一言目 え
「そなたが関わった畑はみな作物が奇形化してしまう。このままでは作物が全滅じゃ。もう働かんでくれ」
「え……!?」
今日も元気に鍬を持って畑を目指していた少年アルス。
村長からの言葉に頭も働かず、絶句。
先程までは今日はどこの土を掘り返そうか、畑内部の土の構造をどう弄れば野菜は喜んでくれるだろうかとルンルンだったのだけれども。一点、氷点下。
僕が、働くな?
何の冗談かな?
誠心誠意働いてきたし、見返りも要求していない。
確かに孤児だった僕を引き取ってくれた村長には感謝してるし、何を言われても極力頑張ろうと思う。
だけどさ、これはあんまりじゃないか。
僕は毎日幸せだった。大好きな草花や野菜に囲まれて、土の匂いがして、木々の匂いがして。何事もなく順調ったのにどうしてこんな仕打ちを?
「ぼ、僕はサボってなんていません。今日だって今から誠心誠意働くつもりでした。本当なんです。もし心配なのなら見張りをつけてもらっても構いません。その人の分まで二人分働いてみせます。だからお願いします」
「あのな、アルスよ」
「何ですか?」
「今は朝の4時じゃ」
「そうですね」
「何時まで働くつもりじゃった?」
「え、何も見えなくなってから、6時間くらいですかね。足りませんか!?」
こんなに頑張ってるのに?
土や野菜が大好きなのに?
僕は村長の隣りにいたおじさんに目で訴えかけてみた。
無視された。
「あのなアルスよ、勤勉である事は良い事じゃ」
「ならどうして!?」
「お主が育てた野菜は変な形で、変な色の物ばかり。そうじゃな?」
「はい」
「何故その様な事を?」
何故って、そんなの決まってる。
「本人がそう望んだから……」
「何を言っとる?」
「え、いや彼らがそうなりたいって……」
ひょっとして僕だけなのかな?
花や野菜がそう望んでいる様に感じるのは。
「今はワシの畑だけじゃ。だからと言って、これ以上それをやってみなさい。あっという間にこの村は滅ぶじゃろう」
「うぅ、あの、その……」
村が滅ぶなんて言われたら返す言葉なんてないじゃないか。
何で言えば良いんだ。
「えっと、その、頑張ります。だから……」
僕には畑しかなかった。本当にそればかりを頑張ってきた。耕す場所と言われれば夜通し耕して、収穫だと聞けば何日にも渡ってぶっ通しで働いた。
「もう良い」
けれど、村長はぴしゃりと遮った。
どうして、どうすれば……わからない。
おばさんや他のおじさんに聞いてもらっても構わない。僕は働けと言えばちゃんとやれる。やれるんだ。
広い土地も、荒れた土地も、全て耕してみせた。この数年で畑の規模は倍以上になったはずだ。
もちろんその時使った道具は村長さんのだし、土地の持ち主は僕じゃない。一から十まで僕による物だなんて主張はしない。けれども、一番頑張ったのは僕だと言い切れる。
なのにどうして?




