002 転校生(翔太視点)
2話連続投稿です。
「あー、眠ぃ……」
「おい、翔太大丈夫か?」
「保健室、行く?」
「いや、昨日悪夢を見たせいで寝不足になってるだけさ」
俺は茜崎 翔太、中学二年。
現在、寝不足気味で登校をしたばかりだ。
それをこの学校の友人の二人が気付き、気を掛けてくれている。
なお、小学生時代の数少ない友人は、訳あって別れているがメールでのやり取りはしている。
というのも、俺は中学1年の後半に今の学校に転校しているからだ。
転校当初から、俺はある出来事によって女性不信になり、悪夢も見るようになった。
それを今の二人……、長崎 圭太と雪風 七海が気にかけてくれていた。
この二人のうちの一人、七海は女子だが女性不信の俺が気楽に話せる女子の一人だ。
実を言うと、向こうにも女性不信である俺が気楽に話せるもう一人の女子がおり、その子はある人物の彼女でもある。
「あー、彼女から聞いた『あの女』から受けた仕打ちが未だに刻まれてるんだね……」
「トラウマになってるな。 そこまで来ると」
「なるようになるしかないさ」
「流石に病院に行った方がいいんじゃないか?」
「精神科に行ったら、事情を知ろうとしない陽キャグループが変な噂を流すから行きたくねぇよ」
「それが厄介なんだよねぇ」
七海が口にした『あの女』というのは、あるきっかけで別離した幼馴染だった女だ。
その幼馴染の女は、小学一年生の時からの家族ぐるみで付き合っていた。
しかし、どういう育て方をしたのか、わがままっぷりが酷く、年を追う毎にそれがさらに酷くなった。
中学一年になった時に俺が他の友人と遊ぼうとしたら割って入って俺や友人に暴力を振るって怪我を負った。
奴はそれで味を占め、『言葉よりも暴力』で俺を縛ろうとしてきたのだ。
それぞれの両親が、そいつを注意しても全く聞く耳持たず、より暴力がエスカレートしていた。
そしてある日、熱で動けない俺を『根性が足りない』と言いながら、双方の両親の制止を暴力で振り切って無理やり学校に連れ回されれ、救急車に運ばれた時が転校を決意するきっかけになった。
事もあろうにそいつは救急車を呼んだ教師と救急隊員にも木刀で暴力を振るって阻止しようとしたが、駆けつけた警察に取り押さえられた。
奴の両親は、俺の入院費用や俺達家族が引っ越す時の引っ越し費用を負担してくれた。
だが、奴の暴力や理不尽な連れ回しのせいで女性不信になってしまった。
幸い恐怖症でないのが救いだが、それでも一部を除いた大半の女性とは出来るだけ話したくないと思うようになった。
それが今の俺だ。
そんな俺は、未だに夢の中に奴の顔が出てくる。
今日も奴にまつわる悪夢を見たので、寝不足であり、それがここ数週間は見続けている。
それを圭太や七海に話していると、ホームルームの時間になり先生が入って来た。
「えー、これからホームルームに入ります。 今日からこのクラスに海外から帰国した転校生が来ます」
「え、転校生!?」
「誰なんだ!? 女の子なのか!?」
「ちょっと、男子!?」
「あー、一応答えておくと、転校生は女子ですよ」
「「「イィヤッホォォォォーーーっ!!!」」」
(あー、うるせぇ……)
(ホントテンション高いよなぁ)
(そうだねぇ)
先生の話によると、どうやらこのクラスに転校生が来るみたいだ。
しかも、女子という事で他の野郎どもはテンションが上がっているみたいだな。
五月蠅いったらありゃしない。隣のクラスから苦情が来そうなレベルの五月蠅さだよ。
圭太や七海も同じ様子らしく、五月蠅さにゲンナリしていた。
「では、そろそろ入ってきて下さい」
「あ、はい」
先生がドアを開けて、教室の外で待っていたであろう女子の転校生に入るように呼び掛ける。
それに呼応するかのように、女子が入って来た。
容姿的には、茶髪のロングヘアで顔立ちも整った美少女という感じか。
他の男は、その女子を見て『おお……』と感激していたみたいだな。
「彼女が海外から帰国し、この中学校に転校してきた九条 久留里さんです」
九条 久留里。
それが、海外から転校してきたという女子の名前か。
おっと、自己紹介が始まるな。
「僕……、じゃなかった。 私は九条 久留里といいます。 よろしくお願いします」
「僕っ娘美少女だとぉ!?」
「ありだな!!」
「素晴らしいじゃないか!!」
「男子、うるさい!!」
(やらかしたな)
(やらかしたねぇ……九条さん)
(しかし、僕っ娘か。 ラノベや二次元の世界のみだと思ったんだがなぁ)
彼女は僕っ娘という事がいきなりバレたらしいな。
しかし、いきなり自己紹介でやらかすとはなぁ。
俺は流石に僕っ娘は現実に存在しないだろうと思っていたから、ある意味で衝撃だった。
他の男子もテンションがさらに上がって、女子の委員長に注意されてるしな。
「では、真ん中の一番後ろの席に座ってください」
「は、はい」
やらかした事の恥ずかしさを抱え、九条は真ん中の一番後ろの席に着席する。
そして、ホームルームが再開され、先生からの連絡事項を聞く。
その最中に、視線だけ彼女を見たが、不意に視線が合ってしまった。
まぁ、俺だけじゃなく圭太や七海にも視線が合っていたみたいだが。
その後の授業も順調に終わり、昼食の時間になり、七海が九条さんに突撃しようとしていたが叶わず他のクラスメイトに割り込まれて玉砕。
諦めて圭太と七海との三人で、弁当を持って屋上に行った。
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