021 久留里の過去 前編(久留里視点)
今回は少し荒い内容です。
ありえない部分も含まれていますのでご注意を。
「ふぅ……」
学校から帰宅した僕は、自分の部屋で物思いに耽っていた。
この時にいつも思い出すのは4年前の話。
つまり僕が10歳の頃、従兄弟のヨッシーこと九条 義経と疎遠になってしまうきっかけとなったあの時だ。
(翔太くんは何とかするって言ってくれてたけど……)
法月によって恐怖症に近い女性不信に陥っても、僕には安心感を抱いてくれている翔太くんは、ヨッシーの友人でもある。
だから、今までの僕とヨッシーの距離感に気に掛けてくれている。
(でも、海外への転校もあって4年も引きずってるからなぁ……)
とある日の九条家の本家と分家たちが集うイベントで僕が無意識にヨッシーを傷つけて以来、途中で海外への転校もあってか、4年は会っていない。
その為、なかなか踏ん切りがつかないのもまた事実。
(お母さんがあんな目に遭ってから、僕は……)
そして、僕が相手に話すときに、無意識に圧を与えるきっかけになったあの日を思い出していた……。
◇◇◇◇◇◇◇◇
それはまだ小学生だった僕と父さん、そして母さんが電車で移動をしていた時だった。
その時、母さんは再び子供を身籠っていた。
僕にとっては妹か弟にあたる子が母さんのお腹の中にいたのだ。
当然ながら、護衛さん達も近くで電車に乗っていた。
当時の僕達は、母さんを産婦人科に連れていく為に電車に乗っていたのだ。
父さんが信頼できる産婦人科だが、母さんは妊娠9カ月で、車だと圧迫の可能性もあったので、電車での移動となったのだ。
しかし……。
「いいかげんに立たんか!! 優先座席とかいてあるじゃろうが!!」
いきなり気が狂った老人がこっちに向かって怒鳴り散らしてきた。
「老人の為の場所を太った女ごときが座るんじゃない!! はよ立てい!!」
こっちの言い分を言うまでに妊婦の母さんの腕を掴んできた。
だが、護衛さんもそれを阻止し、手を無理やり離す。
「この人は妊婦だ。 優先座席は妊婦にも適用されるんだがね」
「関係ない!! わしが立てと言ったら立つのがルールじゃ!!」
「そこのお爺さん。 いいかげんにしてもらえんませんかね?」
「そうじゃな。 そんなに元気じゃったら座る必要はないじゃろ? 同じ老人として恥ずかしいわい」
「うるさい! うるさい!!」
「うるさいのはあんたじゃろうに。 さっきの若者が言ったように優先座席は老人だけでなく妊婦も適用されるんじゃよ。 見たところそこの奥方は妊婦さんじゃろうし、それを証明するものも掲げておるわい」
もう一人の老人が、怒鳴り散らす老人に睨みつけながら諭してきた。
だが、都合の悪い部分はやはり聞く耳もっていなかった。
そして、電車が駅に到着するや否や……。
「ハン!! 妊婦っていうならこうしてやるわ!!」
そう言いながら狂った老人が何と母さんのお腹を思いっきり蹴ってきたのだ!
「うがぁぁぁっ!!」
「いやあぁぁぁぁ! お母さん!!」
「き、貴様ぁっ!!」
その瞬間、お母さんは破水し、蹲った。
だが、狂った老人は追撃を行う。
「ほれほれ!! 二度と子供なぞ作れんようにしてやるわ!!」
蹲る母さんをお腹を中心に蹴りまくる。
父さんや護衛さんや二人の老夫婦が止めに入っても、攻撃を止めてくれない。
だが、誰かが通報してくれたのか、警察が駆けつけてその老人を暴行の現行犯で逮捕され、お母さんは救急車で運ばれた。
そして、運ばれた病院で僕と父さんは衝撃の内容を聞かされた。
「まことに残念ですが、お腹のお子さんは既に……。 さらに奥方様はもう二度と産めない身体になってしまっております」
「そ、そんな……」
父さんはショックで膝を付き、涙を流す。
僕もその事実に立ち尽くすだけだった……。
これが、僕の分岐点でもあった……。
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