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悪役令嬢、独壇場

作者: 押野桜
掲載日:2026/11/08

「レオナ・コーヴォ、お前は王太子妃にふさわしくない!」


貴族学園の卒業パーティーの会場は和やかな雰囲気だったのに……楽団の華やかな音楽がフツリと止んだ。

私の目の前にはニヤニヤと笑みを浮かべる王太子アラン・バージェタがおり、彼の隣には聖女ミリアムが腰を抱かれて立っている。


「王太子妃には、この愛らしく無垢なミリアムを選ぼうと思う。そして、行き場を失ったであろうお前を、寛大な私は側室として迎え入れてやろう!」


ざわ…ざわ…と、戸惑いが広まっていく。

確かに何言ってるんでしょうね、この人、と私も思ったわ。


「婚約破棄、承りましてございます、殿下」


私の声に温度がつけられるとすれば−100℃だというのに、それに気づかずアランの顔が得意そうに輝く。のに対して言葉を続ける。


「ただ、側室のお話はお断り申し上げます」


ふわり、と金の縦ロールを揺らして私はダンスをするかのように一回転した。


「我慢に我慢を重ねて10年……結論が出ました」


笑顔でくるり、ともう一回転。

会場中を魅了して味方につけるように。


「クズは捨ててもよろしいんですのね」


そうしてもう一度アランに目線をあわせ、微笑む。

何か言おうとアランが口を開くより早く、横にいたミリアムが叫んだ。


「クズ、いらないです! っていうかこの手をどけて下さい!」


気持ち悪い! と、ミリアムがアランの手を腰から引っぺがしてこちらに逃げてくる。


「私、神殿で頑張ってお勤めして大聖女になりたいんです。そして両親に親孝行したいんですよね。だから王族との繋がりも大事だと思ってお相手してましたけど、これでは話が違います」

「エッ、私の話を素敵だすごいと聞いてくれたではないか」

「そりゃ平民の私が王太子と話すなら意見なんて言えないと思って。でも、このまま王太子妃にされるくらいなら無礼打ち覚悟でぶっちゃけちゃいますよ」


ミリアムは私の背に逃げ込むと、そこから顔だけ出してアランを睨みつける。

私はミリアムを優しく見やるとアランに向き直り、


「執務は臣下任せ、公式行事は私任せ、学業は低空飛行、あなたには将来国を背負うという自覚がおありでない。泥舟に乗るのは御免です」

「神殿に参詣って名目で来るのに、お参りもそこそこに若い女性神官ばかりに話しかけるのみんな気持ち悪いねって言ってますよ。やめてください」


どんどん暴かれる……いや、語られなかったけれど公然の秘密だったものが明らかになってゆくのを、ギャラリーは固唾をのんで見守る。


「そっ、そうは言っても、レオナ、お前、私が娶らなければ婚約破棄された傷物だ! ミリアムも大聖女になりたいなら私の覚えが良くないと話にならないぞ!」


ギャンギャンと喚くアランに、私達は冷たく言い放つ。


「隣国の叔母に移住を勧められていました。この国と違って女性が仕事を持って生きてゆくことができるそうで、叔母の商会に勤めるもよし、学院に通いなおすもよし、やりたい事がたくさんあるんですわ」

「中央神殿に行こうと思います。確かにこのままこの国の神殿にいても迷惑がかかるし、祈祷、治癒魔法、精霊術はじめ、より高度な教えを身につけてそこで大聖女になりたいので」


アランが、うつむいて、何か言った。


「何かおっしゃいました?」

「……さん」

「え?」


アランが目に涙をためて叫んだ。


「おかぁさーん!」


「えっ、王太子様でもこういう時ママ助けてって言うんだね」

「こういう情緒に身分の差はありませんのね……それよりこれって公的行事じゃない?」


周囲を見渡すと、やはり記録官がいた。


「殿下、このやり取り全て記録されていますけど、よろしいんですの?」

「イヤだぁー……」


王太子の願いむなしくこの日のやり取りはちゃんと公文書として記録され、書庫に収められた。

廃嫡理由にもなった。

アランが王太子になるのを許したのは甘かったけれど、こういう所はフェアでしたね。

すごく久しぶりお話書くので、肩の力を抜いて……抜きすぎたかもしれません。

気軽に読んでいただけると嬉しいです。

文体がままならなかったです。


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