010 通話先からの凶報(翔太視点)
午後の授業も無事に終わり、四人で下校しようとしていた矢先、突然俺のスマホに着信音が鳴った。
「ん?」
「着信? 誰から?」
「藤沢さん。 義経の彼女からだ」
「えっ!? ヨッシーに彼女いたのかい!?」
「あいつが中学一年生の時に出来た彼女だ。 しかし、急に着信だなんて何があったんだ?」
「とにかく出てあげよう」
「ああ」
義経に彼女がいた事にクーは驚いていたが、それよりもその彼女である藤沢さんからの着信に圭太も七海も何があったのかと気にはなっていたみたいだから、対応する事にした。
「もしもし?」
『あっ、翔太くん! 藤沢です!』
「放課後とはいえ、いきなり着信が入ったからびっくりしたぞ。 何があったんだ?」
切羽詰まったようなトーンで通話する藤沢さん。 それによってホントに不味い状況なのかと心配しつつ、何があったのかを聞いた。
『あの暴力女……、法月 恵梨香が学校に殴り込みして、翔太が転校したことを知ったら無差別に木刀で殴ってきたの!』
「な……!?」
「何ですって!?」
あの暴力女が学校に殴り込みして、かつ無差別に木刀で殴ってきているだって!?
あの野郎……!
「義経は!?」
『大丈夫。 今回は殴られる前に私と一緒に逃げてきたから』
「それ、法月の両親は知っているのか?」
『うん。 警察と児童相談所に通報しつつ、止めに入ったけど、お母さんの方が殴られて病院に運ばれたの』
あの女……、ついに親にまで病院送りにしやがったか。
「それで、その女は捕まったの?」
『警察によって何とかね。 今回は14歳になってるから、流石に【犯罪少年】扱いになるみたい。 母親を含めて複数への暴力と備品を幾つか壊したからね』
「それで収まればいいけどね……」
「うーん、ここまで聞いた話だと無理臭そうだけど……」
「どういう事だ、クー?」
一応、法月が警察に捕まり、今回は犯罪少年扱いになった事で収まってくれればという七海の願いをあっさり打ち砕くクー。
圭太に話の続きを聞いて貰うために、スマホを渡して、どういう事かとクーに聞いてみる。
「あの女は、自分の不都合な事は聞く耳持たない性格みたいだよ。 それでいて歪んだ独占欲を持ってる。 これこそ言葉より暴力でそれを成そうとするくらいにはね」
「そうなの!?」
「昨日の話を聞いて、僕の方でも執事に調べてもらったんだけど、その女に関するクレームが中学一年生から発生していたみたいだね。 丁度、翔太くんとヨッシーが殴られた後に」
マジか。
俺と義経が殴られた後、さらなるクレームがあったのか。
「その度に両親が厳しく説教したり再教育していたみたいだけど、自分の不都合な内容には聞く耳持たないばかりか、クレームをとばした近所に殴り込みを掛けて復讐とばかりに家のガにラスとかを破壊したりしていたらしいんだ」
「そこまでしてたのね、あの女」
「うん。 その時はまだ13歳だったみたいだし、触法少年扱いにされて罰は受けなかったから、それがさらに助長していったのかも知れない」
13歳だったから、罪に問われようが罰せられない。
それがあの女の『言葉より暴力で』というのをより強固にしていったのかも知れない。
「今後は警察に10日間は勾留されて家庭裁判所での審判を待つ形になるんじゃないかな。 だけど、あの女は大人しく勾留されるとは思わないから」
「脱走する可能性もあると?」
「そう考えた方がいいという事さ。 翔太くんには辛いけど」
ある種の厳しい現実。
しかし、あの女ならあり得そうな話でもあるため、覚悟は決めないといけないかも知れない。
「でも、だからこそ翔太くんには僕や圭太くん達に頼って欲しいんだよね」
「そうそう。 一人より二人ってやつだよ」
「そうだな。 これ以上被害が拡大される前にケリはつける時がきたかもな。 そのためには支えも必要だろうし」
圭太がそう言いながらスマホを俺に返してきた。
通話が終わったのだろう。
「僕が翔太くんをフォローしておくよ。 近所だし、護衛さん含めてすぐに行けるしね。 学校内じゃ護衛は入れないけど」
「そうだね。 下校時と登校時は九条さんにお願いするね」
「悪いな、クー」
「いいよ。 僕としても翔太くんに纏わりつく枷は早いうちに払っておきたいし」
というわけで、今日以降は登校時ならびに下校時にはクーが一緒に帰ってくれることになった。
その間はいつでも出れるように護衛さんも配置するとの事だ。
あの女が俺を探しているとなれば、あらゆる手段を講じてでも俺を暴力でモノにしようとしてくるから、気をつけておかないといけない。
たとえ、今いる学校と元居た学校の距離が特急電車で2時間以上かかるレベルだとしても。
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