49.夏の予定
「夏休みに別荘に来ない?」
突拍子もなくそう言いだしたのはミレイだった。
「突然だなあ」
「何事も始まりは突然来るものよ」
ミレイとカーティア、ココアラルとアラルド更にコンラートとパーデラ。放課後6人でのお茶会の最中。
体育祭の後、生徒会は調査を行ったがこれといった成果はあらず、一般生徒には組み立て時点での不手際があって爆発があったと説明されていた。
それからは警戒していたものの特に事件も事故も起きず、平和な学園生活を送っていた。
「別荘って、ケインズ男爵家のかしら?」
「ええ。避暑地になっているわ。ディリーの召喚獣だって出せるわよ。お泊まり会、ってどうかしら」
「それは……女子だけのほうがいいやつだな?」
「あらコンラート。あなたも来てもいいのよ? アラルド殿下もいらっしゃればひとりじゃないわ」
「怖いわ」
「生憎だが、僕は公務があって。ご一緒することは難しいかな」
「あら、殿下。ココをこれでもかって愛でる格好の機会でしてよ?」
「都合をつけよう」
「あたしの名前出るのおかしくない!?」
「ココちゃん、ミレイの別荘ってね、近くに湖があるから、水着持って行こうね」
「カーティア先輩? あたしそんなの持ってないですよ」
「ならばココ! 買いに行くのみよ! 水の魔法を特訓するのにも良いし!」
「え!? まさかの特訓なの!?」
最近になって、ココアラルは漸く魔法を使う授業が始まったばかりだった。
それを知っているミレイがにやりと笑う。
「水を操るコツが掴めればほかの元素も簡単よ。もとの魔力が低くたって、操作が基本的にどんなピンチでも回避できるわ!」
「がんばれココー」
「的はコンラートよ」
「わかったがんばります」
「え!?」
他人事にしていたコンラートがいきなり当事者になる。
「いやだから俺はっ」
「コンラート、諦めろ。相手はケインズ嬢だ」
「いいんすか殿下はそれで……」
悟った目をしたアラルドの肩をたたかれ、コンラートも抵抗をやめることとした。
「そんなに気にするならあと私の弟でも連れていく? 1年生もココひとりだし」
「おとう……あーっ! そうだよ! 攻略キャラが弟とか聞いてないんですけど!」
「言わなかったわね。わかってる感じだから会ったのね?」
「面識ない奴が増えてもな……」
「僕もあまり」
「かわいい弟よ。惚れてもいいわ」
「たしかにユーリくんって可愛いよね」
「弟だよな? 惚れるって」
「ラート、気にしたらだめだよ」
なにせ、カーティアとのフラグを折るために本気で言っている節がある。
コンラートも何を察したのか、それ以降言葉を止めた。
「ということで、みんな賛成してくれるわよね?」
にこりと笑うミレイに抗える者は、ここに誰もいなかった。
書いてて楽しいところだけ書きたい、私はそういう人間です(ごめんなさい)。