手の届かないライオン~プジョー208GTi~
「どうっすか、これに決めませんか?」
なかなかどうして、押しが強い。今話題の中古車店の続いて騒がれている業界2番手の外国車専門店だけある。
「うーん、でもなぁ。これは致命的だよねぇ。」
1年悩んでようやく決まった乗り換え候補の中で、程度の良いものが見つかったので予約を取って現車を見に来た。外観は良し。写真より実車の方が良い作りに見えたし、内装もスポーツカー然としていてかっこが良い。フランスだけあって、おしゃれな感じもする。
「今調べたら、修理するには6万くらいはかかるそうです。」
そうか、それはこっち持ちだよね。うん。1.6リッターターボ205馬力3ドアのハッチバック。探していた後期型のプジョー208GTiがようやく関東圏で見つかったので見に来たのに。やはり中古車は、写真だけで判断してはならないなと思った。前のオーナーさんは小さなお子さんがいたのだろう、チャイルドシートを装着したせいで、皮シートが結構ボロボロになっている部分が数か所あった。直さずに乗ったら、気になるし、直しても本当に綺麗になるかは分からない。それならまた違う車が出てくるのを待てばいいか。そんなことを考えながらうなり声をあげてしまった。
「やっぱり今日は見積もりだけもらって帰るよ。ごめんね。」
縁が無いとはこういうことか…。
車の免許を取った時は、プジョー205GTiに憧れるもかなわず、その後、プジョー106S16が欲しくなったが、ディーラーが近くになくて断念。今回の208GTiもタイミングが合わず、プジョーというメーカーは、僕にとって憧れがあるのに近づけないメーカーなのかもしれない。FFハッチバックで同じエンジンが乗っているMINIは近くにディーラーや専門店もあるのだけど、あまりグッとくるものが無かったりする。それは、昔からラリーが好きで、プジョーの雄姿を見続けてきたせいもあると思う。
色んな人脈からプジョーを面倒見てくれる整備工場も見つけ、ようやく良いなと思えるモデルも選ぶことが出来たのに、そういう時に限って良い玉に巡り合えなかった。
205馬力のFFホットハッチを手に入れていたら、どんな感じだったかな?そんなことを考えてしまうけど、一人の人間が所有できる車の数はたかが知れている。そうそう買い替えるものでもないし、沢山持てるものでもない。もしも、余裕が出てきてセカンドカーを持てるのなら、208GTiは良い選択かもしれない。
奇をてらった技術もなく、簡素な足回りを工夫し、大衆車にちょっと味付けをして、世の車好きをうならせるプジョーをいつか所有したい。その可能性は限りなく小さいけど、新型GTiが誕生するのを願いたい。