28.あたしだって負けてません
「あ! ココが走るみたいね」
気付けば1年生の走る番になっており、ラインにココアラルが並んでいた。
色が違うので大っぴらに応援ができないが、目が合ったのでひっそりと手を振る。ココアラルがにんまりと笑い、きりっと前を向いた。
結果を言えば、ぶっちぎりの1位。
すべての障害を難なくこなし、笑顔でのゴール。チェックを済ませてそのまま退場口まで走っていく。
「いえーいっ」
ミレイたちに向かって、余裕のピースを見せつける。
「すごい、ココちゃん1番だ」
「逃げ足は鍛えて生きてきましたからね」
いたずらをして怒る母から逃げるときなんて、という呟きは聞こえなかったことにして。
「もしかして平民の子?」
「あ、さっき1位だった先輩。そうです」
「やっぱり? わかるわかる、路地とか狭いとこだとゴミ散らかってたりするし」
「そうですよね! 足場悪いのとか狭いとことか、遊び場ですよね」
「私たちにはわからない平民トークを……」
ココアラルとネルが意気投合を始める。
「アタシはネル。この面倒くさい先輩たちから意地悪されたら言いな? やりかえすから」
「あたしはココアラルです。わかりました!」
「どういう意味よ」
「いやーそういう意味だよ? ミレイさん怖いですから~。年上の貴族のおねーさんから意地悪されたら、縮こまるしかないですし~」
「そんなことしたら、わたしがミレイとの距離離れるだけだから」
「やらないわよ! わかっていて言っているわね!」
そんなこんなと話しているうちに、障害物競走が終わる。
次の競技の入場が始まる。
「去年と同じで圧巻ね」
ミレイの言葉にカーティアが入場口を見ると、獣を引き連れた生徒が歩いていた。
その中には、パーデラの姿も。
「騎馬戦……」
パーデラのような魔物に見える獣や、馬などの動物も居る。中には一般的にドラゴンと呼ばれるような羽が生えた獣も。
いずれも人間を乗せられるサイズなので大きい。
「午前の見世物競技よ。派手に行くわ」
「去年は楽しくなって火を噴いた子も居たね」
「コースアウトしちゃったのも居たし」
「えっ!? そんな危ないんですか!?」
「まあ、きちんと操れてないとね。ひとが多いから召喚獣も緊張しているし」
「そのために、ほら」
カーティアが指さす先には、杖を手に持った教員や生徒がちらほらと見えた。
「不測の事態のために、控えているひとたちが居るんだよ」
「事故ありきならいっそのこと競技をなくせばいいのでは」
「言ったでしょう、見世物だって。この競技はできるひとが限られているし、派手に行われるのよ」
「大人たちは賭けしてたりするんだ」
「えええ……子供で競馬してんじゃないよ……」
そして1走目から事件は起きた。
「飛んでったね」
「飛んだわね」
「飛んだなあ」
「人は! 本来! 飛びません!」
召喚獣が走り出したはいいものの、なにかに気を取られて急ブレーキ。乗っていた召喚主が勢いよく投げ出された。
幸い控えていた教員が風魔法でキャッチをしたので怪我はなかったが、目を回したようだった。
それでも盛り上がりは下がることなく、むしろ上がって騎馬戦が繰り広げられる。
障害物競走とは異なり、学年ごとの競技ではない。年齢爵位身分関係なしの色対抗戦。
「パーデラ先輩!」
「あら、不運ね。隣にいるの、今年の1位候補じゃない」
パーデラの召喚獣より一回り大きく、黒いドラゴン。太い足4本をしっかり地につけ、まっすぐにコースを見ていた。
「あのひとは3年生だから、殊更力を入れてるよね」
「今回はパーデラの1着は厳しいかしら」
「いやいや、なんで他クラス応援してんのさ。むしろ1位候補のノウヒルデ侯爵令息と同じカラーでよかったって思うとこだよ」
「ぱ、パーデラ先輩! がんばってくださいっ!」
ココアラルの声に気づいたパーデラが、手をぐっと握りしめてアピールした。
手綱をしっかりと持ち、並ぶ全員が体制を低くする。
合図とともに、獣たちが走り出した。
こう…サボり癖があって申し訳ございません……ッ!
毎日ちゃんと更新できるひとたちを尊敬します……本当に……。
更新は基本10時固定にしたいんですけど、モチベーションない日に書けない……くっ