六言目 ち、ちが……
「何なんだい君は、急に殺すって言われても。そんなに怒ったのかい?」
「近頃の若いのは怖いねぇ。簡単に殺すだの何だのって」
「あ、えっと、そ、その、違……」
「血が?」
「あ、あにょ、僕、虫、こ、殺す」
「無視、殺す? んー悪かったよ、無視したりして」
「違……」
「血が?」
どの言葉を選んでも伝わる気がしない。
あれ? おかしいな。
確かに頭の中では喜んで迎え入れて貰えてたはずなんだけど……ん?
あれ? あそこにあるのって。
「あ!!」
「ひっ、何なんだよ一体……」
あれはもしかして、龍尾草!?
ドラゴンの尻尾に似た草が特徴的なあいつだ!
どうしてこんなに水を!?
枯れちゃう!!
「こら君、これは貴重な苗だから勝手に触っちゃ」
「何故」
「え?」
「何故こんなに水を?」
「え? 水? あぁ、こいつは貴重な苗なのだが、なかなか大きくならなくてね、だから肥料をたっぷりあげて、水もたっぷりあげたのさ」
「こいつは水を多く望んでいません」
「は?」
「肥料は現在の更に倍ほどに増やして水はこのまま抜いてやって下さい、いやそれだと遅すぎるか、枯れてしまう」
「え?」
「土よ」
僕は魔力を込めて、その苗に使われていた全ての土を取っ払った。
「こら!! 君何し」
「さっきの肥料はどこですか?」
「うっ、肥料? そこの袋だよ」
「これ好きみたいですいつもこれにしてあげて下さい」
「は?」
そして新たな土を生成し、そこに大好きな肥料を混ぜてあげて、改めて元の場所に戻してやった。
うん、ツヤツヤしてて良い顔になったね。
さっきまでのゲッソリした顔が嘘みたいだ。
「これで大丈夫だとは思いますが、この苗はあまり水を必要としておりませんこの肥料に使っている土には十分な水分が含まれているのでそれを足してやる事で得られる水分で十分だそうです」
「え、あ、はい」
ふぅ良かった。
これでこの子も大丈夫だね。
一安心。
「ところで」
「はい?」
「君は誰だね?」
「え、あ、えっと、その、あ、あにょ……」
しまった!
何も進展してなかったの思い出した!
どうしよう!!
「はぁ、まぁ今から昼飯だから一緒に食うか?」
「あ、でも、僕……」
「食うだろ?」
「は、はい」
ご飯は貰える事になった。
助かった……。
_______
「目的地はどこなんだ?」
「ら、ラベルカーン」
「ふむ、ラベルカーンまでだとどのくらいかかるっけか?」
「荷馬車なら1日ね。歩くのならもう1日。このコ歩けなさそうだから、徒歩ならあとプラスで2日かしら」
「それは大変だねぇ、この辺りの土地感も無いんだろ?」
「え、その、えっと……」
「もっとハッキリ喋りなさいよ!」
「ご、ごめん、なさい」
「こら、そんな言い方ないだろ?」
畑を営む一家の団欒にお邪魔し、パンやスープを貰える事になったのだけれども。みんなが話しかけてくるので返事を考えるのに必死でまだ何も食べられていない。目の前にご飯があるのに、お腹空いた。
ビックリするくらい田舎育ちの頑張りっ子の冒険です。
話しかけられるとご飯も食べられないアルスくんをよろしくお願いします。
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