004 昼休み(久留里視点)
「さて、お昼か……。 お弁当はっと……」
昼休みになりまずは昼食を食べる事になるんだけど……、速攻で僕の周りに我先にと男子生徒たちが寄って来た。
「九条さん!! 俺と……」
「いや、この俺と!」
(うげぇっ!? 昼食にまで!? もう勘弁して……)
多分、一緒に食べたいんだろうけど流石の僕でもこんな言い寄られ方されたら不快になる。
「ちょっと! 九条さんが嫌がってるでしょ!!」
「うるせぇな! 委員長!!」
「黙ってろ! 九条さんは俺と一緒に食べるんだからな!」
「何だと!?」
「そうはさせねぇぞ!!」
「だーかーらー!! 九条さんが嫌がってるって言ってるでしょうが!!」
「クソ女は黙れって言ってるだろうが!!」
「なんですってぇ!?」
「ちょっと、男子! 聞き捨てならないわね!」
「今、クソって言わなかった!?」
(あー、もう滅茶苦茶だよ……。 でも今のうちに……)
これでもかというレベルでの言葉の暴力と言う惨劇が繰り広げているみたいだが、僕はこの隙に弁当を持って教室を出た。
流石に男子に一気に詰め寄られると流石に嫌だしね。
迷わないような場所で食べたいのだが、手ごろな場所が見つからない。
どうしようかと迷っていたら、丁度屋上に通じる階段があったことに気付いた。
(屋上ならゆっくり食べれそうだなぁ)
僕はそう心で呟きながら、屋上への階段を上る。
角度からしてスカートの中を見られそうなのだが、気にしたら負けなのかも知れない。
なんだかんだで、屋上にすぐ着いた。
鍵が開いてるので先客はいるのだろうけど、僕も利用させてもらうとしよう。
そう思って、屋上の扉を開けた時……。
「あれ、九条さん?」
「んあ?」
「お?」
「あれ? 確かみんなはクラスメートの……」
同じクラスの三人……、二人は男子で一人は女子が先に屋上でご飯を食べていたのだ。
「えっと、一緒に食べていいかな?」
「いいよ、丁度お話したかったから」
「俺もさ。 だろ、翔太?」
「ああ」
翔太と言われた男子のリアクションの少なさに少し気にはなったものの僕は三人と一緒に昼食を摂ることにしたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「へぇ、あの時も話しかけようとしてくれてたんだね」
「でも、男子が我こそはと言わんばかりの勢いでね」
「あれは流石に酷すぎたなぁ……」
「三限目なんてトイレに行きたかったのを止められたからね。 委員長のおかげで無事に行けたけど」
「そこまでいくと最悪を通り越してるぞ、それ」
僕は七海ちゃんという女子を介して、二人の男子とも会話をしながら昼食を摂っていた。
三限目の後のトイレ休憩の時の話をした時の男子の呆れかえった様子をみて、この二人なら安心かなという感じがした。
そこで、僕はある疑問を口にした。
「そういえば、翔太くん……だっけ? 君って何だかよそよそしく話しているけど何かあったの?」
「ああ、実はね、翔太君は私などの特定の女子以外は恐怖感を抱いてるの。 一種の女性恐怖症ってやつ」
「女性……恐怖症?」
翔太くんに僕が感じた疑問を答えたのは七海ちゃんだった。
彼が女性恐怖症になった要因って……何があったんだろう?
「まぁ、九条さんには話した方がいいかな? 君の親戚筋が関わった話でもあるし」
「親戚筋?」
「あ、ああ。 九条 義経ってやつだが」
「あ、ヨッシーの事? 君達、ヨッシーの友達なんだ」
「そうだけど……、ヨッシーって……」
ヨッシーこと九条 義経は確かに僕の親戚で九条家の分家だ。
それにしても、彼も関わっている翔太くんの案件って……何だろう?
そう考えていたら、長崎 圭太くんという翔太くんの友人が理由を話してくれた。
「実は翔太は……、かつての幼馴染に暴力を振るわれたんだよ」
「え……!?」
信じられない話が出た。
翔太くんには幼馴染がいたが、その子に暴力を振るわれたって……。
「それって、常に暴力を?」
「ああ……。 だが、特に酷くなったのは……中学一年になってからかな……?」
そう話す翔太くんが心なしか身体を振るわせていた。
それでも、震えを振り絞って翔太くんも何とか話そうとしている。
僕は思い出したくなかった彼のトラウマみたいなものを引き出してしまったのかも知れない。
「ご、ごめん! 無理なら無理で話さなくても……」
「いや、話すよ。 当時は義経も被害にあったんだから……」
「え……!?」
ヨッシーも被害に?
翔太くんの幼馴染に?
もしかして、ヨッシーも暴力を振るわれた?
当時、海外に住んでいた本家が慌ただしかったのはそのため?
混乱してくる僕をよそに、翔太くんや圭太くん、そして七海ちゃんが順番に経緯について話し出したのだった。
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