




