探索者になりたい
俺の仕事は、ダンジョン内の鉱石採掘だ。
「先輩は、探索者の学校に通おうと思った事あります?
あ、これお願いします」
差し出された鉱石に触れ、収納、と唱える。すると、鉱石は異空間へと姿を消した。
「小さい頃は憧れてたな。でも、適材適所って言葉を知ってから憧れは捨てたよ」
「確かに、先輩のスキルは探索者向きでは無いですもんね」
ふいに、後輩は俺の背後に目を向けた。
「あれ? なんか先輩の影、デカくないですか?」
俺が振り向くと同時に、影からぬるりと現れた黒い狼が俺の太ももに歯を突き立てた。激痛が身体中を迸る。
「動かないで」
女性の声が聞こえた矢先、赤い炎が視界を覆う。
気を失う直前に見えたのは、走馬灯にしては眩しすぎる真っ赤な髪だった。
全治一週間の入院となった。
「紅崎火華です」
そして入院ニ日目、助けてくれた探索者が病室へと訪れた。
「その節はどうもありがとうござ」
「命に別状は無さそうで良かったですでは私はこれで」
「え」
少女に引っ張られるように靡く赤髪に目を奪われ、気を失う直前に見た光景を思い出した。
「俺も、探索者になりたかったな」
思わず口から出たその言葉は、不幸にも、廊下に片足を踏み出していた紅崎さんの耳にも届いていたようで。
い
「今は、違うんですか?」
振り向く事なく、鋭い言葉を俺にぶつける。
「いまさら、なれるわけないだろ」
「私は、なれるかどうかではなく、なりたいかどうかを聞いたんですが」
あまりにも論理的で理想論な言葉を残し、彼女はその場から立ち去った。
それから一週間後、無事退院となった。
病院からの帰り道、探索者であろう数人が言い合いをしている場面に出くわした。
「待ってくれ、考え直してくれないか!!」
「もう諦めてくれ。今のパーティにお前は必要ない」
クビを言い渡された探索者が、振り解かれないよう必死に仲間の足にしがみついている。
俺はあんな風に必死になれるだろうか。
『なれるかどうかではなく、なりたいかどうかを聞いたんですが』
俺は、ああなりたいのだろうか?
「もしもし、部長ですか? 俺、仕事辞めます」
俺はその日から、探索者の学校に入学するため勉強と運動を開始した。
そして試験当日、風邪を引いた。
俺が入学できる、最後の年だった。
後日、俺は探索者ギルドの前にいた。
「お願いします、俺を探索者ににしてください!!」
ギルドに出入りする探索者を捕まえては、直談判をする。その繰り返しだ。
「その熱意は立派だけど、時には現実見るってのも大事だぜ。おっさん」
ついに無視できなくなったのか、一人の探索者が俺をその場から引き剥がそうとする。
「もう現実は十分見ました!! ずっと理想から目を逸らして来たんです!!」
男の足にしがみつく。
「お願いします!! 俺を探索者にしてください!!」
「お前いい加減に」
男の拳が顔面へと迫る。
「その人、私のパーティメンバーです」
気を失う直前に見たのは、天使にしては無愛想な赤髪の少女だった。




