表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

黒い記録(ブラックログ)


——4月3日 午前7時00分。

ログイン、3回目。この日、最後の挑戦。


 俺はベッドの上で深く息を吐いた。

 2度のやり直しを経て、わかったことがいくつかある。


 1. 椿は誰かに殺される運命にある。

 2. 朝比奈トオルは、その実行犯か、あるいは関係者。

 3. そして——やつも“ログイン能力者”だった。


 能力の存在を他人に知られたのは、初めてだ。

 だが、もっと気になるのはトオルの言葉だった。


> 「アイツ(椿)は“知ってる”んだよ。お前と同じことを」




 椿も……?


 目を閉じ、記憶を掘り起こす。

 あの日、椿が死んだ現場。

 あの手紙と、瓶。あれも何かの“装置”だったのではないか?



---


 学校に着くと、俺はいつも通り教室に入り、誰よりも先に椿に話しかけた。


 「椿……話がある」


 彼女は少し驚いたように目を見開く。でも、逃げない。


 「……やっぱり、気づいてたんだね」


 その一言で確信した。椿も、ログイン能力者だ。



---


 昼休み、屋上。


 俺たちは人気のない場所で対峙していた。


 「いつからだ?」俺は尋ねた。


 「中三の時。目が覚めたら、同じ日を繰り返してた。最初は偶然かと思ったけど……やっぱり違った。記憶だけが、残ってた」


 彼女は遠くを見つめながら、話す。


 「でも、誰にも言えなかった。……信じてもらえないと思ってたから」


 「それで、“実験”してたのか。……何回も死んでみて」


 「違う!」椿の声が跳ねた。「私は、誰かに殺されたの。何度も。毎回、犯人が違った」


 「……何?」


 「一度は図書室で、次は音楽室、そして……教室。全部、時間を戻さなきゃ説明できないくらいに、バラバラだった。でも……一つだけ、共通点があるの」


 椿がこちらをまっすぐ見つめた。


 「犯人、全員——“ログイン能力者”だったの」


 ——能力者が複数いる?

 ——この世界には、俺たち以外にも……?



---


 午後の授業は、まるで耳に入らなかった。

 思考がどこまでも深く沈んでいく。


 「なぜ、能力者が椿を狙うのか」

 「彼らはどこから来たのか」

 「俺の能力は本当に“ただの巻き戻し”だけなのか」


 そして——

 このループを終わらせるには、何をすればいいのか



---


 放課後。

 俺と椿は、再び教室ではなく、校舎裏の旧館へ向かった。

 そこには使われていない“視聴覚室”がある。防音、施錠可能。人気もない。


 「ここにいれば、安全なはず——」


 言いかけたその時、ガシャンッという破壊音が鳴った。

 背後の窓が割れ、何かが飛び込んでくる。


 「伏せろッ!」


 俺は椿をかばいながら転がった。そこにいたのは、黒いパーカーの人物。顔はマスクで隠されている。手にはナイフ。

 声は、変声機で歪められていた。


 「ようやく“このルート”まで来たか。シオン、椿。お前たち、よくやったよ」


 「誰だ……お前」


 「俺か? 名前なんて意味ないよ。この世界じゃ。お前たちみたいな“選ばれたログ者”にとってはな」


 その言葉に、椿が息をのむ。


 「あなたも……能力者……?」


 「俺たち全員、同じプログラムの中にいる。そうは思わないか? 毎日同じ日を繰り返して、失敗したら巻き戻る。それは“現実”じゃない——“監視された箱庭”だ」


 俺の頭に、一つの単語が浮かぶ。


 ——実験。


 「何を知ってる。お前は、俺たちがどうしてこんな力を持ってるのか、知ってるのか?」


 「教えてやるよ。……ただし、“ログイン可能回数”を0にしてからな」


 そう言うと、マスクの人物は俺にナイフを向けた。

 同時に、視界の端に表示されるシステムメッセージが浮かぶ。


 【SYSTEM:ログイン可能回数 残り:0】



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ