今度こそ幸せにします
※導入のみ存在する未完作品です
わたしでは、駄目だ。
その結論を出したのは、何巡目のことだっただろうか。
繰り返す世界のなかで。
自分が近くにいては彼が幸せになれないことは、早い段階で気が付いていた。
自分が側にいては駄目。
だが、彼の傍に誰も立たないわけには行かない。
では、誰を?
彼女では駄目だ。
何度も何度も失敗して、そう結論付けた。
彼女は、誰でも良い、のだ。
そんな人間に、彼は預けられない。
それなら、あのこにしよう。
ただ、あのこだけでは心配だから。
それで良い。
今度こそ。
この、あなたが幸せにならなければ、終わらない円環のなかで。
今度こそ幸せにします。
あなたを幸せにして、この、地獄のような円環を、終わらせるために。
ё ё ё ё ё ё
メディナ公爵家は、八代前の王妹が興した家だ。王家との婚姻を繰り返しているため、血の濃さはほぼ王族と変わらず、順位は低いものの王位継承権すら与えられた、影の王家。
幸いにも今のところ王家の血が途絶えたことはないので、メディナ家から王が立ったことはないが、王家に年頃の姫がいなかったときに、他国の王族へ嫁がせる駒として選ばれたことはある。
家の興りからして女公爵なので、代を重ねた今でも女系の家系で、今も君臨するのは女公爵。子供も長男を除けば女ばかり五人だ。
長女は次期公爵、次女はスペアで、三女と四女はすでに他国への輿入れが決まっている。
わたしはそんなメディナ家の、末の娘だ。
当代国主の息子、正妃腹の第二王子と同い年で、歳の近い遊び相手として、そしておそらくは、のちの妃候補として、たびたび王城へ呼ばれている。
王子の方は知らないが、国王と正妃には、ずいぶんと気に入られているようだ。
いずれ第二王子が立太子され、わたしは王太子の婚約者に任ぜられる。
それは、避けられないことだ。
だから考えるべきは、その後のこと。
わたしを道連れに彼女に自滅して貰って、メディナ家の力を削ぐ。あのこを王太子妃に立て、第一王子とその従者を、王太子の補佐に。
それが、すべてうまく行けば、彼は幸せになれるはず。
孤独な国王に、幸せを。
暗躍ならば得意とするところ。だってわたしは、メディナ家の娘なのだから。
影の王家のほかに囁かれる、メディナ家の二つ名。メディナの魔女の、本領発揮と行こうか。
未完のお話をお読み頂きありがとうございます
たぶん権謀術数入り乱れるお話が
このあと展開されるはずだったのですが
権謀術数を破綻なく書き上げられるほど
頭の良い作者でなかったのが敗因ですね