019 秘密裏の話し合い(翔太視点)
今回は少し短いです。
「確かにお嬢と義経様は、小学四年生から距離を置いている感じがしていたな」
「俺の所も親父とお袋がそれを気にしていた感じだな」
正樹と拓也がそれぞれクーと義経との距離感について口にしていた。
なるほど、クーと義経が距離を置いた時期は小学四年の時か……。
「しかし、何でそれを気にするように?」
「ああ、実はクーは俺にとっての恩人だし、義経は親友だからな」
「なるほど、そういう事なのか」
正樹からなぜそれを気にしているかを聞かれたので、正直に答える。
クーが今の俺にとっての恩人であるし、義経が親友なのは嘘ではないからな。
それを聞いた正樹や拓也は納得がいったような顔をして頷いた。
「確かにお嬢の話し方は、無意識に圧が加わっているから受け手次第で傷つく可能性があったからな」
「それに関してはクー自身も自覚していたみたいだぞ」
「そうなのか。 翔太自身はどうなんだ?」
「俺はクーの口調は気にしていない。 なんだかんだで俺を気遣ってくれているしな。 それ故に義経との距離が気になったんだ」
俺がクーの口調は気にしていないし、俺の事を気遣ってくれている優しい性格もある事が分かっている。
それ故に気になっている事を伝えると、俺の意図を拓也がようやく察したようだ。
「読めた。 つまり、疎遠のような感じになってるお嬢と義経様を和解に持ち込みたいっていうんだな?」
「そういう事なんだ。 4年の空白が難しくしているのは分かってはいるけどな」
「なるほどなぁ」
クーはどうしても義経に謝りたいって思っている事を既に聞いている。
だが、離れている義経には、なかなかクー自身が顔合わせする機会がここ最近じゃなかなか見つからないという事だ。
そんな空白のせいで難しくなっているのは理解している。
それでも、きちんと乗り越えつつ、仲良くとまではいかなくとも、せめて和解には持っていきたいのだ。
「分かった。 当代にそれを伝えるよ」
「俺達の両親にも念を入れてそう伝よう」
「ああ、助かる。 今の俺じゃそれが精一杯だしな」
「何、双方に関係を持ってる人物も動いてくれるなら何とかなりそうだ」
「時間はかかるぞ」
「構わない。 まずお嬢が義経様に謝りたいと言ってるなら、なるべく会いやすいようにサポートするさ」
正樹と拓也もこっそりとそういう形で動いてくれることになった。
クーの父親である当代にも伝えて秘密裏で動かしてもらうように二人の両親経由で頼むのだろう。
護衛一家である奥田家と仲本家もそこに関して気にしているみたいだし。
「一部のお金持ちの家系が九条家一族の少しの綻びを狙っているからな。 それを気にしてくれる友人がいるのも俺達には心強いさ」
「綻びねぇ」
だから、護衛一家も気にしてはいたわけか。
そこを突いて、敵対的TOBとかで買収したり仕掛けてくるかも知れないからな。
クーと義経の距離感が今の穴なら、尚更俺も動かないといけないな。
「それじゃ、秘密裏に動くから、翔太は俺達からのサインがあったら義経様にも電話しておいてくれ」
「ああ、それは任せてくれ」
「よし。 じゃあお嬢の所に戻るか」
「そうだな」
秘密裏の話が終わったので、俺達はクー達の元に戻ることにした。
穴を突かれないように気を掛けつつも、時間を掛けてでも何とかクーと義経を和解させたいからな。
これから忙しくはなりそうだし、今はクーとの仲を深めておくか。
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