エピローグ
会社帰りとぼとぼ歩いていると。
急に、胸のあたりに痛みを感じる。
そのまま、意識が遠のいていき。
俺の意識は、そこで途切れた。
気が付くと俺は、暗闇の中にいた。
少し、離れたところに四つの人影が見え何やら言い合いをしているようだった。
ここは、病院の集中治療室か何かで、必死に俺を助けようとしてくれてるのかな?
そんなこと、考えていると、三つの人影が立ち去ってしまった。
残った一つの人影がこちらにあゆみ寄ってくる。
なんだダメだったってことかな、それを伝えに俺の方に、来ているのか。
あぁ、今回ばかりは逃げられそうにないな・・・。
こわいなぁ・・・ここから逃げてしまいたい。
俺には癖がある。
逃げることだ、何か重大な物事と対峙したときに自然と逃げる方向へと物事を考えてしまう。
よく人は、変わることができるというがそんなのは、一時だけで本質は変わらないと思っている。
余裕があるときには、皮をかぶり理想の自分を演じることができるがだんだんとその化けの皮ははがれてくる。
結局の所、元の自分に戻るのだ。
そんなことを反芻していた。
すると、近くまで来た人物がしゃべりかけてくる。
透明感のある、中性的な声質をしており、どこか威厳があり神々しささえ感じさせる。
とても、心地のよい声色だった。
「お前は、自分の人生に後悔をしているのか?」
その人物が、俺にそう問いかけてくる。
なんと返答しようか、少し考えそちらに向き直った際に不思議な感覚を覚えた。
その人物の顔は、暗くて良く見えないのだが、すごく悔しそうな顔をしている。
それも、今まで苦労して入念に準備してきたことを失敗してしまったというような。
そうか、そんなに俺のことを真剣に治療してくれてたのか。
俺は、ここで終わるんだな。
そう思い、その担当医らしき人物に言った。
「先生、大丈夫ですよ!」
「ここで、終わっても俺は、別の世界で元気にやりますので!」
するとその人物は、驚いたようなそぶりを見せる。
そして、こう言った。
「そうか話が早くて助かるな!」
「お前には、少しばかり期待ができるかもしれない!」
「では、次の世界のことを話すとしよう」
今度は、俺が驚いた
いやいや、このお医者さん何言ってるの今のは冗談だよ。
こっちが気を使って、考えた冗談だ。
あれか、もうすぐ亡くなるから、乗ってくれてるのか?
そんなことを考えているとその人物が話始める。
「お前が、転生する世界は、滅びが確定した世界だ」
「わけあって私は、50年ほどそちらの世界には干渉ができないのだ」
「だから、お前がその世界を救ってくれ」
「世界が滅ぶまでは、30年ほど猶予がある」
「頼んだぞ」
「あの一つお聞きしたのですが、俺ってもうすでに死んだ後ですか?」
その人物は、再度驚いたように言う。
「すでにわかってると思っていたのだが、そうだお前は死んだ」
俺は、不思議とその状況をすんなり受け入れることができた。
先ほどから、話がかみ合わないと思っていたがそういうことだったのか。
つまりあれだこれは、夢にまで見た異世界転生というやつだ!
死んでしまったものはしょうがない。
まぁ、前世に思い残すことはないかな。
というか、考えることが面倒くさい。
もういいじゃないか。
次の世界を楽しもう!
でも、何かとんでもないことを言っていたような。
「あの神様一ついいですか?」
すると、その人物は先程までの硬い態度が、嘘のように高らかに笑いこう続けた。
「私が、神様だと(笑)」
「まぁ、そちらの方が都合がいいか!」
「なんだ言ってみろ!」
俺は再度聞いてみる。
「滅ぶ世界と聞こえたのですが・・・」
「それは、本当ですか?」
「本当のことだ」
「詳しいことは、まだわからないだが」
「お前が、これから転生するところは、魔法が当たり前の世界だ」
「そして、
「今まで、世界に満ちていた魔力の大部分が一転に集約されどこかに行ってしまった」
「まるで、水がたまった桶に穴をあけて水が漏れ出してしまうようにな」
「それで、その世界で俺にどうしろと」
「その世界の者たちと協力しこの現象を食い止めろ」
「ただそれだけだ」
世界救済というやつか、チートスキルをもらって、チャチャっと世界を救った英雄になるか。
そうと決まれば、この神様にどんな能力をもらえるか聞いてみよう。
「内容はわかったんですが、何か力はもらえないんですか?」
「こう、神様パワーのようなすごい力」
その人物は、少し考え込みこう言った。
「特にないな・・・何もあげられるものが・・・」
「過去勇者だった赤髪の女性の近くに転生させるくらいだろう」
「そいつを頼れ、力になってくれるだろう」
「あとは、仕方ないな、ないよりは、ましだろう」
「付与魔術なら、与えられる」
「まぁ、それだけだが」
「あとはお前が自分で、何とかしろ」
「あと、その能力今のお前には使用できないからな、あんまり役に立たないと思う」
「じゃあ、がんばってくれ」
「え!?」
こうして俺の体は、光に包まれ異世界に転生させられるのだった。