020 クーの父親と話しました(翔太視点)
今回も短いです。
夕方、俺はクーの父親と話をするために、家を訪れた。
正樹か拓也が報告してくれたみたいだが、流石は九条家、行動が早いな。
「やあ、翔太君。 調子はどうかな?」
「法月の件はスッキリしましたが、奴に刻まれた心の傷はまだまだ癒えませんね」
「だろうな。 あれはなかなか手強いと医者も言ってたくらいだしね」
クーから俺の心の傷を聞いているみたいで、クー同様に色々気に掛けているようだ。
「さて、本題だが娘と分家かつ親戚の義経君との距離感についてだったね」
「はい。 クー……久留里さんの口調というか、しゃべり具合というか、彼女が喋る時に圧があるとかで、義経が距離を置いていると聞いて……」
さっそく本題に入り、俺はまず義経から聞いた内容をクーの父親に伝えた。
「ああ、4年前の集合イベントの時だね。 娘はそのつもりではなかったらしいが、一部の者や義経君からは圧が強く、自分は貶されているのではないかと言う感覚だったと言ってたな。 これに関しては、私達両親も申し訳ないと感じている」
「と言いますと?」
「我が本家は、妻に不幸な事態が発生した為に、本家の子供は娘の久留里一人だけになってしまったのだ。 それを知った娘は、周囲から馬鹿にされないようにと意識して強い口調をし始めてしまったんだ」
本家ならではのプレッシャーが、クーをそうさせたわけか。
好きでそうしたわけじゃないのは、クー自身もそう言ってたし、自覚はあるしな。
「君は、久留里の口調はどう感じた?」
「特に何も。 一部で強めの口調を感じてはいますが、俺は気にするレベルではない感じですね。 とはいえ、彼女自身は気にしてるみたいだし、義経には謝りたいと言ってましたね」
「なるほど。 だから、なるべく早くそれを実現できるように私達で働きかけて欲しいと」
「ええ。 第三者の俺では義経やクーと話をしてそうするように誘導するだけで精一杯なので。 俺にとっては彼女は恩人ですし、義経は友人なので尚更……」
「いや、久留里や義経君をそこまで思ってくれているなら私達もありがたい。 むしろ、私達だけでは難しい部分もあったから、君が少しでも動いてくれるだけでも、私達はやり易くなる」
「では……」
「娘と義経君への対面のチャンスを作りあげるとしよう。 多少時間は掛かるが、本家と分家達の関係の僅かな穴を他の家系に突かれないようにするさ」
何とか父親からは、いい答えを得ることが出来た。
これで俺も義経やクーに話をしやすくなる。
家の事情に勝手に首を突っ込むのだけは、不味いだろうかと内心でヒヤヒヤしたからな。
「すみません、こっちの勝手に動いて貰って」
「いや、さっきも言ったように娘と義経君との距離感という僅かな穴を突いて攻め込もうとする他の家系がいるからね。 下手したら分断される可能性もあり得たのだ」
お金持ちの家系にも色々あるんだなと、クーの父親からの話で改めて知った。
次の世代が僅かな距離感を置いたままでは、九条家が分断される可能性もあるわけか。
「翔太君、これからも娘の久留里を支えてやってくれ。 娘は君の事を気に入ってるみたいだからな」
「もちろんです」
最後にクーの事を宜しく頼むと言われたので、それに関しても首を縦に振った。
彼女がいたから、法月にも強気でいられたしな。
これで、ひとまず動きやすくなった。
さて、俺もクーや義経と話をして少しずつ誘導していくとしようか。
そして、クーとの仲も深められたらな。
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