表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びゆく異世界転生  作者: 無与
2/2

1話「なにもできない」

 目を覚ますと、そこは薄暗く光の灯る。

街路時の裏通りみたいな場所だった。

ここは、どこだ?


 神様みたいなやつに、異世界がどうとか言われて光に包まれたんだがここが異世界か?

とりあえず歩きまわって状況把握と行くか・・・。

ん? 動けない? なんだ?

手が小さい気が・・・まさか赤ちゃんになってる!!!


 しかも、周りに親らしき人は見当たらない。

人通りも少ないらしく、通行人が現れる気配もない。

これはあれだ。

恐らく、捨てられたのだ。

前世でなにも成し遂げられなかったのだから、二度目の人生では、何か成し遂げてみようと思ったのだがもう俺の人生は詰んだらしい。

いくら何でも、早すぎないか、赤ん坊の状態で見捨てられるとか、あんまりな気がする。


 そこに、酔っぱらった男が通りかかる。

ちょっとそこの人僕を拾ってくれませんかぁ?

声をかけようとしても言葉にならない。

「おぎゃぁ! あ!あう」


 くそぉこの、ベビーマウスがゆうことを聞かない!

男がふらふらした足取りで、こちらに振り返り言う。


「なんだぁ~? 赤ん坊か・・・かわいそうに捨てられたんだなぁ」

「だがぁ、俺にお前を養うほどの金はないすまないなぁ・・・」


 男は無情にも立ち去っていく。

え!? ちょっとまって、赤ん坊を見捨てるとか、倫理観どうなってんのぉ!

おい! 戻ってこいせめて人呼んできてよぉ!


 終わった、俺の人生終わりだ。

夢にまでみた、異世界転生が何もできないまま終わりってまじであの神様みたいなやつなんなんだ・・・。

悪魔か、魔王に違いない今度会ったら文句言ってやる!


 どこからともなく男の怒鳴り声が聞こえてくる。

「どこ行った! 出てこい! 逃がさねぇぞ!」

すると俺が捨てられている裏通りに、フードを被った盗賊のような装いの人が飛び込んでくる。

えらく息が上がっている。

追われて、逃げているようだった。

どうやらこの人もピンチらしいが、こちらもピンチなのでどうすることもできない。

赤ちゃんだしな、異世界に行ったら困ったり何か訳ありな人達を特別な力で助けるというのに憧れていたんだが、残念だ。


 すると、その盗賊風な人は、やり過ごすことができたらしく、ホット胸を撫でおろす。

そして、こちらに気が付いたようだ。


 こちらに、気が付いたか!

ほら、こんな愛らしい赤ん坊だぞ!

放っておけないだろう!

もうこの際、誰でもいいから助けてお願い!


 盗賊風な人はしばらくこちらを見つめていたが、無情にも背を向け去っていく。

そうだよね・・・今ピンチだったのに、見ず知らずの赤ん坊を助けるほど余裕はないよね。

あきらめかけていたところ。


 こちらに、向き直り何か躊躇いながら向かってくる。

え! え!?

まさか、拾ってくれるの?


 そして盗賊風な人は、こちらをのぞき込みつぶやいた。

「お前は、なんで捨てられたんだろうなぁ・・・」

その時、俺を覗き込んだ顔が鮮明に見えた。

その人物は、少女だった瞳は透き通る様な水色で、髪の毛は、純白で曇りのない白髪だった。

だが、顔にはおおよそその年齢には、似つかわしくない無数の傷がついており、何より俺を抱えようと伸ばした手はボロボロで震えていた。

なにか、並々ならぬ事情があるように見えた。


 困っている人を助けるのは当然とわかっていながら、過去に人助けを行った際に助けられず心に癒えぬ傷を負った。

その少女の顔を見ると、想像力の乏しい俺でもそんな過去があったんじゃないかと思うほどに、悲しい表情に満ちていた・・・。

そんな少女の顔を見ながら俺は思った。


 そんな悲しい表情をみて、笑う赤ん坊なんていないだろう。

ここは、赤ん坊の俺が人肌脱いで、最高のベイビースマイルで、この少女の心を温めてあげよう。

そうしようとしたとき少女は、俺を抱き上げ精一杯作った笑顔で俺を見て言い放った。


少女「何にも心配はいらないぞ! 私が育ててやる! 

お前を捨てた親の分まで愛情を注いでやるからなぁ!」


 そう言い終わると、顔を柔らかく綻ばせ。

ぎゅっと抱きしめられる。


 前世から、あまり人にかかわらず人肌恋しかっただからだろうか。

それとも、異世界に転生してすぐに捨てられたからだろうか・・・。

その温かいぬくもりを感じて。

俺は、大声を出して泣いた・・・。

赤ちゃんだから、しょうがないだろう。


 彼女が、どうして一度は見て見ぬふりをしたのに、再び戻ってきて拾うようなことをしたのかはわからない。

でも、今の俺にそんな事情や理由なんてどうでもいい。

ただ、目の前の少女がしてくれた行動にいつか必ず報いたいと思った。


これが、彼女との出会いでこの世界でかけがえのないたった一人の家族である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ