023 一緒に帰った時に(翔太視点)
「翔太くん、一緒に帰ろう」
「よし。 あいつらもいるか?」
「うん。 護衛さん一家の双子達も教室前にて待ってるよ」
今日も何事もなく授業が無事に終わり、帰る準備をしていたら、クーが一緒に帰ろうと声を掛けてきた。
断る理由はないし、近所なのでもちろん一緒に帰る。
教室前には、仲本家の双子と奥田家の双子も待っていた。
なお、圭太と七海は用事があるらしく、別行動のようだ。
「あいつらは教員達同伴での下校か?」
「みたいだね。 第三者から見たらやり過ぎにも見えるけど、トイレ妨害されて漏らしかけた僕からしてみればいい薬だと思うよ。 僕が転入する前にもやられた子もいるんだし」
「あの自称陽キャグループの一人がお偉いさんの息子というのが、未だに不安要素だがな……」
俺としてはそこが不安材料だ。
何せ、奴は未だにクーを狙っているという話を正樹と拓也から聞いている。
義経との和解に向けた行動を立てるには、そこも何とかしないといけないんだよなぁ。
その陽キャグループの一人で、お偉いさんの息子であるという神楽坂 健吾がこちらを睨むが、正樹や拓也が睨み返していた為に、慌てて視線を反らした。
「全く、トイレ妨害させてまでお嬢をモノにしたかったとか、性癖からして歪んでるな」
「そうだね。 まぁ、アレはもうすぐ破綻するって話だし」
「何がだ?」
「秘密ですよ。 分かり次第教えますから。もちろんお嬢様にも」
「えー……」
あ、クーも秘密にされて不満タラタラだ。
膨れっ面が余りに可愛すぎて見惚れてしまいそうだ。
しかし、護衛一家達だけが知っている情報ってどんなのだ?
確かに、未確定の部分が多い場合は情報を出さないようにするのは妥当だろうけどな。
フェイクニュースなんてものが今の時代にはよくあるみたいだし。
「まぁ、秘密ならしゃーないな。 ほら、クー。 ぶーたれてないで帰るぞ」
「あ、そ、そうだね」
俺は未だに多数の女性に対する恐怖が抜け切れていないが、クーといる時や圭太や七海がいる時とかは大丈夫だ。
というか、まだカウンセリングが始まったばかりなので、すぐに克服できるはずがないのだが。
「今日も手を繋いで帰ろうか」
「あ、ああ。 いいぞ」
「ふふふ」
クーが手を繋ぐことを望んでいるので、俺はそれに応える。
ここ最近のクーとはこうして一緒に家に帰っている。
彼女の手から伝わる温もりが、今の俺に安らぎを与えてくれるからだ。
もちろん、クーもそれを知っている。 法月から受けた俺の心の傷を知っているから。
「そういえば七海ちゃんと圭太くん、用事があるって言ったけどなんなのだろうね」
「さぁな。 俺にも教えてくれなかったし、デートか何かだと思いたいが」
「あー、翔太くんでも分からないんじゃしょうがないね。 明日二人に聞いてみようか」
「機会があればな」
帰宅の最中にクーが七海と圭太の用事の事を気にしていたようだが、俺にも聞かされてないので知らないのだ。
あの二人の事は信頼しているから、明日学校に来た際に聞いてみる事で一致した。
「お、そろそろクーの家に着くか」
「あ、そうみたいだね」
「じゃあ、ここでいいか? 正樹たちもいるだろうし」
「うん、名残惜しいけど明日もあるしね。 なら……」
「あ、お兄ちゃん!」
「え?」
クーの家の近くまで着いたため、ここらでクーと別れて自分の家に戻ろうとした時、幼さの残る少女の声を聴いたのでクーと一緒に振り向く。
「留美……?」
「翔太くんが今お世話になっておる姉家族の?」
「ああ」
振り向いた先には、俺が世話になっている姉家族の娘で、今では俺の義妹である小学四年生の少女、茜崎 留美が友達らしき子たちと一緒にここに来ていたのだ。
留美と友達がここに来たことにクーもそうだが、護衛一家の双子たちも驚いていた。
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