二言目 道具は……
「野菜たちは喜んでいました、それではダメなんですか?」
「むろんじゃ、畑を耕すのは野菜の為ではない。あくまでもその土地で生きる者たちの為じゃ」
「じゃあ僕はこれから……」
「違う事を手伝うか、もしくは他の土地を目指すか、じゃな」
「それじゃまるで追放だ」
「簡単な話じゃ、畑に関わるのはもうやめよ。お主が関わる作物はどれ一つとして売り物にならん」
「そんな……」
話は受け入れて貰えなかった。
他でもない、村長直々のお達し。
誰かに縋り付く余地なんてない。
畑に関われないというのなら、僕はもう。
この村を出るしかない。
ここに居たら、それだけ迷惑をかけてしまう。
早々に立つべきだ。
「あの、他の土地を目指す場合、道具は……」
「ワシらも畑仕事がある、その商売道具を渡してどうするのじゃ」
「そうですよね」
みんな今日も仕事があるんた。
居なくなる僕に構う余裕なんてないだろうし、僕のせいでそうなったのならこれ以上我儘も言うべきじゃない。
けれど、どうすれば良いだろう。
行く当てもなければ知り合いも居ない。
人付き合いも得意じゃないし、手先の仕事も出来ない。
戦う事なんて特に無理だ。
そんな僕に残された道。
それはここを出ることしかない。
村で僕にやれる事はないんだ。
何がダメだったんだろう。
芋をレインボーにした事?
それとも気位の高いお花を全部真っ黒にしてあげた事?
はたまたブルーな気分のスイカの中身を青くした事?
冷静に考えたらどれもアウトだ。
売り物になんてならない。
良かれと思ってやっていたけど、実際は迷惑しかかけていなかったんだろうな。
うーん、だけどどうしようか。
畑や野菜を優先していたら人の事を疎かにし過ぎていたらしい。僕には畑しかないからね。
村長の家に所属していたからって自由に振る舞い過ぎた?
でもこれが僕にとっての最善なのだから仕方ない。
でも、実は暗くなってからは他の土地のゴミ掃除や、虫が寄り付かなくなる土のを作物に影響のない範囲で撒いていたり。雑草は可哀想だけど抜いて回っていた、アレを全部やらなくなると、結構な範囲の畑が無法地帯になってしまう。範囲が広過ぎたらその種類の雑草にだけピンポイントで効く除草土を撒いて対処していた。
そう、僕の手で難しい事は魔力でやってたからね。他の人が同じ様に真似出来るとは限らない。