001 転校生(久留里視点)
懲りずに新作を投稿しました。
こちらもよろしくお願いします。
「それじゃ九条さん、少しここで待ってて下さい」
「はい」
僕、九条 久留里は転校先の中学校の2-4と書かれた教室の前で、穏やかな担任の男性教師からそう言われたので、待つことにする。
今着ている制服は、この学校の指定の制服でセーラー服ではなくブレザーだ。
ブレザーも可愛いけど、セーラー服が着たかったから少し残念。
でも、両親が日本に戻って来る前から既に手続きを終えて、戻って来た時には制服や教科書が届いていたから、今更言ってもしょうがない。
スカートの丈も規定の長さだから、余程の事でない限り大丈夫だろうしね。
そうそう、僕は海外から日本に戻って来たいわゆる帰国子女だ。
家が複数の大企業を営んでおり、海外にも事業を展開している。
僕が小学六年生になった時に、両親が海外に向けた新たなプロジェクトの遂行の為に、一時僕も海外に転校せざるおえなくなった。
約2年間、日本を離れていたので寂しさと言葉が通じないかもという不安を抱いたが、日本語学校に通っていた事もあってか、海外の生活は何とかなった。
その間の日本にある屋敷は、両親が使用人達に守ってもらうように指示したのだそうだ。
さて、少し待っていると教室の中がざわめく。
そりゃあ、転校生が来るんだから期待と不安があるんだろう。
しかも、女子だと言う先生の声がしたとたんに男子らしき人達のテンションの高い声がドア越しからでも響いてきた。
君ら、そんなに女の子がいいのか。
「では、そろそろ入ってきて下さい」
「あ、はい」
僕が呆れている間にドアが開かれ、先生から入るように声を掛けられる。
返事をし、茶髪のロングヘアーを翻し、堂々と教室に入り、先生の隣に立つ。
「彼女が海外からこの中学校に転校してきた九条 久留里さんです」
そして、僕の自己紹介が始まる。
「僕……、じゃなかった。 私は九条 久留里といいます。 よろしくお願いします」
早速やらかしてしまった。
自分の事を僕というのが癖となっていたので、せめて自己紹介だけでもって思ったんだけど、やらかしてしまった。
ついでに言うと、今の僕は本来の口調ではない。
本来の口調は、あまりにもアレなので下手したらそれで避けられるかも知れないから、僕自身が信頼できる相手にしか本来の口調で話さないように心掛けている。
だが……。
「僕っ娘美少女だとぉ!?」
「ありだな!!」
「ひゃっほう! 最高だぜぇ!!」
「男子、うるさい!!」
「静かにしなさいよ!!」
うっかり一人称を『僕』と言ってしまったにもかかわらず、多数の男子が妙なテンションになっており、それを女子が……多分クラス委員長だろう人が注意した。
しかし、君達は僕っ娘でもいける口とかたまげたなぁ……。
「では九条さん、あなたは真ん中の一番後ろの席に座ってください」
「は、はい」
それでも、自己紹介でやらかした恥ずかしさは抜けないまま、そそくさと指定された席に座る。
真ん中の一番後ろが僕の席だそうだ。
僕が席に着くと、ホームルームが再開される。
何やら、今日の連絡事項とかをみんなに伝えているみたいだ。
その時に、僕は窓側の変わった雰囲気の男子を見たが、奇遇にも視線が合う。
男子の方がすぐに視線を窓側に向けたみたいだが……、他の子と何かが違う。
何か辛いものを抱えているような……、そんな感じに見受けられた。
「それでは、ホームルームはここまでにします」
「起立! 礼!!」
先生によるホームルームの終了を告げると同時に、クラスメイトが一斉に僕に話しかけてきて困惑した。
一方で、同じく僕に話しかけようとしていた女子が輪に入れず諦めた様子で彼ともう一人の男子と話をしていた。
その後も他のクラスメイトの女子にトイレの場所を案内してもらったり、色んな話をしたり、授業を受けたりして時間が経ち、昼食の時間になった。
今度こそと思ったが、その時には彼とその友達の姿はなかった。
まぁ、あの時も他のクラスメイトに阻まれたしねぇ……。
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