3.かの友人たちとの出会い
というのが午前の話で。
少し遅れ気味に教室へ向かったココアラルが、学園の説明を受けて放課になったとき。
廊下から教室をのぞきこむミレイと目が合って。
ずるずると連行されてたどり着いたのは、ひとつの部屋だった。
貴族令嬢などがお茶会を催すときに使われる場所で、ココアラルとわかれたあとのミレイがすぐさま部屋をとったのだ。
「ここならゆっくりおしゃべりできるもの!」
部屋にはヒロインとミレイ、そしてココアラルの知らない男がひとりいた。
「改めて、私はミレイ・ケインズ。さっきわかったでしょう、ももかよ。推しは手放さないのがモットー」
「変わらないなあ」
「え、と…よくわからないけど、ミレイと友達…なのでしょうか? わたしはカーティア・トレディアスと申します。学園でわからないことがあったら聞いてね」
「あ、トレディアス先輩……ですね、よろしくおねがいします」
「俺はロガス・アンシェラ。久しぶり、あやね。ももか…いやミレイから聞いてびっくりしたけど、まあありえなくはないんだよね。さつきだよ」
「えっさつきちゃん!? あ、えっ、ココアラル…です。さっき入学してきました。……あやねだよ」
そう、つまるところ。
トラックに突っ込まれた4人中、3人がこの世界のモブに転生したわけだ。
「えっと……トレディアス先輩は……」
「あ、この子はなにもしらない。おなじみヒロインちゃんよ。絶対に攻略させないんだから。私が責任を持って。隠し事したくないから、前世とかの話まで全部しちゃってるから、大丈夫よ」
「それはなにも大丈夫ではないのでは!? もも……いや、ケインズ先輩が変な人認定されるだけ!」
「やだ! そんな他人行儀にしないで! ミレイと呼んでよ!」
「いや、あやねも立場的に言えないでしょ。俺はこっちふたりのひとつ上。いやあまあ、わかってるとおもうけど俺の推しは」
「レオハルト……」
「そう! もうちょっとでイケんだよ! まさか推しをぶち犯…いや、推しと仲良くなれるチャンスがくるとはね!」
「さつきちゃんさては口癖変わってないな!?」
さつきは前世では攻略対象の騎士、レオハルト・ムーディケインが推しで、俺様キャラの彼をひたすらに組み敷きたい的な発言をしていた。
そんな彼女が、男に転生。
まさしく転機だったことだろう。
「ココアラルちゃんも、その、前世? を憶えているの?」
「あ、そうです、のけものにしてごめんなさい、トレディアス先輩」
「いいのいいの、すごく久しぶりの出会いでしょう? ミレイもあれからずっとそわそわしてて」
「あら、でも私の一番は常にあなたよ、カティー?」
「別に嫉妬なんてしてないよ」
「カティーが嫉妬してたら、私はカティーをいまから24時間ずっとなでまわしてかわいがるわ」
「それはちょっと困るかな……」
目前でいちゃいちゃ始めた女子二人を見るココアラルに、ロガスはそっと「攻略済み」と耳打ちをする。
「百合ルートなんてあったんだぁ…」
「つくったのよ、私が」
ミレイがどやぁっと渾身の顔を披露。
「……つばさちゃんは」
そしてふと、4人中ここに居ない残りひとりの名前を出す。
「まだ居ないわ。ってか、あいつは一番車道側に居たし、運よく生き残ってるんじゃない?」
「壁側だった俺は押しつぶされてるしなあ」
「痛いとか思う間もなかったけどね」
「生々しい話はやめようよ2人とも……でもそっか。つばさちゃんはいないんだ」
「まだ会ってないだけで、いるかもしれないけど」
窓から入ってくる風がカーテンを揺らす。
各々、転生したのは自分ひとりかと思っていた中の、友人を見つける事態。
「そういえば、さつ……アンシェラ先輩はミレイ先輩とはどうやって…」
「わかるだろ。こいつ、最初からこのテンションでヒロインに付きまとったんだぞ。声も前世のままだし」
「あ、察し」
「ちょっ、察し、を声に出してんじゃないわよ!」
ロガスは性転換転生のため声が変わっているが、女子は変わっていないようで。
ミレイに撫で繰りまわされているカーティアは、どことなくうれしそうだった。
まあ、みなさまの予想通り、4人全員転生しています。まだ登場しないだけ。
この3人で、BL・GL・NLが完結します(笑)