九言目 な、なま……
「あの苗、お父さんが買ってきてからずっと私が世話をしていたの」
「あ、えっと、ご、ごめ……」
「やめて、私の方が悪かったんだから謝らないで」
「あ、ご、ごめん、なさい」
「……はぁ。悩んでたの」
「え?」
「あの子ね、全然大きくならないし。届いた時は粗悪な状態だったから、すぐにまずは肥沃な土と水をあげて」
「……」
「肥料を変えたり、色々試したのだけれど、どんどん元気が無くなってきてて。お父さんと相談して、分からないなりに全てたっぷりあげて、ダメなら諦めようって」
「え、えっと」
「種で儲けたかった訳じゃないの。ちゃんと種として後継を残させてあげたかったの」
「……」
「貴方が来てくれなかったら、あの子に悪い事しちゃう所だった。まさかこんなに適正が違う子もいるなんて、ビックリよ」
「み、みんな、ち、ちが」
「そうね、なのに私はそれを見ようとしてなかった。最低ね」
「え、そ、そんな」
「貴方にまで八つ当たりして、本当にゴメンなさい」
「あ、いや……」
「嫌?」
「あ、違……。えっと、だ、大丈……」
久しぶりに会話してる!!
しかも女の子と!
こんなに長く人とお話しするなんて村長さんと植物さん以外だと初めてかもしれない!!
楽しい!!
「貴方、名前は?」
「え? な、なま……」
「名前よ、名前。私はヴィオラって言うの」
「あ、アルス」
「アルスか、良い名前ね」
「へ? いや、その、ヴィ、ヴィオラ、さん、も……」
「ねぇ、少し良い?」
「え?」
「他にも上手く育ててあげれていない子がいるの」
「どこ!? どこにいるの!?」
「ヒッ」
俺の足元に展開した魔力で生成した土に龍尾草を植え替えてあげた。嬉しそうにツヤツヤしてる、いっぱい根っこを伸ばすんだよ。この子は背が伸びる前に先に根が伸びる。だから根を伸ばせる環境に早目に移せてか良かった。
それから、僕はヴィオラさんに連れられて、いくつか植物さんたちを見て回った。見た事ない種類の子もいたけれど、欲しがっているものは何となく分かるので乗り切れた。
というかヴィオラさんっていうんだ。
名前、聞かれちゃった。
お互いに名前を知ってる。
もしかして僕ら、友達、になれた? のかな?
うふふ。
「晩御飯よー!」
「はーい! 晩御飯ですって、行くわよアルス!」
「え、あ……」
「何してるのよ早く行くわよ!」
背中押さないで!
こけちゃうから!!
あっ!
「……」
「あ、ゴメンなさい。大丈夫かしら?」
「この土、良い匂いだなぁ」
「何してるの?」
ここは良い土だ!
ちゃんと手入れされててみんな喜んでる!
楽しい!
ビックリするくらい田舎育ちの頑張りっ子の冒険です。
こけても笑顔のアルスくんをよろしくお願いします。
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