¬恋愛である
これは、頭の中をそのまま書き起こした文である。
実際に私が話すシーンは舌打ちだけである。
わざわざ遠回りし、夜の静かな道路の中央で音楽を聴き、浸りながら帰るのが趣味の私は、東京のT大学で数学を学んでいる。勿論、数学も趣味だ。
大学の入試期間、友人達とアスファルトの無い場所に行き、デジタルデトックスをしてきた。解散した後の帰り、疲れた足は千鳥のように飲んでもないのに1人、地面を蹴っていた。カラカラの喉を潤すのは紙パックのリプトンで、ストローの内側に充たされる茶色の液体を眺めていると、頭がハッキリしている為か、疲れている為か、ふと過去の記憶が甘い液体と共に流れてきた。
今日みたいな気候、たぶん。丁度、一年前。大学受験の終盤くらい。
中学の時の同級生とお参りした。
彼女は綺麗な目をしていて、いや、関係ない。
そう、彼女の受験が成功するように近くの神社で、彼女と2人きり、いや、捏造するな。3人で、お参りした。そうそう、よく彼女とは会っていたのだ……これは捏造じゃない。事実だ。勉強する場所が偶然同じだったのだ2人きりで帰ったこともあるんだ!
……
…………
……………………
気持ちが悪くなってきた。自分が気持ち悪い。何を言っているのか、言葉にできはしないけど解っている。はぁ。事実と向き合わなければ……
事実と向き合わないというのは、成長する機会から逃げているということなのだ。正確に思い出せ。整頓しろ。主観的にも客観的にも納得できる答えを見つけろ。
「チッ」
そう。彼女は大学に落ちて、T大学とは反対方向にあるB大学に入学した。
B大学に入ってから彼女とは全く話さなくなった。というか、元からそんなに話してなかった。偶然会えて話せる機会が失くなっただけ。そう。それだけなのだ。彼女がアイコンタクトを取って、帰る準備をして、なんとなく、受験頑張ろうね、大学受かったら何しようか。そんな話をしていただけなんだ。
はぁ、文化祭ぐらい顔出せばよかった。
後悔するなよ。やめろよ。
なんだ?俺は?Googleマップで行きもしないくせにB大学にハートなんて付けちゃって、彼女のインスタの写真に異性が写ってない度に安心して、どうせ。どうせ、責任取れないくせに。見た目が好きなだけだろ?彼女の好きな食べ物は?将来の夢は?家族構成は?思想は?行動範囲は?ほら、何にも知らない。
これは、恋愛なんかじゃない。
ただの気持ち悪い。独り言なんだ。
もう一年、一年も経ったんだ。
あぁー……リプトン買うのやめようかな。でも、リプトン。美味しいんだよな。
とりあえず、音楽の、音量を、いや、イヤホンの音量を最大にして帰った。
はやく忘れたかったから。
あぁーーーーーーー…………
リプトンうめー。数学も、電車の中で進んだし。今日も良い夜だ。
後悔している時点で、それは間違いだったと言えるのだろうか。